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【R04:MUSIC】透明感のある歌声で、幻想的かつ情緒的な歌を紡ぐ

日台ハーフのシンガーソングライター・洸美(ひろみ)。『夜来香』をはじめとした代表曲や、9月にリリースした新アルバム『海に星空』、ワンマンライブへの意気込みなどを訊いた。

日台の文化的素養を生かした幻想的な楽曲群

洸美のライブでのレパートリーは80曲程度。「昔は歌詞を書いてからメロディを作っていましたが、今は同時に作ったり、メロディが先だったり、バラバラですね」。

アレンジやライブでの伴奏を担当しているのは田中どぼん俊光氏だ。洸美の音楽学校時代の恩師でもある彼は、プロデューサーという形で全ての楽曲とアルバム制作に携わっている。

バラードの代表曲は『夜来香(イェライシャン)』。表題は、中国原産のツル科の低木の名前を意味している。8月から10月にかけて、黄緑色をした星形の花を咲かせ、夜が来るとジャスミンのような香りを漂わせるという。

夜来香の花と『あなた』と『十六夜の月』の三角関係を描いた歌詞は、美しいメロディと相まって切なく響く。「私は自然を描写するのが大好きなんです。擬人化した物語を描いたりもします。幻想的な歌詞が多いかもしれません」。

『夜来香』は活動初期から歌っている楽曲の一つ。1st Albumに収録していたが完売し、再販を希望する多くの声を受け、18年5月発売の4th Album『五月雪』に再録した。

『五月雪』は、台湾で本格的に活動するにあたって制作された作品だ。表題曲の日本語バージョンと中国語バージョンだけでなく、洸美が初めて中国語で書下ろした『有你真好(ヨーニーツェハォ)』などが収録されている。

「『有你真好』は、とても簡単な中国語を使って作りました。これから中国語を学ぶ方に教材としておススメしたいくらいです」と、洸美は茶目っ気を見せて語る。

この楽曲は、とある台湾のクリエイターが気に入ってくれたことがきっかけで『「小民眾」藝術家聯展』というイベントのテーマソングにもなった。彼は19年に洸美が主催した台湾フェスのポスターの絵も手がけている。

「ありがたいことに、『19年もイベントのテーマソングとして使いたい』と言っていただいて。2年連続でまったく同じ曲を提供するのは私のプライドが許さなかったので、アレンジを変えて歌い直しました。新しいバージョンが『好世界版』です」。

東京から台湾まで約4時間。行ったことがある方もそうでない方も、洸美の楽曲を聴き、隣国の空気を感じてみてはいかがだろうか。

5th Mini Album『海に星空』とワンマンライブ

19年9月にリリースされた新作『海に星空』には、9月13~16日に東京タワーで開催された『台湾祭』の公式テーマソング『麗しのアイランド』が収録されている。

「6月に楽曲制作の依頼を受けて、『せっかくならCDにして持って行きたい!』と思って作りました」。

上記以外にもアップテンポの代表曲『一杯茶(イーペイツァー)』のMVバージョンや『有你真好』の好世界版など、ライブで好評を博した楽曲が収録されている。

洸美にとって特に思い入れのある楽曲が『ウミネコ』だ。

17年6月、チャリティコンサートで宮城県の南三陸町を訪れた洸美は『南三陸ホテル観洋』に宿泊。ホテルには露天風呂があり、太平洋を一望できた。かつて津波が襲い、猛威をふるった場所にもかかわらず、その夜の海はひたすら美しかった。

空には満月。洋上にはウミネコという鳥が飛び交い、白い身体に月光を受けて輝いていた。「海が星空のようだと思いました」。気づけば、楽曲のサビとなる部分を歌っていた。

19年6月、台湾系イベントで南三陸と仙台を再訪。はじめて現地の人に楽曲を聴いてもらうと、大きな反響があった。「聴きながら泣いてくれる人がいて、自分も涙が溢れそうで、堪えるのに必死でした」。

CDが欲しいという声が多くあったが、応えられずに心苦しい思いをした。「今度はCDを作ってきます、と約束しました」。東北地方でのライブ予定はまだないが、近いうちに必ず訪れたいと洸美は語った。

可愛らしい紙ジャケットのCDは、『五月雪』と同じく、装丁から包装まで全て洸美の手作りである。デザイン性の高さだけでも、手に入れて保存したい一作だ。

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一方、10月24日には、中目黒FJ'sでのワンマンライブが控えている。「年4回、季節ごとにワンマンをやっています。トークも音楽も深く練っていますし、ライブハウスならではの演出に注目してください」。

これまでは月2-4回ほどライブハウスで歌っていたが、19年は野外フェスやイベントへの出演が多く、ライブハウスでの演奏機会が減っている。

「嬉しい悲鳴ですね。外には外の良さがあるんですけど、やっぱりライブハウスは音も照明も環境もいいので、こちらも大事にしていきたいです」。

きりっとした洸美のステージが楽しめるという10月のワンマンライブ、ぜひ足を運びたい。

text:momiji

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