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【R10:STORY】天衣無縫のお笑いコンビ・DanDanDan

ボケのゴエモンとツッコミのヒロキチによるお笑いコンビ・DanDanDan(だんだんだん)。ワタナベコメディスクールの同期生だったふたりは、卒業式での会話をきっかけにコンビを結成。主催ライブなどを通じて芸を磨き、M-1グランプリ等のコンテストにも参加している。「いつか冠番組を持ちたい」と語るふたりの過去と、将来の夢に迫った。

お笑い養成所の卒業式をきっかけに、コンビを結成

福島県出身のゴエモンは、幼少期からお笑いが好きだった。小学生のころには、公衆電話から芸能事務所へ電話をかけ、芸人になる方法を問い合わせたこともある。

「ボキャブラ天国などのテレビ番組や、流行りのお笑い芸人を特集した雑誌でした。巻末に電話番号が載ってたんですよ。吉本興業とホリプロと太田プロだったかな。『お笑い芸人になるにはどうしたらいいですか?』って訊きました」。

ゴエモンは目を細めて当時を振り返る。

「『履歴書を送ってください』と言われたんで、『なるほど。大人になったら送ろう』と思った記憶があります」。

だが、実際に履歴書を送付することはなかった。高校を卒業したのち、地元で就職。一般企業で働きはじめた。

とはいえ、幼き日の思いは心の底に燻り続けていた。25歳になるころ、一念発起して上京。「やるならいまかな、と思いまして」。お笑い芸人になる夢を叶えるべく、ワタナベコメディスクールへ通いはじめた。

一方、兵庫県出身のヒロキチもまた、人前に出ることや目立つことが大好きな子どもだった。友達も多く、賑やかな学生時代を過ごしたという。

高校卒業後は役者を志し、関西のテレビや雑誌に出ていたが、ローカルでやっていくことの限界を感じて2009年に上京。しかし東京でも思うような活動はできず、演劇の道を諦めた。

かといって、何もせずに地元へ帰る訳にはいかない。「どうしようかなと考えていたとき、ワタナベコメディスクールの広告を見かけて『お笑いもええかもしれない』と思ったんです」と、彼は懐かしそうに言う。

それにしても、『演劇』と『お笑い』では、がらりとフィールドが変わる。観客に物語を伝え、喜怒哀楽の様々な感情を呼び起こさせる演劇と違い、『笑い』のみで勝負することの厳しさは想像に難くない。

編者が問うとヒロキチは頷き、「人を笑わせるって難しいですよ。仕事として。役者もコメディをやることはありますが、割合として少ないですから」。

ゴエモンも同意する。「ナメてましたね。『俺にもできるやろ』って。養成所に入って、活動を始めてみたら、大変でした。同じように感じた人が多かったのか、卒業するまでの間に、相当な人数が辞めていきました」。

お笑い養成所では、どのようなレッスンが行われたのだろうか。

「ネタ見せが中心ですね。講師の前でネタをやって、ダメ出しされて。『来週までに直してこい』とか『全然ダメだ。新しいネタを考えて来い』とか。毎週それが繰り返されるんで、しんどいですよ」。

他にも滑舌や発声のトレーニング、演技やダンスの練習などがあった。「ダンスはふたりとも苦手でしたね」。

養成所に通った1年間、ピン芸人として過ごしていたゴエモンとヒロキチ。ふたりがコンビを結成したきっかけは、卒業式の日の会話だった。

「僕が知り合いと『ヒロキチって面白いよね』と話していたら、本人が通りかかったんです。それまで、同期として顔と名前は知ってましたけど、ゆっくり話したことはありませんでした」とゴエモンは懐古する。

「世間話のなかで、お互いに相方を探していることがわかって、『とりあえず飯行こうぜ』という流れになったんです」。

ヒロキチも「渋谷で一緒に飯を食って、話も合ったんで、『とりあえず組んでみようか』となりました。卒業したあと、ピン芸人として何をやっていけばいいのか、よく分からなかったんですよね。コンビなら『ライブに出てみよう』とか『あのオーディションに応募しよう』とか、なんとなく今後のビジョンが見える気がして」。

コンビ名は、ふたりが初めて作ったネタに由来する。

「コンビを組んで最初に作ったネタが、段々おもしろくなるって感じの内容だったんですよ、そしたら相方(ヒロキチ)が『コンビ名は「ダンダン」でええんちゃう?』と」。

さらに約一週間後、再びヒロキチが「島根の方言では、『だんだんだん』は『本当にありがとう!』を意味するらしい」という話を聞きつけてきた。

じゃあ表記も変えて『DanDanDan』にしよーってなりました。本当に存在する方言かどうか分からないんですけど、しっくりきたので!」。

こうして12年4月、お笑いコンビ『DanDanDan』が誕生した。

(編集部注:たしかに島根の方言で『だんだん』は『ありがとう』の意味だが、『だん』が『本当に』を意味するとの証左は見つからなかった)

夢は、冠番組を持つこと

ボケのゴエモンとツッコミのヒロキチという役割分担で、本人たちいわく『ベタな漫才』を行っているふたり。

憧れの芸人像を訊くと、顔を見合わせた。

ゴエモンは考えながら、

「売れてる芸人さん、テレビでネタやってる人はみんな凄いですよ。僕は王道の人、たとえばサンドウィッチマンが好きです。ヒロキチはブラックマヨネーズが好きだったり。でもお笑いは、個性で勝負していかなきゃいけないんで、特に誰かを追いかけてるってことはないです」。

