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【R01:STORY】愛と夢を歌うマルチリンガルシンガー・鹿野レイ

『夢を持ち続けて』『愛を抱きしめて』をテーマに活動しているシンガー、鹿野レイ(かの・れい)。彼女の生き方と、プロを目指して歌い続ける理由に迫った。

共通言語としての音楽と、日本武道館に魅せられて

英語・ドイツ語・韓国語を操り、マルチリンガル・シンガーとして活躍する鹿野レイ。そのルーツは、親の仕事の都合で転居を繰り返した幼少期にあるという。

「地元は東京ですが、2~3年ごとに海外へ引っ越す生活をしていました。仲の良い友達に会いたくても会えないし、時差があるので電話すらできない。手紙やメールはなかなか返事が来ません。寂しかったですね」。

新しい友達を作ろうと思っても、当時通っていたインターナショナルスクールでは言葉の壁があった。「私は行きたくないのに、なぜ行かなきゃいけないの」と、親に反抗した時期もあるという。

そんな寂しさを癒してくれたのが、音楽だった。異国の地で日本の歌を聴いていると「私も頑張ろう」と前向きになれた。

また、外国の人々とどのようにコミュニケーションをとるべきか模索していた頃、音楽が共通言語となることに気づいた。

「日本にはどんな歌手がいるの?とか、どういう音楽が流行っているの?といった話題に、すごく興味を持ってくれて。自分の好きな曲を紹介して、カッコいい曲だね』と感想をもらったりもしました」。

鹿野自身も、積極的に他国の音楽へ触れていった。マレーシア、ドイツ、韓国と生活の場を移しながら、聖歌隊やアカペラバンドに所属し、各地の人々と親交を深めた。

そうした日々のなかで、鹿野の中にある想いが芽生える。

「もし私が歌手としてステージに立つ存在になれたら、音楽を介して、みんなに私のことを覚えていてもらえるのかなぁ」。

プロを目指す決定的なきっかけとなったのは、生活の拠点が東京に戻って落ち着いた頃、w-inds.のライブを見るために日本武道館を訪れたことだ。

「それまで、大きなイベント会場というと東京国際フォーラムしか行ったことがありませんでした。しかも、その時は一階後方の席だったので、ライブの臨場感をまったく味わえなかったんです。
アーティストの姿は見えず、音もよく分からず、残念でした」。

鹿野は熱っぽく語った。

「日本武道館は全然違いました。すごく広いけど、一階からも三階からもステージが近くに感じられて、どの席でもアーティストの雰囲気と音楽を味わえる会場だなぁって。

アーティストにとっても、この会場で演奏出来たら、この観客席を全部埋められたら、さぞ気持ちいいだろうなと思いました」。

由緒正しき音楽の聖地に心を揺さぶられた。

「私も日本武道館で歌いたい」。

明確な目標を得た鹿野は、SNSを活用し、音楽活動を本格化させていった。

『鹿野レイ』確立までの研鑽の日々

活動を始めたばかりの頃は『Ray(レイ)』と名乗り、ボイストレーニングに通いながら、2~3ヶ月に1回のライブを行っていた。

「集客に自信が無かったので、本数を絞っていました。でも、それでいいのかなと思って」。

どうすればお客さんを呼べるようになるのだろう。試みの一つとして毎日ブログを書いてみたが、精神的負担が大きい割に、新規の客は増えなかった

悩んでいた頃、偶然、川崎銀座街バスカーライブの存在を知った。『バスカー』は路上演奏者のこと。川崎駅東口の商店街のアーケード内で演奏ができるという、商店街主体のイベントだ。

銀座街の出演者を見ていくと、毎週のようにライブハウスやイベントへ出演しているアーティストばかり。

「この人たちはどうやって集客しているんだろう?」。

答えは分からなかったが、その域に到達しなければならないと思った。

「届ける場所と相手がいなければ、音楽をやる意味はないですから」。

鹿野は楽曲の作り方や歌い方、魅せ方など研究を重ね、アーティスト名さえも変えていく。

まず14年8月、1stアルバム『Daydreamer』発売を期に、表記を片仮名の『レイ』へ変更。「アルファベットの名前は読みづらい」と言われたことが理由だった。

しかし、レイという名前の人物やキャラクターは非常に多い。インターネット検索で埋もれてしまうという悩みが新たに生まれた。

個性を出すためには苗字をもつべきだと考え、16年の元旦に『鹿野レイ』へ改名。『鹿野』にした理由は、「鹿が好きだから」。自ら『カノシカ』というマスコットキャラクターをデザインしたほどだ。

改名の効果は絶大だった。「インターネット検索を通じて来てくれる新規のお客さんが増えました。たとえば、元々は対バン相手目当てだったお客さんが『当日は間に合わなくて聞けなかったけど、家に帰って調べたら、次のライブ予定が分かったから』と言って観に来てくれたり」。

