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ノーカーズハイ。

徒然に綴るブログ、今回は「収穫」について書いてみます。

つくづく時の流れは速いもので、農家になり7年目、もうすぐ丸8年になります。7年目ということは、1年単位の作業スケジュールを、これまでに大体7回は経験していることになります。端的に言うと、野菜だったら「種をまく」「苗を植える」「収穫する」、お米だったら「田んぼを耕す」「田植えする」「稲刈りする」、梨だったら「剪定する」「摘果する」「収穫する」のような。端的に言いすぎな気もしますが。この中には、もちろん「好き・嫌い」や「得意・苦手」、「楽・辛い」、「正確に・適当に」など、それぞれの特徴があり、それぞれに対する思い入れがあります。

朝早く起きたり、体力的にしんどいもので、例えば「田んぼの溝切り」とかはあまり好きではなかったり、勉強した成果を反映させやすく、パズル的要素のある「梨の剪定」は好きな作業の一つだったりします。そんな中、数ある仕事の中でも、おそらく頭一つ飛び出るくらいで好きな作業のトップに君臨する作業は、やはり「収穫」です。

これこそ、農業の醍醐味というか、農家の至福というか、わかりやすいゴールでもあります。小さな種や苗や芽を、長い時間と手間をかけ、汗かきベソかき育てる日々。その目標が「収穫」です。そこから「買ってもらう」とか「調理してもらう」とか「食べてもらう」とかももちろんですが、ひとまず収穫できたことが、国や地域問わず全世界、そして時代も問わず全時代の、過去も未来も変わらない農家の「喜び」となっていると思います。
かなり大げさに書きましたが、「収穫」がうれしい!たのしい!大好き!なものであることは、7年以上農家をやってみて、ドリカムさんに言われるまでもなく自分自身も強く感じていることに間違いはありません。

収穫作業は、その時の天候に左右されることも多々ありますが、これまでやってきた作業が良くも悪くも反映されるので、「答え合わせ」のような感覚になります。そして、それは時に不正解(小さい、見た目が悪い、味がのっていない、など)で落胆することもありますが、正解(大きい、見た目がいい、おいしい)を出せた時=美味しいものが収穫できた時は、最高の気分になります。そして、この感覚はあれに似ています。ジョギングをしていると、最初は苦しいけど、だんだん気持ちよくなってきてテンション上がってくるやつ。いわゆる「ランナーズハイ」。

「ランナーズハイ」とは、ざっくりいうと「運動中に体内で分泌される『βエンドルフィン』というホルモンの働きで、恍惚感や陶酔感が生じている状態」ということだそうで、わりと馴染みのある言葉だし、多くの人が実感したことがあると思います。僕自身も、不定期で取り組んでいる朝のジョギング時に、この状態によく陥っていると思います。このように、「何か行動をしていることにより、徐々に恍惚感や陶酔感にのめり込む」ということでいうと、「本を読んでいたら」「ギターを弾いていたら」とか、「走る」こと以外でも陶酔感に浸ってしまうことが僕はたまにあります。つまり「〇〇〇〇ハイ」の状態。

農作業でもこれはよく当てはまって、「梨の摘果」「草刈り」「トマトの脇芽欠き」のような単純作業を長時間していると、だんだんテンションが上がってくることがあります。そうです、これはもはや「ファーマーズハイ」。ただし、「ファーマーズハイ」だと、すでに使われている言葉のようなので、ここでは「ファーマー(Farmer)」を「農家=ノーカー」とし、「農家のハイ」、「ノーカーズハイ」と書かせていただきます。

上で述べたように、「ノーカーズハイ」には、さまざまな種類がありますが、その中でもやはり「収穫」が、やはり陶酔感が強いと個人的には感じています。そこで、僕が勝手にランキングした「赤間農園的『ノーカーズハイ』ランキング 『収穫』部門」を発表します。

まずは第3位!「きゅうり」!
「きゅうり」は、ほぼ毎年当園で栽培している主力作目。年によって植え付け時期や栽培面積は若干異なりますが、収穫は大体6月頃から9月くらいまで。「きゅうり」は数ある野菜の中でも生育が早く、収穫も期間中は毎日行うので、「収穫」による「ノーカーズハイ」を期間中は毎日味わえるという優れもの。最盛期には、とにかくたくさん採れる!上から下までびっしりと実り、次から次へともいではカゴに入れ、またもいで…の繰り返し。形のいいまっすぐできれいなきゅうりをもぎまくるわけです。
「きゅうり」のポイントは2つあり、①適切なサイズで収穫する。②葉に紛れているのを見逃さず収穫する。この2つを基本的には心がけています。ただこれがなかなか曲者で、日照や気温の影響をとても受けるので、「まだ小さいから今日は採らずに明日にしよう」と思っていたきゅうりが、天気が良かった次の日には、驚くほど大きく成長してしまっていて驚かされることがよくあります。また、巧妙に葉に紛れて見つけ損ねていると、その場合も気づいたときにはすでに、超巨大なきゅうりへと進化しているということも…この場合は、もはや「かくれんぼ」の鬼役のような感覚に近いです。自分が隠れ役になることはない、一生鬼役のかくれんぼ。
このかくれんぼ、実はかえってストレスを感じてしまうことも多々。日々探しながら収穫はしていますが、株元や頭上なんかに絶妙な角度で隠れていて(いや正確に言うと見逃しているだけなんですが…)、丸々と太り巨大化してふいに姿を現したりするので、その時の悔しさは相当なもの。そして一番きついのは、ちょうど見やすい目線の高さに突如として現れる、逃げも隠れもしていない巨大なきゅうり!こんなにも目につくところにありながら、なぜ昨日収穫しなかったのか?!なぜこんなに大きくなるまで気づかずに素通りしていたのか…!?自分の目は節穴か!と、落胆することも多々ありますが、それでも形の良いきゅうりをたくさん収穫したり、長年の経験から葉陰に隠れていたきゅうりを見つけてやったりしたときは、それこそ「ノーカーズハイ」突入!農家冥利に尽きるわけです。

と、まだ3位なのに長くなってしまったので、続きの2位・1位はまたそのうちに。よろしくどーぞー!

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