【N07】知らない人んち(仮)・第二話#テレ東シナリオコンテスト
10/8に投稿したNコラムで参加した、テレビ東京さんの『知らない人んち(仮)』シナリオコンテスト。11/4、いよいよ第一話が放送されました。
第一話は謎に謎を重ねてくるだろうな、と思っていた通りでしたね!プロの方のシナリオはまさかのSFになって「そうくる?!」と驚きました。
私の前回応募シナリオも、ご検討いただけたようで嬉しいです!ただ……クレジットに載った名前の綴りが……間違ってました。涙
私は『紅葉/reasnot』です!
「次こそは正しい名前でクレジットしてもらいたい」という思いを込めて、第二話のコンテストにも参加します。笑
前回の反省を生かし、謎への回答から書いていきます。
謎への回答
1、「ニゲテ」のメッセージを書いたのは誰?
→第二話では明示しない。
2、アクが心の病気というのは本当?ウソ?
→ウソ。本当に心の病気なのはきいろ。
3、3人(+きいろ)の正体は?
→アク:医者(精神疾患系)。
キャン:アクの助手。心理カウンセラー的職業。
ジェミ:家政婦(ヘルパー)。
きいろ:自分をユーチューバーと思い込んでいる病んだ女子高生。
4、アクの監視カメラの目的は?
→きいろの奇行を監視するため、叔父(保護者)の許可のもとで設置。※女子部屋は、本当はきいろとキャンが住んでいる部屋。
5、なぜきいろが子どもの頃に描いた絵がこの家にあるのか?
→この家は、もともときいろが暮らしている(た)家だから。
6、暗室には何があるのか?
→第二話では明示しない。
★タイトルについて
→第一話と第二話は「知らない人んち(仮)」でしたが、第三話は「わたしのうち?」に変化、第四話のラストで「私たちの家」となり完結。
ドラマ全体のストーリー
女子高生のまなかきいろは、人気ユーチューバーの両親をもち、家族三人で仲良く暮らしていた。しかしある日、家族でのドライブを撮影中、交通事故に巻き込まれる。両親は他界し、きいろは軽傷で済んだものの「自分が撮影していたせいで両親は死んでしまった」と思い込み、心を病んでしまった。記憶障害を発症し、衝動的な奇行を繰り返すようになる。
きいろの後見人となった叔父は、介護に疲れ果て、「我が家で面倒を見るのは限界だ。他に良い方法はないか」と知恵を絞る。その結果、きいろを両親と暮らしていた家に戻し、医者(アク)とカウンセラー(キャン)、家政婦(ジェミ)を雇い、つきっきりで面倒を見てもらうことにした。
最初は自分の名前すら忘れていたきいろだったが、慣れ親しんだ家での暮らしや、アクとキャンの献身的な介護により、徐々に自分を取り戻していく。共同生活がはじまって四か月が経つ頃には、自分の名前を思い出し、ちなんだ色のパーカーを買いに行くなど、社会性を回復しつつあった。
そんなある日、きいろはいつものように発作を起こし、荷物をまとめて家を飛び出す。家を出てしばらく歩き、階段にさしかかったところで、「私はユーチューバーだ。バイトを首になって金欠で崖っぷちだ。面白い動画を撮影して、投稿しなければ」と思い込んで行動を開始する。【第一話】
ユーチューバーになりきって街をあるいていたきいろは、ジェミを発見(彼女のことはすっかり忘れている)。ジェミは、突然家を飛び出したきいろを探しながら、彼女が前日拾ってきた死んだ動物を埋めていた。※第一話で『落とし物』とジェミが嘘をついたのは「死」にまつわる単語を出すと、きいろがパニックになるため。
遠くからきいろを見て、妄想に取りつかれていることに気づいたアクは、とっさに、彼女につきあって芝居を打つことを決めた。外観撮影を拒否したり、あだ名を名乗ったりしたのは、万が一、動画が外部に漏れた際、個人情報が暴かれるのをできるだけ防ぐためである。
「きいろが自らをユーチューバーと思い込んだのは、両親を亡くしたトラウマに向き合いつつある兆候かもしれない。しばらく様子を見守ろう。せっかくなら、彼女がユーチューバー活動を楽しめるようにしてあげよう」。アクの判断に従い、演技をするキャン。【第二話】
しかしジェミは、四か月に渡る介護生活にうんざりしていたこともあり、もっと直接的にきいろへアプローチした方がいいのではと考える。
独断できいろを捕まえ、「ねえ。ユーチューバーっていうなら、あなたのチャンネルのURLを教えてよ」と迫るジェミ。「チャンネルの名前は?登録者数は何人?これまでに何本の動画を投稿したの?」。聞かれれば聞かれるほど、途方に暮れるきいろ。
「ねえ。そろそろ思い出してもいいんじゃない?ユーチューバーはあなたじゃなくて、あなたの両親でしょ」。
ジェミの放った言葉が決定打となり、きいろに過去の記憶が蘇る。
全てを思い出した彼女が取る行動とは?
