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【S06:COLUMN】渋谷系探訪

後追いで渋谷系の音源を集めている。
DMC※で散々ネタにされたせいで痛いジャンルという決めつけがあったのだが、岡崎京子※※を読んでいたらオザケン※※※との親交が書かれていて興味を持った。彼女の描く冷めた終末感と軽薄なポップバンドの繋がりが不思議に思われた。
ということでフリッパーズギターから順に辿っている。
大人びたAORを奏でるオリジナルラブ、都会をクールに疾走するICE、音響的な実験を繰り返すコーネリアス。どれもバブルの徒花と言うには実があるプロフェッショナルの仕事で認識が改まる。

https://www.youtube.com/watch?v=JqYvyBx1VL4

https://www.youtube.com/watch?v=KjxmckVdSz4

そして小沢健二の到達点「LIFE」だ。

全9曲中7曲がシングルカットされたこのアルバムは、渋谷系というジャンルを超えた普遍的なポップスを鳴らしている。
豪華なアレンジに反して素朴なボーカル、歌詞は落ち着いてかつての能天気さは無い。
恋人は去っていくし「僕」はその幸せを祈るだけだ。そこにはペットサウンズ的な喪失感がある。
1994年という発表年もあってバブル崩壊後の先の無さを感じずにはいられない。そして喪失は岡崎京子が度々取り上げたテーマでもある。
世紀末の狂騒の中で本当は皆んな分かっていたのかもしれない。全てが喪われていくことを。

岡崎京子は「僕」たちが生きる日常を平坦な戦場と呼んだ。
彼女の才能が不慮の事故で遠くに行ったことを考えるとあまりにも示唆的で、それ以上余計な解釈はしたくない。
それでもまた再会を期したいと思う。 小沢健二が歌ったようにしばしの別れであることを。
2019年、手元に残ったCDを取り込みヘッドホンで総天然色の音色を聴いていると周囲に90年代のニギニギしい渋谷が広がって足取りが軽くなる。


※デトロイト・メタル・シティ。若杉公徳による日本のギャグ漫画
※※日本の漫画家。1980年代から1990年代にかけて、作品性に優れた多くの作品を発表、時代を代表する漫画家として知られた。しかし作家活動の頂点にあった1996年に交通事故で重傷を負い、後遺症で作家生命を事実上絶たれた。
※※※小沢健二の略称

text:トマトケチャップ皇帝/This Charming Man  illustration:Kei

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