休眠預金活用法改正に関するパブコメを出しました

2023年1月23日

  • 休眠預金活用事業が立法後5年の見直し時期を迎えており、法改正に関するパブリックコメントが募集されていたので、2023年1月20日に以下の内容で提出しました。

  • Colaboのことで当該事業について興味を持たれた方も多かろうと思うので、一応内容をまとめておきます。

  • なお、本来パブコメというのは対象文書の「どの部分」を「どのように変えたらいいか」、「その理由は何か」という、具体的な指摘を望まれていることは承知しています。

  • しかしながら「見直し事項」に顕在化している問題点がほとんど記載されていないので、本来のパブコメの主旨からやや外れた提言になってしまいました。

  • 休眠預金活用事業議員連盟の方々にはその点をご容赦いただいた上で、一国民として、また一専門家として真剣にご検討いただくことを切に望みます。

パブコメの対象

対象文書: 「改正法案 骨子(素案)」
「休眠預金等活用法の5年後見直しの対応方針」のうち、「Ⅲ.見直し事項」部分(p8~14)

以下が実際にパブコメとして提出した文章です。
なお、Note転載にあたり、大意を変えない程度に文章を変えています。

前提 休眠預金活用事業の現状

  • 資金分配に深く関わる事業者の役員が経営する別事業者だけが採択されている事例。

  • 資金分配団体(コンソーシアム含む)の代表理事が理事を務める団体が、本来は審査基準を満たさない事業計画で採択されている事例。

  • 審査委員の血縁者や、審査委員が経営する団体の会員を優先採択したように見受けられる事例。

  • 資金分配団体がその団体会員を優先採択したように見受けられる事例。

  • 公開されている限定的な情報を見ただけでも以上のような不適切な事例が見受けられます。

  • 情報公開を果たしている事業ですら上記の状況なのですから、未だ情報を公開していない資金分配団体・実行団体が真っ当に事業を行っているのか、非常に不安に思います。

パブコメの内容

よって、「Ⅲ.見直し事項」には以下の事項を盛り込む必要があります。

1. 支援体系の見直し (ア)指定活用団体の役割と組織体制 (イ)指定活用団体の審査対応・人材確保

利益相反の観点

  • 資金分配団体が自身の権益拡大に休眠預金活用事業を利用することができる事業設計になっているというのはかねてから懸念されており、それが顕在化しているのが現状です。この点を改める仕組み作りが求められます。

  • 資金分配団体が審査結果を公表する前にその審査の適正性の検証を行う部署を指定活用団体内に設ける等の対策をして下さい。

  • 特に利益相反を防ぐため、資金分配団体がどのような対策を講じたのかを重点的に検証する仕組み作りが必要です。

資金使途の適正性評価

  • また、資金が適正に費消されているかも疑問です。これに関しては公開情報が限定的に過ぎるため正確な評価が難しいですが、ソフト面の整備(地域のネットワークづくり等)に数千万円をかけるような、どこに巨額の資金が必要になるのかよくわからない事業も見受けられます。

  • またハードへの投資が伴う事業に関しても、地方の中古戸建てをシェルターに作り替える等の計画に30百万円もの巨額資金が費やされる等、一般的な相場から上振れしている可能性の高い事業計画も散見されます。

  • 資金分配団体は公益事業のプロではあるのでしょうが、事業目的や資金使途を勘案して支出規模が適正かどうかを判断する能力があるかは疑問です。

  • 以上2点を踏まえると、資金分配団体は実行団体の事業計画について、公益事業としての側面のみを評価するに留め、それ以外は利害関係のない第三者や資金面を正しく評価できるプロに審査を委託すべきであろうと思います。

  • 例えば金融機関への外注であれば、運用資金が元々金融機関の「雑益」として処理されていた休眠預金であることを踏まえると、費用が少々高くついたところで国民の理解を得られるのではないかと思います。

団体の監督

  • また、実行団体の監督を資金分配団体任せにするのは現状では不安です。

  • せめて定期的な抜き取り検査を指定活用団体が行い、実行団体の事業遂行と資金活用団体の監督の適否を評価するようにして下さい。

  • また不適切な資金分配を行った団体には休眠預金活用事業において、官公庁の「指名停止」のような措置を取ると共に、せめて管理的経費部分を返還させる等のペナルティも必要です。

  • また、既に述べた通り、現状では情報公開が徹底されていません。情報公開の期限を設け、それを果たせない団体についてはペナルティを課す等のルールを作って下さい。

  • 厳正な団体の監督と不適切事例に対する適切な処罰が必要です。

  • そうすれば資金分配団体も襟を正し、一定程度は公正な審査が担保されるのではないかと思います。

2. 支援規模・範囲等の見直し (3) 実施手法等の見直し ア 同一事業の再申請・事業期間の延長

  • 現状では対象にならない、同一事業への再申請、事業期間延長に伴う資金支援を検討するとのこと。

  • 既に同一事業者が繰り返し休眠預金活用事業の助成を受けている事例が多いです。

  • 既得権益化しつつある点は否めず、本件措置はそれを助長させることに繋がるので当該見直しはやめた方がいいでしょう。

3. 安定的・効果的な制度運用のための見直し (2) 法の見直し規定【法律改正】

  • 法の見直し期間を5年とするとのこと。

  • ただでさえ少ない公開情報を見ただけでも不適切な事例が多いことからも、見直し期間が5年というのは長すぎます。

  • せめて2年程度にして問題点が改まったかどうかを検証する必要があります。

その他 資金分配団体の管理的経費の見直し

  • 多くの資金分配団体は事業に際し、概ね最大値を管理的経費(※)として算定しています。
    (※事業の公募等に使う経費として資金分配団体に助成される経費のこと)

  • つまり15%が上限であった場合、1億円(例えば平均8.5百万円×10団体に分配)の事業の管理的経費は15百万円、5億円(例えば平均42.5百万円×10団体に分配)の場合は75百万円ということになります。

  • しかし1件あたりの分配額のボリュームは公募・選考という一連の業務にかかる事務負担や経費等と直接の相関関係がなく、上記の例では後者が前者の5倍の経費が必要だということに妥当性はありません。

  • 想定公募数、選考団体数、選考期間等、実際の事務・費用の負担を想定して経費額を設定すべきで、今のような総事業費の一定割合を機械的に資金分配団体に与える運用は改めるべきです。

  • 評価関連経費も同様です。助成額の5%という一律の設定も根拠がよく分かりません。

  • 上記の「資金分配団体の審査での役割は公益事業としての評価を行うに留めるべき」というのはこの管理的経費が分配額に応じて増加することが理由の一つです。意味もなく資金分配額を大きくすることが資金分配団体にとってのインセンティブになり得るのは問題だと考えます。

その他 資金使途

  • 例えば資金分配団体やその関連団体への研修や外注が実行団体の計画に入っているようなケースもあるようです。利益供与や資金還流と見られても不思議ではありません。

  • また、事業者がお互いに研修や外注をし合うことによってある意味では「マネロン」めいたことが可能となる制度設計となっています。

  • 「直接事業費」をより厳密に定義し、性悪説に基づいたルールを整備する必要があろうと思います。

以上

参考
休眠預金活用法が施行される前に指摘されていた懸念事項

※国会議事録については「利益相反」で文字検索して下さい。

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