きいろは、トラウマを克服し、真の回復の道を歩んでいけるのか?
【第三話にて回復への道筋、残る謎(ニゲテ、暗室、ジェミとキャンが「見られたかも」「このままでは帰せない」と言っていた対象等)の開示】
【第四話にて大団円。少しだけ、その後の話。序盤のサスペンス・ミステリーの雰囲気を覆し、ハートフルコメディドラマとして終幕】
第二話の脚本
①男子部屋
監視カメラ映像を見ているアク。ノックの音。ジェミが入ってくる。
「どうですか?」
「相変わらずだな。完璧にユーチューバーになりきっている」
「先生とキャンちゃんの名演技、さすがですね」
苦笑するアク。ジェミは回想に入る。
②部屋
ごく普通の部屋の中央の椅子に、ゲスト俳優(男性A)が座っている。足元には銀色のアタッシュケースが置かれている。
男性Aの正面には、カルテを並べた机があり、アクが座っている。アクの後ろにキャンが立っている。二人とも白衣姿。
「きいろのことですが、もう手に負えません」
男性Aは心底疲れた顔をしている。
「兄夫婦が事故で亡くなり、一人残されたあの子を支えられるのは、唯一の血縁である私しかいないと思って頑張ってきましたが……。
身体の傷は治っても、心の傷は全く癒えていない。あの子は日に日に病んでいきます。自分の名前も、生い立ちも、親も、通っていた学校や友達のことも、何もかも忘れてしまった。もはや、まともな会話ひとつできません」
アク、深く頷く。
「ご心労をお察しします」
男性Aは首を横に振る。
セピア色に染まる画面。信号機が青→黄色→赤とゆっくり変わっていく。セーラー服姿のきいろが、車の後部座席でスマホを構えているカット。
「やっぱり、あの子は自分を責めているんです。
あの子の両親は人気ユーチューバーでした。家族のドライブの様子を動画にして投稿するため、きいろにスマホを持たせて撮影をしていました。
車が赤信号で停まったとき、きいろが『お父さん、ちょっとこっち向いて』と声をかけたんです。運転席の兄が振り向き、カメラに手を振ったとき、交差点の向こうからトラックが突っ込んできた。
もし兄が前を向いていて、ハンドルを握っていたとしても、あの速度で突っ込んでくるトラックを避けることはできなかったでしょう。それでもきいろは、あのとき自分が声をかけなければ、と思っているんです」
男性Aは頭を抱える。
「体の傷は治って、無事に退院しましたが、あの子は変な行動ばかりとります。突然叫び出したり、まわりのものを壊したり。高校は休学させました。しかしあの子が家にいると、俺や妻や息子のほうが病んでしまいそうです」
アク、再び頷く。
「皆さまは、姪御さんのために十分手を尽くされています。でも、皆さまが壊れてしまっては身も蓋もありません。休息が必要です。
そしてきいろさんには、違うアプローチからの治療が必要ですね」
後ろのキャンも、同情を浮かべた顔で頷く。
ぱっと顔をあげる男性。
「はい。それで考えたのですが、きいろを兄の家に戻そうと思います」
「一人で?」
「いえ。先生方に、一緒に住んでいただきたいのです」
目を見開くアクとキャン。
ゲスト俳優の男性は、足元のアタッシュケースを抱え上げ、開ける。中にはこぼれんばかりの札束。
「ここに一千万円用意しました。
まずは半年、きいろと暮らしていただけませんか。
幼いころから暮らした家であれば、あの子も少しは落ち着くかもしれません。さらに、先生方の知見で、つきっきりの治療をしてやってください。
どんな方法でも構いません。あの子を治してやってください」
顔を見合わせるアクとキャン。アクは、おずおずと、
「いや、しかし…僕らには、他にも患者さんが」
「お願いします。きいろの専属の医者になってください。一千万円では少ないですか?では、三千万円でいかがですか?」
