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【R02:MUSIC】懐かしくも新しいサウンド・ネオ90's POPユニットの目指す先

vo.梨奈(りな)とgt.渋木新(しぶき・あらた)が2016年に結成したポップスユニット、garden#00(ガーデンシャープ・ゼロゼロ)。90年代を彷彿とさせる音作りが特徴的な彼らの活動状況に迫った。

カバー動画の投稿という挑戦

garden#00は、YouTubeに開設した公式チャンネルにて、幾つかのオリジナル動画を公開している。

たとえば1st Mini Album CD『君が泳ぐ夏色』にも収録されている『YOU&I』は、夏にぴったりの楽曲だ。海辺で収録されたMVは実に爽快で、キャッチ―なメロディに、梨奈の軽やかで可愛らしい歌声が映える。

何気ない朝の風景と大切な人への「ありがとう」が散りばめられた歌詞は、繰り返し口ずさみたくなる内容だ。

また18年頃からは、カバー動画の投稿も行っている。対象はTM NETWORKの『Get Wild』、欅坂46の『サイレントマジョリティー』、Do As Infinityの『深い森』など、最近の流行曲から懐かしの名曲まで幅広い。

「外へ発信するという意味で、大きな挑戦ですね」とは新。楽曲のアレンジや演奏はもちろん、映像にもこだわって制作している。特に『Get Wild』の反響は大きく、再生回数は44万回を突破し、2600以上のいいねを獲得した(※編集部注:19年7月現在)。

もちろんカバーだけを極めるつもりはない。「やっぱりオリジナルで勝負していかないと、虚無が待っていると思うので」。ただ自分たちを知ってもらうきっかけを増やす意味でも、音楽的な研鑽を積むという意味でも、もうしばらくこの挑戦を続けたいという。

「最近、広島県在住の方からメッセージをもらったんですよ。カバー動画でgarden#00を知って、オリジナル曲の動画も見たら気に入りました、と。『ぜひ広島に遊びにきてください』と言ってもらいました」。

梨奈は笑顔を浮かべた。「そういう『自分たちの想像を超えること』が起きると嬉しいですね」。

強みを生かした作品づくり

出逢った当初は新が作曲、梨奈が作詞と分業して楽曲を制作していたが、最近は特にこだわっていない。役割を逆転させた楽曲もあるという。「互いがやりやすいように進化していっています」。

サウンド作りも変わってきている。「梨奈のソロ時代は、歌の周りを固めるように音を考えていました。楽器も、鍵盤を中心に構成していましたね」と語る新。「ユニットを組んだのは、もっとロックな曲をやりたかったのもあって。最近は『自分がどう弾きたいか』という部分も大切にして、ギターを前に出した楽曲を増やしています」。

CDジャケットなどのアートワークは梨奈が制作しており、LIVE時のパフォーマンス等には長年鍛えたダンスの腕前も生かされている。「二人とも、よく言えば器用で色々できて、悪く言えば器用貧乏なんですよ」と彼女は謙遜するが、互いの強みを生かして活動していると言えるだろう。

代表曲は?と訊ねると、「お客さんからの反響を考えると『Love your life』ですね」との答えが返ってきた。

梨奈いわく「私のソロ時代からずっと歌っていて、楽しい時も悲しい時も聞いてもらえる楽曲です」。だが制作時には、こんなに長く歌い続けることになるとも、自分たちの代表曲になるとも考えていなかったという。

数年前、初めてお客さんから「この曲を聴いて泣きました」と感想を貰った時、彼女の心に変化があった。「そんな感想を貰ったのが初めてだったんです。自分の音楽で泣いてくれる人がいるのかって」。自信がついたのはもちろん、楽曲への愛着が湧いたという。

新も「『Love your life』は自分たちが音楽を通じてやりたいこと、伝えたいメッセージが詰まった楽曲です」と言う。「人って、同じ立ち位置になったことがないと、本当の意味で共感できないんですよね。僕はかつて弱ったことがあって、音楽に救われたから、誰かを救えるような音楽をやっていきたいと思っています」。

「みんなの助けになるには、助ける側つまり発信者側の自分は『強い存在』として輝いていなければいけないと思っていました。でも最近は、違うな、と感じます」とは梨奈。「みんなを勇気づけられるのは、みんなと同じ立場の人。ヒーローじゃなくて、仲間でありたいです」。

アーティスト側からの発信だけでなく、ファンとの交流の中で進化していく。それはまさしく『ポピュラーミュージック』に違いない。『ネオ90's POPユニット』を標榜する彼らが描く新時代に期待したいところだ。

text:Momiji photos:Miks

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