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着ぐるみサポート、求ム!

紺野瀬織と申します。着ぐるみでのコスプレが趣味で、いまは主に、私の推しキャラである『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の朝香果林を再現しています。

今回は、今後ニーズが増えると考えられる着ぐるみサポートについて書くことにしました。


着ぐるみサポートのニーズ

今月は、趣味で着ぐるみを着ている人たちにとって大事件がありました。

以前から、公園で着ぐるみコスプレをしていた人物が、X(旧Twitter)で、着ぐるみを着ているときに子どもとふれあうことが楽しい、という趣旨の投稿をしたのが、グルーミング(性交や猥褻行為などの性的虐待を目的として、未成年の子どもと親しくなり、信頼など感情的なつながりを築き、手なずけ、時にはその家族とも感情的なつながりを築き、子どもの性的虐待への抵抗・妨害を低下させること)目的で公式のアニメキャラクターを装って着ぐるみを着用していたものとされて炎上状態に陥ったのです。これは、版権元からも注意喚起が出る事態となりました。

この事件の問題は2つありました。公式の着ぐるみと誤認させるような未必の故意があったことと、性的接触目的で着ぐるみを着ていると思われてしまいかねない投稿があったことでした。このことで、多くの人が脅威を感じたのではないでしょうか。

さて、この炎上が起こったのは、ちょうどコミックマーケットや大規模なコスプレイベントの直前でした。そこで、着ぐるみでの参加や該当の作品のコスプレでの参加をとりやめたりした人が出てきたり、一部のイベントでは開催自体が難しくなり延期を余儀なくされるといった影響が出ました。

そしてその後は、一般の方と交流することのあるコスプレイベントの多くで、着ぐるみで参加する人は必ずサポートをつけるなど、公式と誤認させないようにして、一般の方との不適切な接触に発展しないようにすることを主な目的としたレギュレーションが定められるに至りました。つまり、着ぐるみでコスプレイベントに出るときは、サポートがほぼ必須となったのです。

着ぐるみサポートになるには

着ぐるみは好きだけれど自分で持つことはできない、それでも、コスプレイベントなどで着ぐるみのサポートをする機会があれば、やってみたいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、ニーズが増えているのであればチャンスも増えます。ですが、そのチャンスを掴むには少々努力が必要です。

なぜ着ぐるみサポートのニーズが増えているのかといえば、着ぐるみと一般の方との間で不適切な接触が起こることのないようにするため、でしたね。ニーズが増えているということは必要だからということで、必要だからということは役目があるということです。

ですから、着ぐるみの側は、役目を果たしてくれる人、つまり信頼できる人にサポートをお願いすることになります。ということは、その着ぐるみにとって信頼できる人にならなければ、着ぐるみサポートにはなれないのです。

「こうすれば着ぐるみに信頼される」という決まった方法はありません。ただ、以前書いた『「着ぐるみに会ってみたいけど……自分から言い出すのは恥ずかしい」問題について』で書いたことを理解できる人ならば、ある程度の高い確率で着ぐるみに信頼されるように思います。

ところで、着ぐるみサポートをするのであれば、事前にその着ぐるみと面識を持つこと、打ち合わせをすること、そして、できれば着ぐるみを体験してみることをお勧めします。面識もない着ぐるみと、何の打ち合わせもせず、着ぐるみについての知識がないまま、当日合流して、果たしてサポートの役割を果たせるものなのだろうか?と考えてみましょう。なお、以前サンリオピューロランドのイベント「こすぷれピューロ」でサポートをしてくれた友人は着ぐるみ経験者で、友人とは参加の1ヶ月くらい前に打ち合わせをしてからイベントに臨みました。

着ぐるみサポートになったら

着ぐるみのサポートには、着ぐるみをとりまく脅威から着ぐるみを守るため、また、着ぐるみそのものが脅威と見做されないようにするため、着ぐるみの安全を確保する・着ぐるみと一般の人とのコミュニケーションを仲介するという役目があります。

着ぐるみの安全を確保する

まず、何度か書いていますが、着ぐるみの安全確保は大変です。着ぐるみマスクを被ると視界が非常に狭くなり、動きづらくなりますから、ちょっとした段差に気が付かずに転倒する確率や、熱中症に罹る確率も上がります。こういったトラブルを想定して着ぐるみを誘導したり、場合によっては更衣室まで戻したりする場面も出てきます。

また、世の中にはどういうわけか、着ぐるみには乱暴を働いてもいいと思っている人もいるようで、実際に乱暴を働かれることもあります。しかも、悪いことに着ぐるみは非常に繊細なモノで、取り扱い方を知らない人が不用意に触るとパーツが破損したりすることもあります。このような場合に割って入る役目を負うこともあります。

着ぐるみと一般の人とのコミュニケーションを仲介する

家族連れやグループも、コスプレとしての着ぐるみにとっては脅威になることがあります。最初からこちらを警戒して近寄らない場合は問題ないのですが、子どもがショーで見た着ぐるみさんと思い込んで、または単純にかわいく見えて駆け寄ってくることもありますし、場合によっては親御さんもまた着ぐるみはショーに出てくるものと思い込んでいることもあります。プリキュアとラブライブの区別がつかない人もいるかもしれない中で、公式の着ぐるみと誤認させるようなことがないように、また、性的接触目的と誤解されることもないように、説明を尽くす必要があります。

また、コミュニケーションが発生してしまう場合の対応も重要です。着ぐるみの側からコミュニケーションを働きかけないことは、昔からコスプレイベントに出ている着ぐるみコスプレイヤーの間では共通認識のある鉄則ですが、問題はこちらが応じなければならない場面です。公式の着ぐるみと誤認させるようなことがないように、また、性的接触目的と誤解されることもないようにしながら、さらに、コミュニケーションに応じる必要もあるからです。

唯一の正解があるわけではありません。ですが、あとで生じるかもしれない面倒ごとを予測しつつ、フレンドリーでありながら距離を保つ大人の対応が求められます。

そして、必要なコミュニケーションをとるとき、サポートがしっかりと対応しないというのは、時に致命的な結果を引き起こします。

着ぐるみサポート、求ム!

着ぐるみでコスプレイベントに出るとき、サポートがほぼ必須となりました。着ぐるみコスプレイヤーにとっては大変ですが、着ぐるみに会いたい、というあなたには、チャンスでもあります。

着ぐるみサポートのニーズが増えているということは必要だからということで、必要だからということは役目があるということです。

着ぐるみサポートは大変な役目です。しかし、一方でいままで写真や動画でしか見たことのなかった「インターネットで見た着ぐるみさん」が、全身であなたとコミュニケートしてくれるのを自分の目で見たときに覚える楽しさもあります。

今回は、着ぐるみが好きなひとりひとりにとって残念な事件が起こってしまいましたが、着ぐるみにとってのサポートの役目を改めて考えるきっかけとしてとらえ、場にいるひとりひとりを脅威に晒すことなく、着ぐるみを楽しめる時を取り戻したいものです。

スマートフォンの道案内を見ながら歩く朝香果林(着ぐるみ、虹ヶ咲学園冬服)
写真=アクアット・場所=TFTホール前(コスプレイベント中に撮影)