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【S04:MUSIC】当たり前の日常に新風を吹き込む、 素朴で洗練されたポップス

ギターの野村尚宏(のむら・たかひろ)とベースの南川千尋(みなみかわ・ちひろ)による男女弾き語りユニット、Shiny's(シャイニーズ)。ギター&ベースというジャジーな編成が奏でる楽曲群の内実とは。

Shiny'sの音楽性と、南川千尋の進化

Shiny'sを結成する数年前から役作りの一環でギターの弾き方を習得し、オリジナル曲も作っていた野村。一方の南川は、音楽について全くの素人だった。たまにカラオケへ行って歌うことを楽しむ程度だった彼女の成長物語は、Shiny'sの進化の歴史でもある。

本格的に音楽活動を始めた09年、野村に「お前もベースかカホンを持て」と言われ、南川はベースを購入した。楽器が嫌いだった彼女には『やらされている』という感覚しかなかった。

弾き方は下手で、工夫があるわけでもなく、観客や音楽仲間から「南川がベースを持っている意味はあるのか?」と苦言を呈されるほどだった。

大きく意識が変わったのは、音楽仲間とツーマンライブをした時だ。シャッフルユニットを経験し、自分の弾けなさに呆然。悔しさを練習にぶつけた。ベースの腕前を上達させていくと同時に、作曲にも挑戦して『ナイーヴガール』などの楽曲を生み出した。

「色んな人と出逢って、構ってもらって、今日まで来ました。音楽については赤ちゃんみたいなものだったけど、小学生くらいには成長できたと思っています」。

現在の彼女は、野村が作った楽曲を受け取り、アレンジを考える時間が最も楽しいという。「野村の方が『表現したいもの』を強く持っているんです。だから作詞作曲は彼に任せて、私はそれをどう演奏するか、どう魅せるかという部分に工夫を凝らしています」。

実力をつけたことで、自分のやれること、やりたいことがはっきりしたのだ。南川のベースとアレンジ力は、芯の強い歌声とあわせて、Shiny'sの楽曲における強力な武器となっている。

ありふれた景色に新たな感動を

「僕は、自分が生きるために『表現』をしているんだと思います」と野村は語る。

「学生時代に人を傷つけて、自分も傷ついて、今も『感情が溢れ出る』ことがよくあります。ただ、ぐちゃぐちゃした感情をそのまま吐き出したところで、何の生産性もないですよね。人に見せられるものに昇華したい。訴えたい言葉をまとめていたら、メロディがついていく感じです」。

彼の楽曲づくりは文学的であり、哲学的とさえいえる。

Shiny'sの代表曲の一つ、『ぼくはえんぴつ』。ダイヤモンドやシャープペンシルと自身を比べ、「何故ぼくはえんぴつなのか」と嘆く鉛筆の気持ちを描いた楽曲だ。

「同じ炭素からできているのに、ダイヤモンドにはなれない鉛筆。そこに気づいた感動を、他の人にも伝えたかったんです」。

アレンジを担当した南川も、野村と同じ思いだ。

「まだShiny'sを知らない人と出逢って、自分たちの曲を聴いてもらって、新しい発見や気づきを提供できたらいいなと思っています。好かれたり嫌われたり、何らかの形で『響く』ことが一番嬉しいです」。

現在は月1回程度でライブ活動をしているShiny's。6/29に控えるライブでは、新曲を披露する予定だ。

南川は「野村から上がってきた原曲がなかなか良いので、私も気合を入れてアレンジしたいです」。野村も「所属レーベル主催だし、大舞台だし、存在感を出していきたいですね」と意気込む。

彼らが次はどんな感動を届けてくれるのか、楽しみである。

text:Momiji photos:by Lin-ya Kanzaki casting&PR:Smitch

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