アーティスト性も着実に磨いた。17年1月に2ndアルバム『愛のかたち』をリリース。渋谷gee-geで開催したリリースパーティは満員御礼となった。2月にはインドネシア・スラバヤ島にて開催された『ジャパンなう―カルナファル・ブダヤ・スラバヤ―(スラバヤ文化カーニバル)』へも出演した。

すると17年夏、新たなチャンスが転がり込む。音楽仲間の紹介で、憧れていた川崎銀座街バスカーライブへレギュラー参加できるようになったのだ。

これが大きな転機になった、と鹿野は言う。

「銀座街のお客さんは、優しいけどシビアなんです。良い演奏をしているアーティストがいたら集まって来るし、興味がなくなると離れていく。だからこそ、自分のパフォーマンスがお客さんの心を掴めているかどうかが明確に分かって、試行錯誤できるんです」。

ライブハウスでのイベントは良くも悪くも閉鎖的で、顔見知りや音楽好きの集う場所となりやすい。路上という開けた場所で歌い、様々な人の反応を得られる機会は貴重である。

銀座街に出演する前、鹿野のTwitterのフォロワー数は300~400人で推移していたが、現在は1000人を超えている(※19年6月現在)。2年で倍増以上となったのは、銀座街を通じて新規のファンを獲得できたことが大きい。

「自分の音楽を聴いてくれる人がいる。届けることができている」。その実感は鹿野に自信を与えた。パフォーマンスが上達しただけではなく、苦手だったMCやブログの更新にも前向きに取り組めるようになった。

「『アーティストだから、こうでければいけない』って自分を縛りすぎていたんですよね。お客さんに「可愛いね」と言われたら、服も喋り方もブログの書き方も可愛くしないといけないと思っていた。自分を作りすぎていたから、MCやブログが辛かったんです」。

アーティストとしての在り方に自信を持てないまま、虚像ばかり作り込んだところで、お客さんに伝わるわけもない。

そう気づくことができたのも、銀座街に育ててもらったおかげだという。

たった一度の人生だから、夢に対して真摯でありたい

プロのシンガーを目指している鹿野だが、音楽以外の生活でも幼い頃からの希望を叶えている。

「海外の人に日本のことを知ってもらいたいという気持ちがあったから、インバウンドに関われる旅行業界で働いています」。

忙しさはあるが、歩みを止めるつもりはない。

「これをしなきゃいけないから、あれはやめよう。時間がないから諦めよう。そういう風に、状況を言い訳にしたくありません。人生は一度きりですから。やりたいことをやらなきゃね」。

今後について、どのような青写真を描いているのだろうか。

「もうすぐTwitterのフォロワー数が1000人を超えます(※編集部注:取材後の19年6月16日に達成)が、2000人以上に増やしたいです。その過程でアーティストとしてもっと成長して、ホールワンマンライブをやりたいです」。

場所は?と問うと「小さい頃から渋谷によく来ていたから……マウントレーニアホールでやれたら嬉しいなぁ」。渋谷109に隣接する多目的ホールの名を挙げ、微笑む鹿野。

「3年、いや2年後の誕生日までに実現します!自分に課題を課そう」と意気込み、「ホールを埋められないと、武道館にもたどり着けないですしね」。

音楽活動を成功させていくには運も必要だ。その点、望んでいた銀座街への出演など、鹿野には「やりたいことを引き寄せる」才能があるように思う。

筆者がそう告げると「言葉にしているからだと思います。いつか武道館で歌いたいっていうのも、言葉にしていれば叶うかもしれない。いえ、叶えたいと思っています」。

活動を始めてから約10年。「もう辞めようかな」と思ったことも一度や二度ではないという。それでも続けてこれた理由の一つがファンの存在だった。

「数は少ないけど、初期からずっと応援してくれている人がいたから、救われました。シンガーだって一人では生きていけません」と鹿野は語る。

「私は子どもの頃、孤独を感じることが多くて、音楽を聴いて元気をもらっていました。泣くのは一人でもできるけど、一人で笑っていたらただの変な人。相手がいないと笑えません。

今、私のライブを聴きに来てくれているファンの方の中にも、寂しい思いを抱えている人が多いと感じます。みんなに寄り添って、元気を分け与えられるアーティストになりたいです」。

鹿野が活動開始当初の10年7月に開設し、現在も更新を続けているアメーバブログ。その最初の記事にも「人生。精一杯楽しんだものがちでしょ」という一文がある。

夢を叶えるために変化し続けながら、根源にある想いは何も変わっていない。一途な鹿野の夢の続きを見守りたいと思った。

text:Momiji photos:by Kei Ishikawa

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