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前例がないなら、どこまでもベランダに特化することにこだわるぞ。

もしかしたら、ベランダで植物が育ってこなかった原因は
土の中の何かの微生物が足りなかったのではないかという仮説を立て、
そんなことはきっとどこかの誰かが広めている
案外園芸の世界では常識なのかもしれないと考えて、
考察した方法をネット検察してみたら
誰もやってなかったことを知って、
じゃあ、自分で立てた仮説を自分で実証実験してみようと
鼻息を荒くした私。
その方法は、微生物だけで「野菜くずと園芸残土をなんとかする」こと。
この時は何とかした土がベランダデスバレーで通用するかについては
全く期待しておらず、
誰もやってないことに挑戦することが、希望の少ないコロナ禍で
ほんの少し希望のある試みだ、とだけ考えていたのです。

考察を経た仮説のゴールは「森や林の腐葉土の下の下の土の再現」。
それはちょっとハードルが高いけど、
まぁ、目標は高い方が面白いので。

一つめの微生物

まず、
「ベランダの園芸残土と野菜くずを同時に何とかする。」
これは大前提。
何とかする方法として「微生物」を使うこと。
これもいい。ただし、どんな微生物を使うのか。
そこが全くわからない。

チリの岩山や黒竜江省の土には腐葉土がほぼ見当たらないので
腐葉土の仕組みは参考モデルにはできない。
そうはいっても今の所基準にしているのが腐葉土なので、
考察の旅の出発点は腐葉土ができる場所ってことにする。

ちなみに腐葉土そのものを使うと考えなかった理由は
そもそも腐葉土は分解途中のもので、「土」ではないと考えていることと、
これまでに買ってきた培養土にも腐葉土は含まれているのにも関わらず
その土で植物が思うように育ってこなかったので、
私の思うものからは除外しました。


後に理解することになるのですが、
「腐葉土が土をふかふかにする」その意味は
土の中のクッション材として物理的に空気の層を作る役割と、
腐葉土で木の葉や枝を絶賛分解中の微生物そのものを
「微生物資材として」畑の土に定着させる意図があって、
ものすごく広い解釈として捉えるなら使う微生物が違っているだけで
目的と仕組みの構造は 私も同じなのでした。


そのほかで、森の環境に大きく影響している微生物って何だろう。
例えば一般的な農業では、堆肥として使っているものは何か。
魚粉、米糠、牛糞、豚糞、鶏糞…。

鶏糞!
そういえば、森の中で一番多く見かける動物は鳥で、
鳥は森の中を縦横無尽に飛び回り、そしてフンもあちこちに落としている。
農業用に肥料になったところで
フンに含まれる微生物はそう簡単に死なないし、
確か種類も相当あったはず。
特定の微生物がわからなくても、鶏糞に含まれる微生物は有効に違いない!
それに、鶏糞ならどの動物の糞より臭いが少ないのも良い。
よし、微生物は鶏糞に含まれるものを使おう!

微生物のための容器へのこだわり

入れる微生物は鶏糞に含まれるものを使うとして、
容器はどうする?

昔借りていた畑に置いたコンポストがプラスチック製で
水分が抜けずにニオイや虫が発生してとても困った思い出があるので
ここはエコにこだわって木の板で容器を作ろう。
木の板であれば、通気性も保温性もきっと良いはず。

ベランダデス渓谷に多肉植物のために作ったのに
今では猫のためのお昼寝スペースとなっている簡易デッキを作った時から
行きつけになっていたホームセンターへ向かうのですが、
使いたい木材は決まっていたのです。

それは、桧のB級の節穴がぼこぼこ空いた板です。
どうやらこの板材はスノコ板用に製材されたものの
スノコには使用できなかったもののようで、
板のサイズも長さ850ミリ、幅87ミリ、厚さ11ミリで、
片面だけ面取りをしてあります。
まんますのこカット。
B級品なので値段も安い。

私はこの節穴があるものが好きで、
多肉植物用の棚を作るためによく買っていました。
節が空いていると穴から余分な水も抜けますし、
風も通ります。
夜は節穴にイルミネーションライトを通して夜の多肉鑑賞を
楽しんだりもしていました。
節穴がスポットライト効果になったりして。

