強いエンターテイメント、寄り添うエンターテイメント

ボクは、エンターテイメントを「自分に立ち戻るための道具」だと思っている。
人の生活や仕事には不要であるが、人の営みの中で必要とされてきたもの。

生活や社会から一時的に距離を置き、社会や生活の中だけはない、なんだかよくわからない自分に一度キャリブレーションをする。
そのための道具がエンターテイメントなのだとボクは思う。

そういう意味で「広義では」エンターテイメントとして呼んでしまってもいいと思ってるものもある。
プラモを作る、趣味の料理を作る、散歩、激辛ラーメン、酒を飲む、友達と遊ぶ、たばこ、アート鑑賞などなど。いわゆる受け身のエンタメの領域から外れるものにも生活や社会から一時的に距離を置けるものがある。
一時的に距離を置くための道具や行い、そのような大きなくくりがある。
(そのように、社会や生活から切り離した領域全般を指す、もっと適した言葉があれば教えてください。)

強いエンターテイメント

身体がこわばっている時には、ぐーーーっと強い力で的確にストレッチをする。ストレッチ専門店や、マッサージ店などで専門家にやってもらうと良く動くようになる。
同じように気持ちがこわばっている時には、強い力でぐーーーっと心を動かしてもらう。エンターテイメントのパワーによって、力づくで社会や生活から距離をとらせる。
どのような気分であってもそこに連れて行ってくれる作品がある。
映画やライブなどの多くは、比較的短い時間で大きく感情を揺さぶり、この効果が高い。強い=刺激的という意味ではない。おだやかで情緒的だがすごく心の動く映画があるように、どのようなものでもぐーーーっと心を動かせば良いと思う。一時的に生活や社会の事を忘れ見入ってしまう。自分さえも消える。これを没入という。

社会や生活でこわばっている人にほど強いエンターテイメントをオススメしたい。最近ボクが作っているVRライブやミュージックビデオも短い時間でぐーーーっと感情を動かすものを目指して作っている。
短い時間で自分に立ち戻って、そのあとは好きなことをして過ごしてもらえるといいなって思ってる。
没入量を数字で並べる事はできないが、同じくらい良い映画があったとして、180分の映画より90分の映画のほうが、良い映画だなっていうのはボクの趣味だろうか。

寄り添うエンターテイメント

YouTubeのLo-Fi Hiphopや、ラジオ、動画配信など、比較的まったりとしたエンターテイメントの領域もある。

それを受け取りながら作業できるようなタイプのもの。
作業内容によるが、仕事や家事の時にかけっぱなしにしている人も多いだろう。

社会や生活を少し自分寄りにカスタマイズして、気持ちよく向き合う環境をつくる。花や香りのような寄り添うエンターテイメント群。
外でも、電柱の構造を観察したり、あれはウロコ雲って名前の雲だなと思ったり、道端の草木の名前を思い出したりするというのも、この領域と言えるかも。

グラデーションとないまぜ

今あげた二つのエンターテイメント群「ストレッチ」と「香り」の間はグラデーションになっている。明確に分けられるものではない。一つの作品に両方の要素が"ないまぜ"になっている事も多いだろう。
時間によって変化するものも多い。
スポーツ中継を流しっぱなしにしていたら、良い勝負で集中してしまった。
雑談配信だと思ったら事件が起きて盛り上がった等、いろいろ例をあげられるだろう。

もし私たちが広義のエンターテイメントを誰かのためにつくるのであれば、これはストレッチのためなのか、寄り添うものなのか、どのように混ぜているのか自覚的であるのが望ましいんじゃないかな、狙わないと達成難しいからね。とボクは思っている。

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