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【RS12】感動を与える歌い手・Aki

都内を中心に活動するギター弾き語りシンガーソングライター、Aki(アキ)。サッカー少年だった彼が、8か月間の世界放浪の旅を経て音楽活動を開始した経緯と、未来に思い描く夢を聞いた。

サッカー少年と音楽の出会い

東京都町田市出身のAkiは、5歳のころからサッカーを習っていた。

「幼稚園から高校までは、ひたすらサッカーをしていました」。

一方で、『ブラック・ジャック』や『NARUTO -ナルト-』『ドラゴンボール』など、アニメを見ることも好きだった。

「特に、アニメの主題歌が好きで、よく口ずさんでいました。オープニングとエンディングって、カッコいい映像と音楽が組み合わさって、そのアニメの良さが全部詰まっていますよね」。

他にも、兄が買ってきたCDを一緒に聴くなどして、音楽に親しんでいた。

しかし、人前で歌うことには抵抗があった。

「恥ずかしいという気持ちが強かったんですよね」。

そんな日々のなか、中学1年生のころに通っていたサッカークラブで、大きく心を揺さぶられる音楽と出会う。

「試合後のミーティングで、サッカーのドキュメンタリーDVDを観たとき、エリック・クラプトンの『Change the world』が流れたんです。僕は、その曲がとても気に入りました。ぱっと聴いて好きになった、という意味で、最も鮮烈な体験でした」。

学校から帰ると、毎日のようにYouTubeでエリック・クラプトンのライブ映像を探し、聞き漁るようになった。

「ある日、YouTubeのおすすめ動画を見ていくうちに、クラプトンと間違って、オアシスの『Don't Look Back in Anger』を聴いてしまいました。『なんだこれは、めっちゃカッコいい!』って、ハマりましたね」。

オアシスに熱中していくうち、友人の勧めもあって、ギターを触るようになった。「もっとも、当時はサッカーで忙しくて、あまり時間を割くことがでませんでした。簡単なコードも弾けずにいました」。

まもなく高校へ入学し、部活選びで頭を悩ませた。

「そのころにはBase Ball Bearってバンドも好きになっていて、『軽音部に入って音楽をやりたい』という思いがありました。でも、当時の自分のアイデンティティは、サッカーだったんです。周りには『Akiは当然サッカー部でしょ?』って空気があって、先輩が『高校でも一緒にやろう』と言ってくださったりして。自分も、サッカーは好きだし、子供のころからやっていたし。だから結局、サッカー部に入りました」。

サッカー部を選んだことに、後悔はない。ただ、周りの目を気にして、純粋な選択をできなかったことは心残りだった。

「決断する前から、そこに道があって、先も見えていたんです。だからサッカー部に入る方が楽だった、というのは、間違いなくありました」。

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サッカー部での活動を中心に、楽しい3年間を過ごしたのちは、都内の大学へ進学した。

「大学1年生のとき『今度こそ、ちゃんと音楽をやろう』と思って、ギターを始めました。本当は、歌いたい気持ちもあったんですけど、自分の声や歌に自信がなかったので、ギタリストを目指しました」。

地元の音楽教室で、ギターの弾き方や音楽理論などを教わり、家で練習を積んだ。「自分が音楽をやっていることは、ほとんど誰にも言いませんでした。大学3年生まで、ずっと一人で、粛々と弾いていました」。

だが、4年生になり、卒業後の進路を選択する時期が近付いた。

「就職活動をするか、音楽をやっていくか、迷いました」。

それは高校でサッカー部に入るか、軽音部に入るか悩んだときと似ていた。

「今回は、周りに左右されずに、ちゃんと自分の心だけで決めたいと思いました」。

同じころ、音楽教室の講師の手伝いで訪れたライブハウスで、とある人物から「一緒にバンドをやらないか」と声をかけられた。

「とても魅力的な誘いでしたが、すぐに返事ができませんでした。授業以外は家に引きこもって、ギターばっかり弾いていたので、今しかできないことがしたいという思いもありました」。

Akiは、自分の心の在り様を探すべく、世界を巡る旅に出た。

世界放浪を経て、本格的に音楽の道へ

「4年生の6月に出発して、2月に帰ってきました。コロナの前に旅ができたのは、本当に幸運でした」。

成田空港からタイへ向かい、マレーシア、ウズベキスタン、キルギスタン、タジキスタンを通って、アゼルバイジャン、イラン、アルメニア、ジョージア、トルコからギリシャへ渡った。地中海沿岸諸国や東欧、中欧を訪れたあとは、オーストリアからエジプトへ飛んだ。さらに陸路でイスラエルからパレスチナ自治区、ヨルダン、サウジアラビア、インド、ミャンマーを経由してタイへ戻り、帰国した。

「アジアからヨーロッパへ、飛行機はもちろん船、電車、バスなど陸海空すべての交通機関を使いました。歩いて越えた国境もあります」。

有名な場所ばかりではなく、観光客は行かないような土地にも足を運んだ。

「トルコでは、黒海沿いの港町に住んでいるご家族と仲良くなって、2週間くらい彼らの家に滞在しました。小さい街の、ごく普通のアパートで、伝統料理を教えてもらったり、バイクで近くを案内してもらったり、貴重な体験ができました」。

これまで見たことのないものを見て、知らなかった世界を知るなかで、Akiの心は固まっていった。

「やっぱり、音楽をやろう。好きなことをやろうと決めました」。

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帰国後は、周囲の理解や協力を得て、音楽活動の準備を整えた。出立前に「バンドをやろう」と声をかけてくれていた人物に連絡を取り、2020年6月から、バンド活動を開始した。

