『ヒラク、この日いないってよ』イベントレポート その1

どうもこんにちは。
今回はいつもと趣向を変えて、
先日開催した、あるイベントの模様をお届けしたいと思います。

「ヒラク、この日いないってよ」と題されたそのイベントは、
現在、渋谷ヒカリエ8Fにあるd47ミュージアムで開催中の展覧会
『FermentationTourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅』
その関連イベントとして開催したものです。

本展キュレーターの小倉ヒラク海外出張中の穴を埋めるべく、クリエイティブディレクターとして関わった僕(藤本智士)をはじめ、会場デザインを担当した財部裕貴、公式書籍『日本発酵紀行』のデザインを担当した堀口努、同書籍の編集を担当した竹内厚(Re:S)という四人のおじさんが集まって、本展のクリエイティブについて話すという内容でした。

そもそも公開する気はなかったんですけど、いつもnoteを応援してくださっているみなさんへの感謝を込めて、イベントの模様を何回かに分けてお届けしようと思います。

ということで、その前に以下補足を。

◉発酵デザイナーの小倉ヒラクが展示をプロデュース。かつ自身で47都道府県をまわり、発見してきた発酵食品たちが展示されている。
◉それをどうやって見せるかというところを考えるのが藤本の役割。
◉ということで藤本は全体を見通す役割で最初から関わっている。
◉さらに会場デザイン担当の財部くんも割と初期段階から関わっている。
◉一方、堀口&竹内は、今年に入ってからの関わりなので温度差がある。
◉なので本展の全体像を掴みきれていないという竹内が進行役を務める。

そんな状況の共有からイベントはスタートしました。そして冒頭、竹内のキツめのツッコミからトークはスタートします。

竹内 なんでこういうスケジューリングになったのか。
藤本 いきなり愚痴?! まあ、ヒラクの旅が押しまくったっていうのはある。
堀口 発酵のせいじゃないの? 造りの時期が影響して取材が冬の寒い時期にギュッと固まるから、それより以前には取材できなかったって。
藤本 それはそうですね。
竹内 そんなことは、やる前からわかってるじゃないですか。だったらもうちょっと段取りたてていけばわかりそうなものなのに、どうしてカツカツになっていくのかっていうのは、財部さん、どう思ってますか?
藤本 詰めてくるなあー
財部 いやまあ、発酵のせいっていうのは確かにあって、それが予想以上にヒラクくんの取材スケジュールを押しましたね。
藤本 じゃあ、まずは一番最初の話からした方がいいね。
竹内 お願いします。
藤本 最初の最初はたぶん、d47ミュージアム館長の黒江さんとヒラクからスタートしたと思うんですけど。
竹内 それは何年前ですか?

「2017年の年末ですー!」(黒江さんの天の声)

