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【連結納税】住民税の欠損金(控除対象個別帰属税額)についての解説

1.住民税の欠損金(控除対象個別帰属税額)とは

控除対象個別帰属額とは、連結納税制度にて発生した住民税上の欠損金を指します。この概念は連結納税制度下でのみ発生する概念で、国税と地方税(住民税)の計算方法の差異から発生するものとなります。すなわち、連結納税制度では連結グループ全体で所得計算を行うのに対し、地方税では、会社単体で所得計算を行うため、当該差異が発生することになります。

似たような概念で「控除対象個別帰属調整額」という概念がありますが、住民税の欠損金ではありますが、別の概念になりますので、本稿とは別の機会にご紹介したいと思います。

2.単体納税のケースの住民税の計算

控除対象個別帰属税額の概念を理解するために、まずは単体納税のケースの住民税の計算をみていきましょう。

単体納税のケースでは、①法人税で計算した欠損金控除後の課税所得(50)を計算し、②欠損金控除後の課税所得をベースに法人税を計算(11.6)し、③計算した法人税をベースに住民税額を計算(1.2)する流れとなります。

3.連結納税のケースの住民税の計算

では、連結納税のケースではどうなるでしょうか。
連結納税制度も基本的には法人税で計算した法人税額を基礎に住民税を計算する構造になります。ただし、連結納税制度では、自社の欠損金が他社の所得と相殺されて使用されてしまう点で違いがあります。2.と同じ数値例で、連結納税のケースを考えてみましょう。まずは、「控除対象個別帰属税額」の概念がない世界で考えてみます。
【(仮に)控除対象個別帰属税額の考え方がなかった場合】

X1年3月期は法人税額がありませんので、住民税額も0となります。

X2年3月期では、A社にて法人税額が23発生しており、法人税額をベースに住民税を計算した場合、住民税額は2.4となります。

ここでお気づきの方もいるかと思いますが、2.の単体納税のケースと数値例は同じなのにも関わらず、本ケースでは、A社で発生した欠損金がB社に使用されてしまったため、住民税額が1.2⇒2.4に増加してしまっています。

地方税は単体納税を基本とします。
それにも関わらず、連結納税を導入してしまったがために単体納税と計算結果が異なってしまっています。こちらを補完するために導入された概念が、「控除対象個別帰属税額」となります。すなわち、B社に使用された繰越欠損金を住民税で復活させることで、単体納税の計算結果と平仄をあわせるものとなります。

【控除対象個別帰属税額の考え方も考慮した場合】

X1年度の住民税の計算結果は同様です。ただし、B社に使用された欠損金額に対する法人税額(12)を控除対象個別帰属税額として認識します。

控除対象個別帰属税額(12)を住民税の欠損金として認識し、X2年3月期の住民税の計算上考慮することで、2.の単体納税と同様の結果(1.2)となります。

4.総括

以上が控除対象個別帰属税額の説明となります。
他の連結グループに使用されてしまった自社の欠損金額を住民税の計算上考慮させることで、単体納税制度の計算を保持する考え方と言えます。
初見だとなかなか理解しにくい概念(+名称が覚えにくい・・・)ではありますが、連結納税の実務では頻出の概念となりますので、計算ロジックを把握することが肝要となります。

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