「僕はリードギターの担当で、少しだけ歌う曲が、1つありました。あとはメインボーカルとギターボーカル、ドラムっていう編成でした。
みんなでアイディアを出しあって曲を書いたり、楽しかったですね」。

だが、21年6月、バンドは活動休止になってしまった。

「それでも音楽を続けたかったので、どうするべきかを考えました」。

転機となったのは、松田聖子など多数のアーティストのライブや作品制作に参加しているパーカッショニスト・小林弌氏との出会いだった。

「たまたまバイト先で知り合って、連絡をとらせていただくなかで、自分の歌をきいてもらう機会があったんです。そしたら『歌った方がいいよ』と言ってくださって。いわゆる音楽の第一線で活躍して、色々見てこられた方に、そう言っていただけたことは本当に嬉しかったです。一つ自信がついて、『歌ってみようかな』と思えました」。

誰かの心を動かすアーティストになりたい

ギター弾き語りシンガーソングライターとして活動していくことを決めたAkiは、21年10月ごろから曲作りを始め、月末にはオープンマイクなどで歌うようになった。「とりあえず人前で歌ってみよう。どんな反応があるんだろう?というところから始めました」。

これまでに作ったオリジナル曲は8曲ほどだ。「ギターを弾きながら、ぽんと出てきた3秒くらいのメロディーを膨らませて、歌詞をつけています」。

代表曲を訊ねると、「まだタイトルをつけていないのですが、世の中の曖昧さについて歌った曲を、褒めてもらえることが多いです」。

たとえば「健康になろう」と考え、専門家が薦める食事をしていても、数年後に「実はあの食事は健康に悪かった」と判明することがある。恋愛も同じだ。「きっと上手くいかないな」と思っていた相手と思いが通じ合うこともあれば、「いい雰囲気だ」と思っていた相手に振られることもある。

「人生には、完全な答えが分からないまま、アクションを起こさないといけないことがすごく多いな、と思ったんです。とりあえず手探りで進んでいって、なんとか生きていく感じを曲にしました」。

練り上げた歌詞だけでなく、独特なコード進行と、サビの歌いだしのメロディが耳に残る一曲だ。

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他に、世界放浪中の思い出から生まれた曲もある。

「旅を始めて少し経った7月ごろ、ウズベキスタンで、ルーマニア人の女性と知り合いました。彼女も旅をしている途中で、僕がこれから西へ向かうと伝えたら、『ルーマニアへ来るときは連絡して』と言ってもらいました」。

4か月後、ルーマニアへ到着したAkiは、彼女の住む街を訪れた。

「10日ぐらい、彼女の家でお世話になりました。徐々に打ち解けて、彼女の仕事の悩みや、友達がみんな都会へ出てしまった寂しさ、難病を患っているお母さんを介護する苦しさなどを聞かせてもらうようになりました」。

日本語でも何を言えばいいかわからない状況で、片言の英語では十分に思いを伝えられるわけもなく、Akiは涙を流すことしかできなかった。

「彼女と過ごした時間から思ったこと、考えたことを歌にしまた。タイトルは、彼女が住んでいた町の名前をとって『レシツァ』にしています」。

『レシツァ』だけでなく、旅の間に見た景色や考えたことなどを、曲にしていきたいと語る。

「まだ自分の中で咀嚼できていないものがたくさんあります。軽々しく曲にしたくないので、いつか納得のいく形になったら、世に出したいです」。

今後の目標を聞いてみた。

「オリジナル曲が増えてきたので、そろそろライブハウスへ出演してみたいし、音源も作りたいです。5年後、10年後には、日比谷の野外音楽堂でワンマンライブをできるアーティストになっていたいですね」。

日比谷公園大音楽堂には、強い思い入れがある。

「僕のリスペクトするアーティストが、毎年野音でライブしているんです。毎回のように足を運んで、たくさん感動させてもらってきました。次は自分が、そのステージに立って、観客を沸かせる側になりたいです」。

ギター弾き語りというスタイルには、こだわっていない。

「やっぱり、自分の音楽表現を突き詰めていくと、バンドサウンドになると思います。ギター一本で曲を作っているときも、他の楽器のことを考えています。いつかはフルバンドで演奏したいですね」。

何故、Akiは、音楽をするのだろうか。

「もちろん『音楽が好きだから』というのは大きいです。自分の憧れている人が音楽をやっているから、そこへ近づきたいという思いもあります。でも、それらは自分の理由です。ライブのチケットや音源を売って、お客さんからお金をいただく『理由』は、すごく考えました」。

辿り着いた答えは、自分自身の原体験にあった。

「中1のころ、エリック・クラプトンの『Change the world』を聞いて、うずうずしたんです。『この3分間があれば、あとは何でもいいや』とさえ思えました。その曲に救われたと言えるくらい、心が動いたんです」。

自分が音楽に支えられてきたように、自分の音楽が、誰かの支えになれたらいいと考える。

「『来月のAkiのライブのチケットを買えたから、それまで仕事頑張ろう!』とか、思ってもらえたら嬉しいですね」。

シンガーソングライターとして歩き出したばかりの彼が、これからどんな道を見つけ、どのように進み、どこへ辿り着くのか、期待したい。

text:Momiji photo:Onoda Yuriko Costume:amovia.homme

INFORMATION

2022.02.07(Mon) open 18:30 start 19:00
“生活の交差”

[会場]下北沢mona records (東京都世田谷区北沢2-13-5 3F)
[料金]前売・当日 ¥1,000(+1drink) / 配信 ¥1,000
[出演]コイケリョウ(teiichi) / マコトコンドウ / Aki / 鈴木飛翔 / ツルダノウタ

2022.03.01(Tue) “湯島温暖化計画
[会場]御茶ノ水KAKADO(東京都文京区湯島1-7-16)
Comming soon...

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