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着ぐるみの「肌」、肌タイツ

人型の着ぐるみではほぼ必需品なのが「肌タイツ」と呼ばれるものです。

写真=Wakka Works・場所=東京都内の教室風スタジオ

写っているのは私なのですが、私を示すものは何もありません。自身の顔はもちろん、素肌も肌色のタイツによってくるまれて、隠されます。

紺野瀬織『着ぐるみで私の推しキャラを再現してみた

今回は、この「肌タイツ」について書いていきます。


肌タイツはどんなもの?どこで買う?

肌タイツはどんなもの?

肌タイツは、その名の通り全身を覆う肌色のタイツなのですが、こう書くと、いわゆるパーティーグッズとして数千円で買える肌色の全身タイツを思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。

実際のところ、肌タイツはほとんどが、上下はつながっている・背面にファスナー・顔の部分は前が見えるよう穴が開いている、というフォーマットです。形だけならパーティーグッズの肌色全身タイツと大して違いません。しかしながら、パーティーグッズの肌色全身タイツを着ぐるみコスプレで使う人は、まず見かけません。

肌タイツには、着た人の動きに完全に追従できる必要がありますから、衣類としては最高級の丈夫さが求められます。そして、人間の地肌に触れますから、着た後は必ず洗濯します。ところが、パーティーグッズの肌色全身タイツでは、そういったことが考えられていません。一方、着ぐるみ用として売られている肌タイツには、そういった使われ方を前提とした、さまざまな工夫がされています。

ちょっとギョッとする見た目ですが、
「あやめすたー」(現「ハダタイ.jp」)の肌タイツを広げた状態

肌タイツはどこで買う?

ですから、着ぐるみコスプレで使う肌タイツには、専門の業者がいます。日本ですと「ハダタイ.jp」(旧名「あやめ商店」「あやめすたー」)が代表的です。日本にもほかにいくつか、また、海外にも業者がありますが、「ハダタイ.jp」の肌タイツが着ぐるみ用肌タイツの標準となっていった歴史がありますので、一度は見ていただくといいでしょう。

価格を実際に見ると驚かれる方も多いとは思います。中には少しでも安くしたいという理由で海外の業者を探して依頼したり、ネットオークションやネットフリマで業者を探し出したりする方もいらっしゃいますが、前者は為替変動の影響を受けやすく送料もかさむことから、結果的には日本の業者と同じかそれ以上の価格になることがあります(業者によっては、現地向けの価格と日本向けの価格を使い分けているところもあるようです)。また、ネットオークションやネットフリマで個人を装ったり日本人を装ったりした海外の業者というのもありますが、「嘘をつかないと売れない」ということですから、そういう業者は避けたほうがいいとは言えます。

そういうわけで、正直なところ、肌タイツについては「ハダタイ.jp」を圧倒的にお勧めする次第ではあります。

(なお、私は「ハダタイ.jp」の関係者とも面識があるのでお断りをひとつ入れておきますと、この記事は私が勝手に書いたものであって、いわゆる「ハダタイ.jp」のステルスマーケティングまたはそれらに類するものではありません)

肌タイツのお手入れ

肌タイツの洗濯

実際に肌タイツを買った場合はそれぞれの業者の注意書きを見ていただくべきですが、特殊な布なので、洗濯にも注意が必要です。特に、多くの洗剤に含まれる蛍光剤は肌タイツの大敵ということで、蛍光剤無配合の洗剤「エマール」を推奨されていた時期もありました。結果、エマールの香りをかぐと着ぐるみを思い出すという条件反射が身に付く人もそれなりにいますが私もそのひとりで、普通の洗剤で洗濯できる肌タイツを買うようになったいまでも、肌タイツの洗濯にはエマールを使っています。

肌タイツの持ち具合

肌タイツは消耗品ですのでいつかは買い替えることになりますが、着ぐるみコスプレを趣味としている人向けに売られている肌タイツは、丈夫に作られているものが多いようです。たとえば、私が持っている「ハダタイ.jp」の肌タイツは数年単位で持ちます。最初に劣化するのは指先・足先の黒ずみや穴開き、肌色の色落ちといったところで、縫製がほつれるようなことは一度も遭遇したことがありません。

着ぐるみが肌タイツを着るのはなぜ?

肌タイツは、その名の通り全身を覆う肌色のタイツです。コスプレをする方には、「ボディーファウンデーション」の一種というと伝わるかもしれません。ただ、目的は微妙に違います。着ぐるみマスクの肌色と首から下の「肌色を合わせる」ことと「詰め物を隠す」ことが、着ぐるみコスプレで肌タイツを着る主な目的です。

肌色を合わせる

着ぐるみマスクの色は人間本来の肌色ではなく、表現したいキャラクターの肌の色を優先していますから、着ぐるみマスクをかぶっただけでは首から下との間に激しい違和感が出てきます。そこで、肌タイツを着ることで全身の一体感を出します。着ぐるみマスクの肌色に合わせた肌タイツを用意できるのが理想ですが、実際のところは、肌タイツとして売られている範囲の色の違い程度であれば違和感なく見えてくれるものです。

詰め物を隠す

着ぐるみは、表現したいキャラクターに体型を合わせるため、「体型補正」としていろいろな詰め物をします。その詰め物を覆い隠すのも、肌タイツの役目です。体型補正のための詰め物は肌タイツを着る前にすべて詰めます。肌タイツは、こういった詰め物があることを前提として、詰め物があっても透けて見えることなく、破けず・突っ張らず動けるように作る必要があります。

余談ですが、着ぐるみの詰め物についてのノウハウが気になる方は、メノコマキリ@ニャット・チーさんの『女性型着ぐるみ用 体型補正講座資料【基本編】』(有料記事)をご覧ください。なお、この記事では女性型着ぐるみ・男性向けとなっていますが、女性型着ぐるみは、多くの場合、男女問わず体型補正をしています。ですので、体型補正をしているから中の人が男性とは限らない、ということはお含みおきください。もちろん逆もしかり。

自分自身を隠す

それでも、こう思う方はいらっしゃるのではないかと思います。

「……でも、マスクがあれば誰だか分からなくなるんだから、肌タイツまでは要らなくない?」

その通りかもしれません。実際、いわゆる「ドールタイプ」の着ぐるみで、体型が出ない衣装しか着ないというのであれば特にそうなのですが、長袖・手袋・膝丈のスカート・タイツで肌を隠すことができるので、あえて肌タイツを着ない着ぐるみもいます。また、いわゆる「アニメ顔」の着ぐるみでも、肌タイツを着ない着ぐるみがいなかったわけではありません。

それでも、私が着ぐるみを着るならやっぱり肌タイツを着ないと……というのが本音だったりはします。着ぐるみで表現したいのはそのキャラクターそのもの、隙をつくりたくないのです。見る側にしてみても、あえて見せているならともかく、その人の素肌が見えて「しまって」いると興醒めしてしまいます。着ぐるみが肌タイツにこだわるのには、見る人にも楽しんでほしい、興醒めしてほしくないという気持ちがあるのです。

写真=Wakka Works・場所=東京都内の教室風スタジオ