見出し画像

父ちゃんの料理教室

父ちゃんの料理教室 辻仁成

出版社 ‏ : ‎ 大和書房

17歳の息子に父が伝える、料理と人生のこと
「あのね、料理は特別なことじゃないんだよ。
まずはキッチンに立ってごらん」


シングルファザーとして日々の食事を作り続けてきた著者が、息子にそのレシピを伝える感動の料理エッセイ。
なぜ料理をするのか、なぜこんなにも美味しいのか。

コツやタイミング、経験から導き出した知恵も盛り込みながら、辻家の定番料理の数々を伝授していく。
読めばきっと、大切な人に料理を作りたくなる。

--------------------

人間ってのは何を食べたいと思うか、食べようとするかが大事だ。お金があっても食べることを疎かにしている人は豊かじゃない。血の通った料理というのがあって、それは日々の生活とどう向き合っているかで、決まってくる。この時期にはこういう野菜が出る、こういう食材がマルシェに出回ると知っているだけで、季節を食べることができ、楽しくなり、当然、豊かになる。君は16年間でそのことを生活の中で、自然に学習してきた。秋になればきのこが美味しいはずだということを知っている…。それはとっても大事なことなんだ。パパが市場に行くのが好きなのは、季節を感じるからだ。あるいは、地球を感じることができるからだ。とくに八百屋に行くと、旬の野菜に出会える。春夏秋冬が一番わかるのは八百屋さんだよ。冬はかぶ、春だったらアスパラガス、夏はトマト、そして、秋はきのこ。食べる時の喜びをイメージして焼いてごらん。美味しそうと思いながら料理をすると、人生そのものが豊かになる。これ、当たり前のことだけど、これが自然にできるようになると毎日が楽しくなる。好きな音楽でも聴きながら料理をしたらいい。その時間も素敵だ。


今、この瞬間、自分は幸せなんだ、と気づける人のことを、幸せ者と呼ぶのだろう。逆に、はたから見たらとっても幸せそうなのに、その幸せをないがしろにしている不幸な人もいる。幸せに気づけない人は不幸だと思う。だからね、パパは君に言いたい。今を大事に生きなさい、とね。今を大事に生きさえすれば、一生は君の味方になるのだから。


何が美味しいかをわかるということは、生きるうえでとっても大事なことだ。それは人生を豊かにする。ああ、これは農家の人が一生懸命時間と愛情をかけて育てた食材なんだなと気付ける人間であったほしい。


いいかい、辻家の家訓だ、よく覚えておけ。愚痴や不平も言い過ぎると、不幸が近づいてくる。だから出来るだけ明るい未来を見つめるように生きろ。

不幸に慣れたり、不幸を招いちゃいかん。

小さな幸せをかき集めて、楽しい未来を心に描け。

幸せは幸せを招き、不幸は不幸を招くからだ。

--------------------

一日が終わる、寝る前に読み終わり、

「あ~良い本だった」と思える時間を過ごせると、その日一日が幸福感に満たされた日だった

と思えるほどの力を持つ。そんな本だった。

レシピ本だけど、随所に書かれている息子さんと食を通じて繋がっているストーリーが素敵で、最後はじーんとした。食って大切だなと。生きていく上で、豊かさに大きく関係する。料理を食べることだけでなく、その奥の本質まで知る。感謝する。おいしさとは、作ってくれた人の愛情・農家さんの想いを感じることも含まれるんだと思った。

私も母からそんな大きな愛情を貰っていたんだなと気付いた。毎日当たり前のように美味しいご飯が出て来て、今日は新たまねぎなのとか、今日は○○産の原木シイタケだよとか。季節のご飯ができてて、こんな会話から季節を感じていたのかと改めて知ったり。この味付け何?とよく聞くんだけど、これは塩コショウだけの味付けなんだよとか。素材そのものが美味しい食材を使ってくれていたり、ご飯を食べてる時に当たり前にしていた会話が私のきっと将来の家庭像に取り入れられていくんだと思う。

当たり前すぎて、特別な想いだなんて思ったこともなかったけど、そんな特別な想いを私も将来家庭ができたら、伝えていきたいと思った。食を楽しむことは、人生を豊かにするということ、料理で季節を感じること、たまには家族みんなで楽しく一緒に美味しいものを作るということをしていけるようなあたたかい家庭を作りたいと思った。そんなことを思える辻さんの人柄が伝わる本でした。


🌸:パンジー

花言葉「もの思い」「私を思って」


#父ちゃんの料理教室 #辻仁成 #大和書房 #パンジー #萌本棚



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?