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心の傷とやさしいケア


石川県金沢市。石川県庁と金沢港の間のあたりにあるコミュニティハウス・シェアマインド金沢で、月に一度開催されているセルフケアセミナー「ゆらっく」。2017年11月開催のセミナーへ参加したときの話です。

このときのテーマは心の傷とやさしいケア
これからの自分にとって必要不可欠で重要なテーマ。この時期に新たにスタートを切った心理カウンセリングの学びの参考にもなるだろうという期待を込めて、参加してきました。

セミナーの流れ

最初に【チェックイン】。セミナーお決まりのイントロ。
話題のお題になるカードを1枚だけ引きます。引いたカードに書かれている問いに対する、今の自分の答えや感じたことを自己紹介も兼ねて2分ずつ自由に話し、全員で共有します。講師さんも参加者と同じ立ち位置で加わります。

このような「お題に対して即応する」を何度かやっていくと、これだけでも
「自分の声を自分できく」感覚がじわじわと身についてきて
おもしろいものです。あまり考え込まないでサッと浮かびあがったことこそ、自分が日頃感じているものや考えていることが素直に現れるものだということを実感するようになってくるのです。

次は【マインドフルネス】の時間。
今回は集中力UPのマインドフルネス呼吸法ということで、スローペースの呼吸:呼吸のペースを1分間に4~6回に抑える試みをしました。

<呼吸のペースを遅くすると>

呼吸のペースを遅くすると心拍数が抑えられ、心拍変動が高まっていく。それによって、身体が自制心を発揮できる状態に切り替わり、自己コントロールが効くようになるということです。

心拍変動が高まるというのは、「心拍ゆらぎ」の変動の幅が広がるということで、そうなれば、自律神経が正常に機能する状態を保つことができるようになるという意味だそうです。ストレスが掛かっているほど「心拍ゆらぎ」の変動の幅は狭くなる。「ゆらぎ」がないと、衝動性が高まり、気が散りやすくなるのだとか。スローペースの呼吸が如何に大切かということですね。

1分間に4回の呼吸リズムの例
 1,2,3:吸う
 4,5,6,7:止める
 8,9,10,11,12,13,14,15:吐く

意志の力ではコントロールできない感情・感覚も、呼吸をゆっくりなペースにすることでコントロールできるようになります。人が直接的にコントロールできるのは呼吸だけ。であれば、呼吸にもっと意識を向けて大切にすることがセルフケアにつながりますね。

引き続き、セミナーのメイン【テーマワーク】
今回のテーマは「心の傷とやさしいケア」。
まず、暴力や抑圧の構造を知ることから始まりました。

<暴力や抑圧の構造>

ざっくり言うと、こういう構造になっています。

「精神的・社会的優位」「経済的優位」「身体的優位」などの優位性を持つ側が、それらの優位性を特権や権力として支配を強化するためのツールとして使用する。
 ↓
優位性を持っているという自覚に乏しい状態で特権や権力を行使されるときに暴力が生じる。その行為が暴力と化す。
 ↓
暴力を振るわれる側は、それらの特権や権力によって自分自身の要望が抑圧されてしまう。
 ↓
暴力による力関係を基に双方のコミュニケーションが為されていく。
 ↓
「心の傷つき」になっていく。

<暴力や抑圧の構造を把握する>

それを踏まえて、実体験から「暴力の構造、抑圧が生じる構造」を認識する試みがなされました。ここでは、わたし自身ではなく、別の参加者さんが提示したあるできごとを例としてワークを進行していきました。

目の前に広げられている、人間関係や心理に関するいろいろなキーワードが書かれたカード群から、自分の感覚・感情に当てはまると感じるカードを1枚取り上げて…

1. 自分自身の心に引っ掛かるできごと
2. それに対してどんな気持ちになったか
3. それはなにが損なわれてしまったからか?侵害されたからか?
4. 自分のほんとうの感情を可視化する

こういう確認のプロセスを何度か繰り返していって、自分自身の暴力・抑圧の構造を明らかにしていきます。

自分の感覚あるいは感情に当てはまると感じるカードを取り上げて、前段の4つの項目を順に考えていく。それを何度か繰り返し、カードのキーワードの集まりから、はじめはモヤモヤしていたできごとの構造が徐々にハッキリと可視化されていく…。

自分の身に起こったできごとに対して、そのできごとの構造を把握すること、できごとに対する自分の気持ちを省みることが疎かになってしまうと、自分の本当の感情や考えに気づけなくなる。知らず知らずのうちに自分の気持ちを抑えてしまって、自分を大切にできなくなっていく。

無意識に抑圧してしまっている自分の素直な感情・感覚に注目をして可視化していくことが、自分を認めること、自分の気持ちに対してオープンになれることにつながっていく。それが自らの力で回復していくはじまりになっていくのだということを、一連の過程を通して感じました。

<回復への「4つの力」>

最後に、自尊心の支え、失敗やトラウマからの回復に役立つ「4つの力」の紹介がありました。

1. 身体的な力:身体を動かす
2. 精神的な力:目標達成体験
3. 情緒的な力:ポジティブな感情(好奇心・愛・感動など)
4. 社会的な力:周囲とのつながりや助け合いの実感

困っている人、弱っている人は、この4つの力が足りなくなってしまっている。今までは「なにかパワーが足りない」というようなぼんやりとした認識しかありませんでしたが、このように4つの力があるとわかると、もう少し具体的にイメージできるようになっていくように思えます。

最後は【クロージング】
各自、全体を通して振り返って、得たこと感じたことを話して共有します。

所感:構造を明らかにすることで心の回復へ

まず、暴力の構造をざっくりながら知ったこと。
言われてみれば確かにという内容ですが、具体的に構造としてイメージできると、できごとを少しでも冷静に見つめることができていきそうです。

できごとに対して感じたその気持ちは、なにが損なわれたから生じたのか?なにが侵害されたから生じたのか?その答えこそが、振りかざされている暴力の正体であって、抑圧されている要素。

どの優位性を振りかざされて暴力が生じているのか?構造を明らかにすることが、抑圧されている自分のほんとうの気持ちをあぶり出すことにつながっていく。そしてケアすべきことも見えてくる。

さらに「4つの力」。
人の心を支える力は4つの要素からなるという構造が意識できていると、どの力が欠落してしまっているのかが把握できてくる。すると、自分に、他者に、その都度どの力からつけ始めていくのがしっくりとくるのか、どの力からアプローチしていくのが最も波に乗っていけるのか、その判断がより的確に細やかにできていくのではないかとも思いました。

この観点は、今後の活動や対人関係に活かしていきたいですね。

「ゆらっく」セミナーについて

ゆらっく とは…

ゆらっく:『あなた(You)』が、『楽に』なれる場所
 「自分としっかり共にいる」
 「自分の声に耳を傾ける」
 「自分とゆっくり対話する」

講師は福多唯(ふくだゆい)さん。
女性護身術「Wen-Do(ウェンドー)」の、日本人初、かつ唯一のマスターインストラクターとして、女性専用のセルフディフェンスの普及活動に取り組んでおられます。企業や教育機関などでの教育・講演も多くの実績を残されています。

セルフディフェンスから派生した「いろんなパワー(外圧)に対する心的防御」として、日頃の自分の心持ちを整理する、また、自分の内なる声に耳を向けて、自分の思いや感覚を大切にすることが、日頃のセルフケアとしてスムーズに取り入れられるようになるためのセミナーでもある、とわたしは捉えています。

日常のこころのセルフケアのヒントをやさしく知って体験することができる。それにはうってつけの場であると思います。

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