藤本 ありがとう。うん、それで発酵の企画をやりましょうとなって、それで、いつだったかヒラクが突然神戸に来たんだよね。一緒に飲んで、酒量も増え、正常な判断ができなくなったところに「クリエイティブディレクターやってもらえませんか?」って言われて。二つ返事で「いいよ」って言ってしもた。お酒のせいか気持ちよくなってるから「ヒラクがそんな言うてくれんねやったらやるわ!」って調子にのって。それがいよいよ明確になってきて、これは大変なこと引き受けちゃったぞと思い始めたのが、2018年の夏くらいかな。
財部 夏前ですね、きっと。
竹内 ヒラクさん一人でも、ある程度のことができるじゃないですか。そのなかでクリエティブディレクターとして藤本さんが関わるってなったときに、どの部分を補うというのは具体的にあったんですか?
藤本 そこはもちろん、展覧会場をどういうふうに作っていくかっていうのが一番の肝かなと。そして公式書籍の編集。とにかく彼は実際に現場をまわるわけじゃないですか。
竹内 47都道府県を移動しないといけないわけですもんね。
藤本 そうそう。そういう意味でヒラクは、その成果をどう見せるかってことを考えるのを放棄したかったんだと思うんだよね。
竹内 人に任せたかったっていうことですか?
藤本 そう。絶対自分のキャパを超えちゃうと。そもそもヒラクを仕事でよく行く秋田に呼んだりしてたんですよ。
竹内 この展覧会よりも前にね。
藤本 うん。ヒラクと一緒に秋田とか行くと、それまで何気に触れてた東北の食文化=発酵食文化を、彼がその名前のとおり、どんどんヒラいていってくれるんですよ。酒蔵連れて行ったり、麹屋さん連れて行ったりすると、彼が全部わかりやすく説明してくれるわけです。だから僕は彼と行くとすごく勉強になるので、よく一緒に秋田に行ってた。そういうつながりやコミュニケーションのなかで、彼は彼なりに僕に任せるといいかもという何かを感じてくれたのかもしれないですね。
竹内 藤本さんとしては、どういうスタンスで取り組んでいったんですか。
藤本 彼はさっき言ったように、やっぱりヒラいてくれる存在なんだけど、そんな彼自身がもう47都道府県を旅することでいっぱいになってしまうから、その代わりを果たさなきゃいけないというか、つまり、発酵をどうわかりやすく見せるか? とか、どうポップに表現するか? ってことを考えましたね。だから、ぶっちゃけ、一番最初に財部くんにこういうデザインでやってほしいって見せたのサンリオでしたからね。
財部 そうそう。一番最初に言われたのは、「財部くん、サンリオみたいにして」って。
竹内 それで、まんまとピンクとかになってんのや。
財部 まんまとって(笑)。
藤本 ちょっとブッ飛んだキキララみたいでしょ。
財部 最初その話をしたときに、おじさん2人喫茶店でキキララの画面を見せ合いながら、「やっぱかわいいですね」みたいな。
竹内 その心はなんですか? 発酵の反対にありそうなかわいいものを入れこんだほうが伝わるんじゃないかってこと?
藤本 発酵って字面からしてもうガチガチじゃないですか。せっかく渋谷のヒカリエっていうポップな場所で、若い子が間違って入ってくる可能性があるから、出来るだけ間口の広いものをやったほうがいいじゃないですか。一番最初はそればっか考えてたんですよ。どうやったら間違ってでも、興味ない人が入ってくれるかみたいな。
竹内 その間に置くものがサンリオやったってことやね。
藤本 そうそう。それで2人でずっといろんなキキララ見てた。
竹内 財部さん的には、そのニュアンスをすぐ理解できたんですか? ポップにというのも割とよく言われるオーダーですよね。
財部 それが割とできちゃって。
竹内 でもサンリオって言われたら余計わからなくなるんじゃないですか?
財部 けっこうすんなり「ああ、なるほど」ってなっちゃいました。
竹内 ほんとに?
藤本 その辺は的確やからオイラ。
竹内 それは発注側じゃなくて受け手側やろ!
財部 ほんと、すんなり。
藤本 やろ? ほら。
竹内 で、どう進めたんですか? サンリオだけでは進めないですよね。
藤本 そこから何パターンか出してもらったよね。最初はイラスト描いてもらおうかとか。ラフ段階ではちょっと悶々としたね。
財部 ヒラクさんのイラストを使うべきか……とか。
竹内 何から作り始めたんですか?
財部 ウェブのトップビジュアルですね。

