長岡 発酵ツーリズム

 先日、新潟県の長岡市に行ってきました。実は初めての長岡だったんだけど、めちゃめちゃいい町だった!

↑長岡といえば、花火と火焔土器が有名

 今回僕を呼んでくれたのは、小笠原渉さんという長岡技術科学大学の教授で、発酵や微生物研究の世界のとても偉い方。と言われてもなんだかわかりにくいので、シンプルに言うと「ご機嫌な、飲んべえおじさん」。

 先日、東京青山ブックセンターで行われたイベントの登壇者として初めてご一緒させてもらって意気投合。打上げの席で小笠原さんが「ぜひ一度長岡に!」って言うから僕も「はい、もちろん!」なんて即答したのがきっかけ。まったく社交辞令な気持ちじゃなかったので、いつ行けるだろうとスケジュールとにらめっこしていたところ、ありがたいことに早速小笠原さんが呼んでくれた。

 伊丹からの始発便で新潟空港へ。そこからバスで新潟駅に移動して、新幹線に乗り換えて約20分。長岡って、関西からだと相当遠いイメージだったけど、意外と楽に行けて驚き(東京からだと新幹線一本90分で着く)。

 土曜日の朝だというのに、改札を出ると、小笠原さんだけじゃなく、長岡市役所の方もいらっしゃって、あ〜これはもうガッツリアテンドの巻だと察知。呑気にやってきちゃった僕は、少しスイッチを入れて、まずは駅直結の「アオーレ長岡」へ。

 以前から森本千絵ちゃんワークスが気になっていたアオーレ長岡。立派なアリーナと市役所と広場などが一つになっている施設なんだけど、なにより驚いたのが、ふつう役所の上層階にある議会場が一階の路面にあってびっくり!しかもガラス張り! これはガチで市政が身近になるね。日本中こうなればいいのにと思う。建築家の隈研吾さんアイデアなんだろうか。

 施設内の至る所で目にする「アオーレバード」は森本千絵ちゃんワークス。各フロアサインにも使用されていて、よーく見ると、くちばしと目が現在のフロアを指していたりして、なんだかイカしてる。やるなあ千絵ちゃん。

 さてさて、いよいよ本格的ツアーのはじまりだ。市役所のよねちゃん運転のもと、車で向かったのは、幾つかの酒蔵や味噌醤油蔵が集まっている摂田屋(せったや)という町。実は長岡市は、日本で2番目に酒蔵の多い市で、15蔵も造り酒屋がある。ちなみに1位は京都市。

 最初に伺った長谷川酒造さんは、昨年「ワイングラスで飲む日本酒アワード」で最高金賞を受賞。そのお酒はもちろん、代表銘柄の『雪紅梅』の純米吟醸などを試飲させてもらって、初っ端からすっかりいい気分。

 その後も味噌醤油蔵を幾つか回り、

 小笠原さんが「藤本さんにとにかくここを見てもらいたかったんだ」と、満を辞して連れてこられたのが、ここ。『サフラン酒製造本舗』!

 サフラン酒? はて? 要は養命酒的な薬用酒なんだけど、かつて新潟で大ヒットして、生みの親である吉澤仁太郎は、それはまあ巨額の富を得たとのこと。それで建てたのが、この蔵!

この、鏝(こて)絵、やばくない? 

 可愛いし、綺麗だし、とにかく圧倒される。ちなみにこの鏝絵を仕上げた左官職人の河上伊吉は、これだけの腕前を持っていながら携わったのはサフラン酒本舗だけで、しかも左官仕事の合間にサフラン酒の行商もしていたというから、吉澤仁太郎って相当魅力的な人物だったんだな。

 そしてこのサフラン酒が、いまでも飲める。

 とにかくあま〜くて、独特の薬草臭が苦手な人もいると思うけど、僕は嫌いじゃなかった。炭酸で割れば最近のエナジードリンクぽくなりそうだし、クラフトコーラが流行ってるいまなら、若い人たちの方が意外にすっと受け入れそう。

 そろそろお腹も減ってきたなというところで、再び車を走らせ連れて行ってもらったのは『江口だんご』という団子屋さん。元々はこの模型のように信濃川の中州のお茶屋だったとのこと。

 江口だんごさん、少し辺鄙なところにあるんだけど、その分、ロケーションが最高で、ちょい大げさに言うと近江八幡のラコリーナ的。でも、こういう企業が「たねや」さんのように成長するんだろうなあと感じる。そんな心配りにあふれたお店だった。

 笹団子を巻く姿、ずっとみてられる。

 一緒に回ってくれた小笠原さんの研究室の学生さん曰く、長岡の小学生は学校で笹団子の笹の巻き方を練習するとのこと。しかも団子の代わりに単一乾電池を使うっていうのが、妙にツボにはまった。最高エピソードだ。

 2階で食事もできる。お昼ご飯に、おこわのセットをチョイス。のっぺい汁とか最高。デザートの笹団子もちょうどいい。でもやっぱり、もっと団子食べたいよね〜 と五色団子を注文。

 さすがのうまさ。

 しかし気になったのが席数。どう考えても土日いっぱいだろうなあと思ったから、4代目社長の江口太郎さんに「席数増やさないんですか」って聞いたら、いやうちはこれがもう十分身の丈にあってますからと。その返答になんだか長岡人気質を感じた。商売っ気がないわけじゃないけれど、行き過ぎてしまわないように自制するその感じが好きだ。

 さて、いよいよ本丸へ。小笠原さんが務める長岡技術科学大学。科学技術大学ではなく、技術科学大学。なにかしらの技術(ときに発酵だったり)がそこにあって、そのサイエンスを研究する大学。そこでいろいろと研究内容について教わったあと、つれてきてくれたのは学食のテラス。

 ここでなんと、地元酒蔵『八海山』が造る『ライデンビール』が飲めちゃう。小笠原さんの研究対象でもある(っていうのがウケる)生ハムをつまみながら飲むIPA最高だったなあ。しかも、学食の方が自家製のナスの漬物とザーサイまで出してくれて、これこそまさに発酵ツーリズム。

 さあ続いては、お待ちかねの夜ごはん(すでに散々飲んでるけど)。

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藤本智士(Re:S)

編集者。1974年兵庫県在住。『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『風と土の秋田』『ほんとうのニッポンに出会う旅』共にリトルモア、『魔法をかける編集』インプレス。『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』など手掛けた書籍多数。

Re:S note(りすノート)

2006年に創刊した雑誌「Re:S(りす)」編集長の藤本智士が、いまあらためてお届けする、あたらしい“ふつう”のnote「Re:S」。 日々のこと。旅のこと。地方のこと。編集のこと。 記事アップは月4回以上かなぁ。
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