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天空の不夜城

ようやく『のんびり』次号を脱稿。
ふぅーーーっと大きく息を吐いて、ゆっくりと息を吸うようにコーヒーを。今朝は秋田駅のビドフランス。ここのコーヒーは意外と美味いのだ。

神戸を出発して、東京→仙台→八戸→弘前→秋田と、連日の車移動のなか、そのほとんどをアシスタントのはっちに運転してもらいながら、助手席でひたすらMacにむかうのだけど、先々でこの話をする度に「それでよく酔わないですね」と言われる。

乗り物酔いの原因は、振動やスピードの変化で、平衡感覚をつかさどる三半規管が刺激されて、自律神経のバランスが崩れてしまうことから起こる。子供の頃は乗り物が苦手だったという人も、大人になると平気になる場合も多いから、大人になっても酔う人は単純に乗り物に対する経験が不足しているなんてことも言われるけれど、そういう意味では経験値はMAD MAXだ。

そんなマッドマックス怒りの東北道を原稿催促とチェイスしながら北上する日々のなか、連夜僕に英気を与えてくれたのは、東北の夏祭りだった。7月31日の八戸三社大祭の前夜祭から始まり、8月1日は弘前ねぷた祭り、2日は青森ねぶた祭り、そして昨夜は秋田で竿燈祭り、を予定していたけれど気が変わって、秋田県能代の天空の不夜城へ。これが思いのほか素晴らしかった。

天空の不夜城。宮崎駿と馳星周が偶然飲み屋で遭遇したようなこのお祭りのことは、なんとなく耳にしてはいたけれど、実際に行ってみたらこれがもう圧巻だった。その名のごとく、天空にむかって高くそびえる城郭型の巨大灯籠は、一番高いもので23.5メートル。電線のない大通りを通行止めにして、大勢でゆっくりと引き回すこの七夕行事は、まだまだお客さんが少なくて、能代(のしろ)ならぬ、のびしろいっぱいのお祭りだ。

こんなにすごい灯籠なのに、どうして観光客が少ないのか? それはこのお祭りがまだ3年目だからだ。かといってこの祭りに歴史がないわけではない。文献では天保時代に17.6メートルもある城郭型の灯籠を夜明けまで引き回したという記述がある。しかし時代と共に高さが制限され、「能代役七夕(のしろ やくたなばた)」という天空の不夜城に比べれば小さな城郭型の灯籠を引き回す七夕祭りが毎年行われてきた。それはそれでとても見応えのあるものなのだけれど、地域のつながりが薄くなりつつあるいまこそ、かつての17.6メートル級の巨大灯籠を製作して再び町を盛り上げよう! と、見つかった3枚の写真をもとに復活させたのが「天空の不夜城」なのだ。

大きな祭りのない町に住んでいると、こんなお祭りがある町を羨ましく思う。夜に祭りを控えた日中に打合せなどしようものなら、どこかみんなフワフワと上の空で、台風が近づく前の子供の様な無邪気さを感じて、なんだか僕もまあ面倒なことは置いときましょう。って気分になる。足は自然とお祭りへ向かい、そして翌朝、一旦保留しちゃった自分にMAD MAX 怒りの東北道がリスタートする。

今日は秋田県にかほ市へ。旅はつづく。


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