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08.展覧会で写真撮影OKにする理由

 とにもかくにもいまの世の中はおおらかさが足りない。タレントさんが線路入って写真撮ったくらいで記者会見までして謝らなあかんとか、完全にどうかしてる。って、いやいやいや、わかってる! わかってるから。それをSNSでアップしたのがあかんのでしょ。あとタレントさんっていう公の立場の人だったってのもあかんのでしょ。そういう感じのも全部わかってるから。そんなん全部わかった上で、というか、わかってるからこそ、そんな鬼の首とったみたいに言わなくていい。

 世の中のルールの大抵は「時と場合による」はずなのに、多くの人が融通の利かない白か黒かの対応に寄りかかるのは、そのグレーに触れると、いいもわるいも、その人のセンスが問われるから。上述の例のように「ダメって書いてあるじゃん」的な、センスの欠片もない正論を平然と振りかざしてる人たちの多さに辟易する僕は、そういう人たちにむけて、あえて積極的にグレーゾーンを作って、真正面からその人のセンスを露呈させたくなる。展覧会で写真撮影OKにするのは、そんな気持ちが裏にある。

 現在も木版画家池田修三さんの展覧会を撮影OKにしているけれど、それは、いまは亡き池田修三さんがとてもおおらかな人だったということに加えて、池田修三という生前は正しく評価されたと言えない才能を、テクノロジーの進化をもってより多くの人に知ってもらいたいという思いがあるから。
 つまりはお客さんが良いと思ってくれたら、それぞれが良いと思うところを切り取ってもらって、その人なりの言葉とともに、ツイッターやインスタなどに上げて拡散いただきたい、という気持ち。

 それに木版画独特の質感って、現場で実物をみなければ伝わらない凄さがあって、デジタルで拡散されようとも、そのことで会場に行かなくていいやと思う人は限りなく少ないと思っている。そんな小さなデメリット以上に、その情報をもって展覧会の開催及び、作家や作品そのものを知ってくれることの方が、未来のためにはとても重要だ。

 その上で、会場に来られたお客さんは、大きく【写真撮影OK】と書かれたPOPを前に、突然、明日から私服で登校OKですと言われた高校生のごとく、自らのセンスと対峙する。

 で、見てて面白いのは、意外に「それでも私は制服着てく」って人、つまりは写真撮らないという人が結構いらっしゃること。そういう人、素直にかっこいい。でも「やっぱり撮りたい!」と思ってくれるのも、もちろん嬉しくって、でもそうなると今度は、自らのセンスと向き合うポイントが3段階くらい出てくるから大変だなあとも思う。その3つを以下整理。

◎一つ目は、会場での撮影の仕方
 それでもやっぱりどこか申し訳なさそうに撮る人が多くて、なんだかいいなって思う一方で、額面どおりに受け取るだけの「タダならいただきましょ」オバサンが、まわりの方を気にせずに、カシャカシャッ仰々しいシャッター音を響かせ続けたりしてると、あ〜残念やなあ〜と思う。

◎2つ目は、SNSにUPするか否か
 どうせ撮ったのならぜひUPして拡散いただきたいとこちらは思っているんだけど、撮ったもののUPしないって人も多くて、それはそれできちんと向き合ってくださっている証拠のようで、なんだかありがたいなあって思う。
 逆に、まったく無思考に、撮ったものを何枚も何枚もアップされる方とかは、ほんと勘弁してほしいって思う。

◎3つ目は、どの写真をUPするか?
 やっぱり撮影したんだからUPしなきゃね、と写真をチョイスする段になって「やべえ、私、超写真下手だわ」とか「なんかこれ上げるとかえってマイナスじゃね?」みたいなことになる人も多数。だから本当はすごい数撮ってたんだろうに
「スマホの電池切れた ( ゚д゚)」
とか書く人もいらして、ほんと申し訳ないけど、ありがとうございます、って気持ちになる。
 その一方で、それオフィシャルで使わせてください! ってくらい良い写真を上げてくれる人や、こちらの意図を汲んだ言葉を添えてくれる人もいて、そういうセンス抜群の人は、どんどんRTしたくなる。


 つまりは、なんでもかんでもダメだというよりも、OKですよ、という方が、どこまでOKなのかを受け手は考えなきゃいけなくなるってこと。だから僕にとっては、いくら写真撮影OKって言っても、高そうなデジカメで全作品接写していく「グッズでも作る気か?」オジサンとか、主催者の気持ちは考えず、得意げに展覧会の全貌をUPして満足してる「消費者代表気取り」オバサンとかこそ、記者会見して謝ってほしい。もちろん冗談やけど。

 まあ、たまにそんな人だっているけれど、そこに甘んじてルールばっか決めてくから、パリコレじゃなくて、ポリコレのモデルばっか増える。だからまずは展覧会の写真撮影OKあたりから揺さぶっていきましょうよ、っていうそんな話。


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