歪み愛⑴


ほらまただ

彼女は何も言わずにじっと僕を睨み続ける

うっすらと目が赤くなっているが絶対に泣かないと決め込んでいるようだ

その証拠に思い切り下唇を噛み怒りで肩を震わせている


「なんか言えよ!」


しばしの沈黙

サイレントトリートメントは僕が一番嫌いなやり方だ

僕はただ彼女とコミニュケーションが取りたいだけなのに

彼女が何を思っているのか知りたいだけなのに…

なのに

なんで

彼女は睨むのさえ疲れたのかすっと僕から視線を外し肩をすくめながら深いため息をついた

僕はそんな彼女の頑固な姿にまた腹がたつ

さらに意地汚い言葉を浴びせ続けた


「お前がビッチで嘘つきで惨めで虚しい女はもうみんな分かってるんだよ!お前の顔なんかもう二度と見たくない!今すぐこの家から消え去れよクソ!!」


ありったけの怒りを込めて彼女を罵った。


正直に言おう。

彼女に意地悪な言葉を浴びせている当時の僕の心境は複雑だった

もちろん傷つけている自覚はあった。

しかし同時に今まで味わったことのない幸福感さえ感じた

彼女は何も言わない

いや何も言えないのだ

この僕が今この瞬間のこの会話の主導権を握っていると気づいた時

罪悪感と背徳感が僕を何よりも興奮させた


「君は僕を愛していると言ったじゃないか!!!あの言葉は嘘だったのかよ!!」

彼女は何も言わない

恐怖と怒りで満ちた表情をしている

僕はもっと彼女のそんな表情をみたいとさえ思ってしまった

元はといえば黙っている君が悪い

僕と向き合おうとしない君が全部悪いんじゃないか!

僕は君をこんなに愛しているのに。



To be continued







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