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盆栽の正面

皆さんは、盆栽の手入れや鑑賞をする際、正面を意識していますか?
それぞれの盆栽には必ず正面と裏側があり、展示会や盆栽屋の店頭でも必ず正面を向けて飾ってあるものです。しかし、いざ「どっちが正面?」と聞かれると、簡単に判るものではありません。
私もこの業界に入りたての頃は正面と裏側の区別がつかず、よく親方に怒られたものです。
そこで今回は、盆栽の正面の決め方について説明していきたいと思います。

まず、盆栽にとって重要な要素となるのが、「根張り」「立ち上がり」「枝振り」「樹冠」そして「樹齢」の5つの視点です。
正面を見極める際は、この5つの要素のうち「立ち上がり」と「樹冠」がキーポイントとなります。
銘木の盆栽がしばしば相撲の型に例えられる事があるように、「立ち上がり」(足から腰にかけて)は後ろに流れ、そこから「樹冠」(頭)にかけて徐々に前傾に向かって流れる樹形が良いとされています。

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つまり「立ち上がり」が後ろに向かっていて、「樹冠」のある方が正面になります。

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完成樹は既に正面が決められていますが、養成中の樹の場合は正面を自分で決めることもあるでしょう。その際、例えば立ち上がりを良くすると、樹冠が後ろを向いてしまったり、枝振りが悪くなる等、不自然になる部分も出てくるかもしれません。そんな時は、「一番改善しにくい問題点」を基準に正面を決めることが重要です。
例えば、
・樹冠や枝振りを、剪定・針金整枝で改善できる場合・・・立ち上がりを基準に正面を決める
・立ち上がりを、植え替えで改善できる場合・・・樹冠を基準に正面を決める

正面決めに限らず、盆栽は多くの場合すぐに改善できるものではなく、少しずつ時間をかけて良くなっていくものです。
「思い通りに仕上がらないな」と思っても、焦らずゆっくりと時間をかけていくことが、より美しい盆栽作りに繋がります。また、心を込めた丁寧な手仕事を施すことは、盆栽の持ち主であるあなたにとっても、精神的に良い影響を与えてくれるのではないでしょうか。

今日はここまで。

植物再生工房 ReBonsai 小川佑介

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