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トリノス食堂で、きのう何食べた?

 長旅から戻ると、家族でご飯食べつつ、溜まったドラマを観るのが幸福。奥さんも娘のそらも、すでにオンタイムで観ていたりするのに、一緒になって観てくれるから、なんだかありがたいなと思う。そらは小さい頃からドラマ好きで、少し前までは同じくドラマ好きな、のんびり秋田メンバーと、来期そらが観るドラマリストを共有していたくらいだ。

 もともとドラマを観る習慣がなかったオイラは、完全にそらの影響でドラマ好きになった。なので今期もいろいろ楽しんでいるけれど、特に好きなのが『きのう何食べた?』だ。

 シロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)という同性カップルの日常がリアル且つコミカルに描かれたとても秀逸なドラマで、ちょっとした心の機微を細やかに表現する2人の演技が素晴らしく、2人と同調するように一喜一憂しながら楽しんでいる。

 そんなドラマ『きのう何食べた?』の軸となっているのが、主人公の1人、シロさんがつくる日々のご飯だ。それが毎回めちゃめちゃ美味しそうで、うちの奥さんもいくつか真似してつくってみたりしてる。そうやって気軽に真似してみようと思うくらいだから、そこに出てくる料理は、何か特別な素材を使うわけでもなければ、観たことないような斬新なものでもない。でもだからこそ、最高なのだ。

 せっかくだからその魅力についてもう一つだけ語ると、それは、西島秀俊演じるシロさんの、見事なまでに美しい手際。素晴らしい段取りで淡々と料理を完成させていくそのリズムがドラマ全体のリズムとなって、そのトーンをコントロールしている。だからこのドラマでは大きな事件は一切起こらない。すべてはシロさんの日々の料理とシンクロしているのだ。そんな淡々とした日々にある小さな抑揚こそが幸福っていうものの正体なんじゃないかと気づかせてくれる。このドラマを家族三人で見ているその時間がとても幸福なように。

 あ、やばい。今日はドラマの話をしたいんじゃなかった。

 秋田から帰る前日、秋田市にある『トリノス食堂』というお店に行った。以前、ランチを食べに行ったことがあったものの、夜営業に訪れるのは初めてだった。 

 『トリノス食堂』店主のヨシロウくんとは、のんびりチームを介して面識はあったし、のんびりが秋田市民市場で開催した『なんもダイニング』というイベントにも出店してくれていたので、とにかくいつだって美味しいものを作ってくれる人っていう認識はあったけれど、ゆったりと彼の料理に向き合ったのはこれが初めてな気がした。

 まさに彼の料理は、ある意味でシロさんの料理だった。もちろん飲食店だから、それなりの素材を使っているのは間違いないけれど、彼の料理からは妙なロジックを一切感じなかった。感じるのは、ただただ、店主のヨシロウくんの抜群なセンスだけ。久しぶりに心の底から「大好きだーーー!」と叫びたくなる料理だった。というか「大好きだーーー!」と叫びたくなる料理人だった。

 そもそも昨夜は、ある役所職員の方と夜ご飯をご一緒することになり、のんびり秋田メンバーのヤブちゃんにお店の選択をお任せしたら、たまたま『トリノス食堂』を予約してくれたというだけなんだけど、いま思えば変な予兆があった。

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