竹内 発酵の文字とか?
財部
 そうですそうです。そういうものから作り始めました。
藤本 ヒラクって、ああ見えて研究者じゃないですか。めちゃめちゃ理系の。とは言え、彼の稀有なところはめちゃめちゃ文系で話してくれるっていうことではあるんですけど、やっぱりそれって、関西弁で言うところの「カシコ」でしょ。アホな感じはしないじゃないですか。だけど賢さが全面に出ると人を選んじゃうなっていうのがあるので、言って見れば、どうやってアホにするかっていう、たたかい。
竹内 財部くん的には、それはサンリオというイメージソースでわかった?
財部 内容としてはどうしても小難しいことを言わざるを得ない展示になることはわかってたので。
竹内 深いところに行きますもんね。
財部 事前にヒラクくんの写真や、メッセージのやりとりをみて、とにかくすごい思いが入っているから、それを全部見せると結構ぐったりしちゃうというか。
竹内 情報量多いし。
財部 そうそう。それをいかに軽快に見せていくかっていうのは考えました。そこが藤本さん的なポジティブにアホにするってところですかね。
竹内 まあアホニュアンスは大阪独特やから、誰もがわかるものではないですもんね。
財部 でも、そこは同じく意識したところですね。
竹内 じゃあ、ある程度スムーズに作っていけたっていうことなんですかね。メインビジュアルは。
財部 そうですね。ピンクと水色のグラデーションも、キキララからとったんですけど。
竹内 それ言うていいの?
財部 インスピレーションはキキララなんですけど、よくよく考えたら、いいなと思って。いろんな意味がつけられて。南北っていう寒暖の差がある日本の気候と、発酵っていうものが、酸性からアルカリ性に変わったりとか。陰性から陽性に変わるとかもそうですけど。あとは、静と動とか、いろんな意味をつけられるなと思って。
竹内 そういうところ、デザイナーですよね。
堀口 あとからつけた感がすごい。
藤本 優秀なデザイナーって、そういうもんじゃないですか。
堀口 うちもキキララとかの話は全然知らないから、後から加わった身としては、ピンクと青のグラデーションってなんやろう?って。それで僕が思ったのは寒暖差くらいで、この色に意味あるんかな……って思いながら。だけど誰も教えてくれない。
藤本 いや、これが素っ頓狂なデザイナーさんやったら、例えば日本地図のグラデーションとかで、上部つまり北側をピンク、南側を水色にしたりする可能性もあるんですよ。

だけど、それって暗黙のというか、もちろん最初からそう思って水色とピンクにしてるわけじゃないから、いちいち言葉にしないじゃないですか。
竹内 そのつもりで合わせてないしね。
藤本 そう。だけど、そこからどれだけ意味を引っ張りあげてくるか。どれだけ汲み取るかみたいな感じやから。そこが、すなわちお二人が優秀なところじゃないですか。
財部 ヒラクくんと会う前に決めて、その後ヒラクくんと話をしてて、この色でよかったって思ったのは、さっき言った静と動の部分で。ヒラクくんって、めちゃめちゃ静かに考えてると思いきや、多動なところもあるし、それもおもしろいなと思って。これはヒラクくん自体にも合いそうだなと思って進めました。
藤本 財部くんがデザインしてくれた発酵の文字の「発」の字のグラフィックとかも明確にヒラクだよね。ヒラクが旅してる感じ。
財部 ツーリズム感をどこで出そうかっていうのは、藤本さんと話してて。最初写真がなかったので、文字でなんとか表現しようと。
竹内 それで「発」が歩いてるんや。
財部 「発」がヒラクくんのイメージで「酵」が日本地図になってるという。
竹内 そこはヒラクさんのアイデアをもらってる?
財部 いや、こちらでヒラクくんをイメージして作った感じです。
藤本 なんだってそうだと思うんですけど、思いつきじゃないですか、クリエティブって。思いつきで始まったもののはずが、後で意味がわかってくるっていうことの連続ですよね。
竹内 それが一番いい思いつきやからね。思いつくのはいっぱい思いつくから、一応言ってみたりするけど、あかん思いつきは広がらないというか、伸びないですよね。
藤本 今回の企画のなかでアカン思いつきってあったっけ?
財部 なんだろう?
竹内 あかんことはないけど、本でいうと、タイトルは全然別のを一回考えたよね。ヒラクさんと話すなかでボツになったっていう。
藤本 そうか、ああいうのも過程としてはよかったよね。公式書籍のタイトルは「日本発酵紀行」っていうがっつりしたタイトルですけど、実はそうじゃないパターンっていうのが山ほどあって、そのなかでも、僕がこれでいけないか? って出したタイトルがあったんですよね。
竹内 そうそのタイトルが……

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藤本智士(Re:S)

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Re:S note(りすノート)

2006年に創刊した雑誌「Re:S(りす)」編集長の藤本智士が、いまあらためてお届けする、あたらしい“ふつう”のnote「Re:S」。 日々のこと。旅のこと。地方のこと。編集のこと。 記事アップは月4回以上かなぁ。
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