【浦和レッズ】ミシャサッカーの「異界送り」-2020年の新・強化体制に期待すること

閉塞感漂う、2019シーズン

'18シーズンの序盤に就任したオリヴェイラ監督のもとで天皇杯を制し、'19シーズンのACL出場権を得た浦和レッズ。  

その'19シーズンは「リーグとACLの2冠」という、とても壮大なシーズン目標を掲げたものの、終わってみればリーグ戦では9勝10分15敗(勝点37)で14位。34得点50失点。
最終節までJ1残留が確定せず、結果的に入れ替え戦対象の16位とは勝ち点差1。またホームでは4勝3分10敗と、散々な戦績。  

シード参加のルヴァン杯は、準々決勝で鹿島に敗退。  

天皇杯に至っては、ラウンド16でJFL所属のHonda FCに"ジャイアント・キリング"を喰らうという散々なシーズンだった。

一方ACLでは、リーグでの低調さとは対照的に17年以来、2年ぶりの決勝進出を果たすものの、前回と同じサウジアラビアのアル・ヒラルに2戦合計0-3で敗れ準優勝。
準優勝というと聞こえはよいが、アル・ヒラルとの力の差は歴然だった。

個人的に2019年の浦和を表現するなら、「閉塞感漂うシーズン」という感じ。

どう点を獲りたいのか、観ていてもイマイチ分からない。
点が獲れたとしても、その形に再現性があまりなく、続かない。  

逆に失点の再現性はあって、だいたいこんな感じでやられるよねーという形でやられてしまう。
試合を重ねても、内容が上向いているようにも見えない。見ていてとてもストレスがたまるシーズン。

そんなシーズンを経て、クラブはまず強化体制の変更として中村GMの退任、および土田SD・西野TDの就任を発表。そして大槻監督の続投も発表。

この体制をもって来年以降の浦和レッズがいい方向に進むのか、さらに停滞してしまうのかは未だわからないが、新・強化体制に期待することを書いておきたい。

ミシャサッカーの「異界送り」を

ファイナルファンタジーⅩに出てくる「異界送り」は、死者の魂を異界へ送り届けるために舞い踊る儀式。

死者に例えるのは失礼な部分もあるが、浦和におけるミシャのサイクルは、当然ながら'17シーズン途中にミシャが解任された時点で終わっている。
しかしミシャサッカーの魂みたいなものが、まだピッチ上に残り、さまよい続けているように感じる。  

堀監督は正直何を志向していたのかよく分からなかったが、オリヴェイラ監督や大槻監督のような、ミシャとは明らかに戦術志向が異なる監督が、結果的にミシャのようなシステムで、ミシャ時代の主力を多く起用しているという事がその理由だと思う。

ただ監督の立場になれば、勝つために手駒の中で能力の高い選手を選んだら結局ミシャ時代の主力が多く、彼らを活かそうとすれば必然的にミシャサッカーに近くなるという事だったのだろう。あのオリヴェイラさんが3バックを採用するほど、選択肢がなかったのだと思われる。

これは明らかに編成の問題だと思う。ミシャ時代の主力を脅かす新戦力を補強できていないという点もあるだろうが、同じかそれ以上に問題だと思っているのが、彼らを放出できていないこと。

個人的には、彼らを嫌いなわけでもないし、むしろ好きだ。浦和のユニフォームを着ている選手は皆、応援する。
それに彼らの能力が低いとも思わない。17年のACL優勝・18年の天皇杯優勝は、紛れもなく彼らの能力で成し遂げたものだ。

ただ、選手の能力とは全く別の次元の判断で、段階的に主力を入れ替えていき、戦略的にサイクルを切り替えていくことも重要だと思う。
観る側にもやる側にも、ミシャサッカーは終わったんだというメッセージを、強烈に示すアクションが必要ではないか。

ミシャ時代の主力の多くは、ミシャに呼ばれ、ミシャサッカーをやりたくて来た選手達だ。彼らの一部は、今もまだミシャサッカーを気持ちの中に引きづっているのではないか。
そこに区切りをつける、儀式的なアクションはあっていいと思うし、新・強化体制にはそういった点を期待したい。

色んなインタビューなどを見ると、土田SDはアグレッシブでスピーディーなサッカーを志向しているようだ。個人的にはその方向性は好きだし、実現することを期待している。  

ただしその前に、まずは「ミシャのサイクルをきれいに終わらせる」ことを期待したい。まずはそこからだ。

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