活動の軸は、秋葉原にあるライブハウス・Live Garage秋田犬にて主催している、『侵略者』というお笑いライブだ。毎月第4金曜日の夜、12年10月から一度も欠かすことなく続けている。

「結成直後は、養成所時代の同期が主催するライブに出てたんですけど、『自分たちでやったほうが面白そうだな』と思って。当時の事務所のつながりで秋田犬を紹介してもらってから約8年。もうすぐ100回目が見えてきました」。

出演する芸人は養成所の同期や先輩後輩が多いが、外部のライブやオーディションで面白い人を見つけ、スカウトすることもある。

また、お笑い芸人だけではなく、ミュージシャンやダンサーなどに出演してもらうこともあるという。

「お笑いとは違うフィールドでも、同じライブハウスに出演する同士ですし、新しい縁が繋がればいいなと思って。お笑い好きな人が音楽に興味を持ったり、その逆のことが起きたりすれば、楽しいじゃないですか」。

19年10月には株式会社ユニバースへ所属。隔月で開催される事務所主催のライブに出演し、様々なネタを披露している。

「テレビでも有名なねづっちさんなど、実力のある先輩方がたくさん出演されてます。毎回勉強になります」。

イベントの司会の仕事を請け負うこともある。毎年7月に神奈川県川崎市で開催されている高津区民祭では、3年前から司会を担当。他にも、秋田犬を通じて知り合ったミュージシャンの主催イベントにて7年連続メインMCを務めたり、地域の婚活パーティを取り仕切ったりしている。

「お笑い=喋りが上手いってイメージを持たれることもありますけど、みんなができるわけじゃない。僕は仕切るのは得意だけど、盛り上げ系ではありませんし」とヒロキチは語る。「こればっかりは得手不得手なので、補い合っています」。

さらに、ラジオやテレビに出るためのオーディションやコンテストへ多数参加。12年から14年はTHE MANZAI、15年以降はM-1グランプリという、いわゆる『お笑い芸人の登竜門』と呼ばれるコンテストにも挑戦している。

これまでの活動のなかで一番印象に残っている出来事として、15年夏、はじめてM-1グランプリの1回戦を通過したときの思い出を聞かせてくれた。

「アンパンマンのパロディネタをやったら、手応えが凄かったです。観客の反応もだし、ステージ終わってすぐにテレビカメラが寄ってきて『どうでしたか?』とインタビューされて。楽しかったですね」。

もちろん、20年のM-1グランプリにも参加予定だ。

「予選が始まるのは8月からですが、ネタは今から考え始めてます。1回戦は2分しかないので、内容を詰め込みつつ、詰め込みすぎないように練習して、ブラッシュアップしていきます」。

とにかく「お笑いで食べていけるようになりたい」と言うふたり。

「今はYouTubeとか、AbemaTVのようなインターネットテレビ局とか、色んな媒体があります。どこで火が付くかは分からない。何でもいいので、頑張りたいですね」。

夢は、冠番組を持つことだ。

さらに具体的な目標として、それぞれの親族が住む地域での凱旋ライブを掲げた。「沖縄の海が見える場所、野外フェスのステージとかでやってみたい」とヒロキチが言えば、ゴエモンも「自分の地元はライブハウスすらないような田舎なんですが、最近、市民会館が新しくなったらしいんですよ。そこでやりたい」。

そのために、今後はインターネットを活用したいと意気込む。

「YouTubeへの動画投稿やTwitter、InstagramなどのSNS。おっさんなので難しいことは苦手ですが、やっていかなきゃいけないと思っています」。

「ネット進出はこれから」というふたりに興味を持った場合、まずは何をすればいいのだろうか。

ふたりは声を揃えて、

「ライブへ遊びに来てください。そこからファンになってもらって、『侵略者』の100回記念を見届けてもらえると嬉しいです」。

編者は小学校の修学旅行で大阪を訪れ、なんばグランド花月の公演を見たことがある。当時の私は『お笑い芸人=テレビのなかの存在』だと思っており、大して興味を持っていなかった。そんな私でも、公演中は笑いが止まらず、息が苦しくて涙ぐむほどだった。

芸人たちの漫才や新喜劇はもちろん、隣の友人の笑い声や遠くの誰かの無責任な野次を含めて、劇場の空気そのものが面白かった。

今は大御所と呼ばれるような芸人たちにも、街中の小さなハコでネタを披露した下積み時代があった。皆さんも秋田犬へ足を運び、ライブならではの空気感を楽しみつつ、次代のお笑いBIG3を探してみてはいかがだろうか。

Text:Momiji

INFORMATION

2020.04.10(Fri) open 18:15 / start 19:00
ユニバースライブ vol.75

[会場] ハイジア V-1(新宿区歌舞伎町2-44-11 B1)
[料金] 前売¥1,000 / 当日¥1,300
[出演] ねづっち / しゃばぞう / おとぎばなし / ロマン峠 / ウメ / オキシジェン / ミヤシタガク / ガンリキ / や団 / サイクロンZ / コンパス / なべりん / DanDanDan / 他多数
[プレイガイド] https://www.confetti-web.com/personal_info.php?member_id=47139&

2020.04.24(Fri) open 18:30 / start 19:00
DanDanDan企画《侵略者ライブ》 vol.89

[会場] Live Garage 秋田犬(千代田区岩本町3-7-11 神田KSビルB1F)
[料金] ¥1,000(+1drink)

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