硝子

久しぶりに会った彼が半身
硝子になっていた
きけば毎日すこしずつ
液状にした硝子を
皮下注射しているという
もう二年になるかなあ
この調子だと年内にはおわるよ
笑って
カップを握った 指が
砕けて散らばった
わたしはじっとこらえて
一片ひそかに包み
家へ持ち帰った

この冷たい欠片を呑めば
ひとときに硝子体になると知っている
よかったら
冬のよく曇った日
屈折率1.8の優しい背を抱き
透明の恍惚に溶けた塊を
砂になるまで くりかえし
高い所から落として下さい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?