男性Aの目は血走っている。
「もっと必要であれば、ご相談に応じます。兄夫婦の死亡保険金や、遺産、交通事故による慰謝料などありますので。お金ならいくらでも出します」
キャンは申し訳なさそうに微笑みながら、
「一緒に住むってなると、治療だけじゃなくなってきますよね。私も、先生も、家事は得意じゃないんです」
「ご心配なく。生前、兄夫婦が雇っていたヘルパーを再び雇いました。週5日、昼の12時から夜7時まで来てくれます。料理や洗濯などの家事は全て彼女に任せてください。実は、今日、ここに連れてきています」
男性は立ち上がり、ドアを開ける。ジェミが中に入ってきておじぎをする。
男性は、三人に対して深々とお辞儀をする。
「皆さん、きいろを、どうぞよろしくお願いします!」
③男子部屋
回想終了。ため息をつくジェミ。
「それにしても、ユーチューバーごっこをはじめるなんて、初めてのケースですね。先生、どうして付き合ってあげてるんですか?」
アクは腕組みをしている。
「共同生活を始めて四ヶ月。これまでの奇行は、目的がないものばかりだった。暴れたり、叫んだり。外で杖を拾ってきたり、犬のケージを拾ってきたり、三輪車に乗ってきたり」
第一話のアクの奇行シーンを彷彿とさせる、主体だけきいろに変えた映像。
「だが最近は自分の名前を思い出し、『黄色の』パーカーを買ってくるなど、徐々に社会性を取り戻しつつある。そして今日だ。今日の行動は、明らかにこれまでと違う。自分をユーチューバーと名乗り、『面白い動画を撮る』という明確な目的なもとに動いている」
「心が治ってきている証だと?」
「ああ。両親のトラウマに向き合おうとしているのかもしれない。もう少しこのまま様子が見ようと思う。あくまで『俺が病気』という設定で、心の病気に関する話をしたり、行動を見せることで、自分を客観視する助けになるかもしれない。
それと、せっかくだから、ユーチューバー活動を楽しませてあげよう。ジェミも協力してくれ」
「……はあい」
やる気なさそうに呟くジェミ。部屋を出る。
④廊下→リビング(台所)
廊下を歩くジェミ。きいろとキャンの笑い声が響いている。
ジェミ、階段を下り、リビングから台所へ。夕飯の支度を始める。小さくひとり言。
「給料がいいから飛びついたけど、病んだ子を介護する家で家政婦するのは、楽じゃないわね。こうなる前は、きいろも気のいい女の子だったけど」
回想。セピア色のリビング。セーラー服姿のきいろが、ジェミと一緒に画用紙に描かれた絵を見ている。
「あ、私が子どものころに描いた絵だ!」と笑うきいろ。
「……上手ですね」と、お世辞を言うジェミ。
「絶対、思ってないでしょ!いいもん下手だもん。今は少しマシだし」
回想あける。
「もう、はっきり事実を突きつけた方が、いいんじゃないかしら」
包丁を手にするジェミ。目が据わっている。
ドアが開く。スマホを構えたきいろが入ってくる。
「あ!ジェミさん、夕飯は何ですか?」
ジェミ、質問には答えない。
「ねえ。きいろちゃんは、ユーチューバーなのよね。あなたのチャンネルのURLを教えてよ」
まるで様子の違うジェミにとまどうきいろ。
「え? えっと……」
「チャンネルの名前は?登録者数は何人?これまでに何本の動画を投稿したの?」
聞かれれば聞かれるほど、途方に暮れるきいろ。
「ねえ。そろそろ思い出してもいいんじゃない?ユーチューバーはあなたじゃなくて、あなたの両親でしょ」
目を見開くきいろのアップ。
信号機が青→黄色→赤、に変わっていく映像がオーバーラップする。
【End。第三話『わたしのうち?』につづく】
お読みいただき、ありがとうございます。皆さまからのご支援は、新たな「好き」探しに役立て、各地のアーティストさんへ還元してまいります!