節穴はかわいい

野菜くずの分解に微生物を使うと決めた時、
この節穴こそが「肝」になるという確信があったのです。

ポイントは微生物の呼吸。参考になったのがぬか床です。

子供の頃ぬか床当番をやらされていた経験から、
ぬか床乳酸菌の特性はある程度承知していました。
ぬか床は最低でも朝晩かき混ぜないと温度が上がりガスが発生して
傷んでくること。
毎日野菜を追加しないと発酵が進んでしまうこと。
つまり、微生物は思った以上にものすごく呼吸する。

土の中の微生物もおそらくものすごく呼吸するけれど、
だからと言って毎日世話はしたくない。
そうなると、ほったらかしにしておいても勝手に呼吸(バイオガス)
が外に出たり、新鮮な空気が取り込める仕組みにすれば良いわけです。

そのためにガスの抜け穴は多い方がいいけれど、
多すぎては温度が上がらなかったり乾燥が進んでしまうので、
ちょうどいい空気穴として節穴が最適だと考えたのです。
円形の穴から出入りする空気は僅かでも気流を生みます。
そこが狙い目。

節穴が空いているということはそこから土が漏れてしまうので
内袋も作る必要がありますが、
それは100均のフェルトで作ることにします。

フェルトにする理由は3つ。
1、通気性が良く保温性も高いこと
2、水分が多い時には水抜けが良く、
  水分が少ない時にはいくらか水を止める働きが期待できるから
3、ある程度土の流出を抑えることができるから。

この2層仕立ての容器は目論見通り、
いえ、それ以上の効果を上げることになりました。

臭いと虫は絶対避けたい

容器と土に混ぜこむ微生物を鶏糞の中にいるものを使うと決めましたが、
問題は、鶏糞入りの残土に「入れて良いもの」を絞ることでした。

なぜなら、集合住宅に特化させるなら、
エコであることよりもまず、上下左右の隣家に
迷惑をかけるような仕組みは許されないと考えるからです。

エコに特化したコンポストが「あたりまえ」に定着しなかった一番の問題は
やはりこの臭いと虫の問題を越えられなかったからで
私自身も、臭いと虫問題があってどうしてもコンポストに踏み切れない思いがあり、自作するならここをクリアしないものは作りたくない。

どうしても越えられない腐敗臭と寄ってくる虫の問題。
では、そもそもコンポストに入れたものから
腐敗臭が出るのはなぜなんだろう。

例えば、
森で台風などで若い葉や枝が折れたり傷ついたりしたものが堆積しても
畑で野菜の残渣だけ入れたコンポストのように腐ったりはしません。
単純に考えれば、違いはほぼ密閉されているかいないか。
通気性が良ければ効率よく水分が抜けるため腐るより速く枯れるから。

そして、コンポストにあって森にはないもの。
それが動物性のタンパク質なのではないか。
野菜と動物性たんぱく質では動物性タンパク質の方が早く傷んできますし、
コバエや黒いアイツも野菜と肉や魚の切れ端があれば、
真っ先に肉や魚の切れ端に寄ってゆきます。

もちろん森にだって小動物や爬虫類などの亡骸はあるでしょうが、
出現する数は圧倒的に少ない。
つまり、私が作る新しい仕組みには動物性のものは入れない。
そうすれば腐敗と腐敗臭を限りなく少なくし、
虫が寄りづらくなるはずと考えます。

臭いについてはもう一つ原因があって、
それがエチレンガスやメチルメルカプタンなどの野菜が発生させるガス。
キャベツが腐った時の独特の臭さ、玉ねぎ臭などのことで
これらは動物性タンパク質を入れなくても発生してしまいます。
屋外コンポストが臭うのもこのせい。
そして、これらのガスもまた、虫を呼び寄せる。

この野菜のガスの発生を極力減らすためには、
野菜自体を枯らす速度を早めることしかありません。
ガスは生理現象なので、
最低でも萎れさえすればガスの発生をかなり下げることができる。

野菜を急速に萎れさせる方法として、
園芸残土の「微細な砂化した石」の硬さと石で傷ついた野菜の傷口を
鶏糞に含まれる微生物の餌の取り付き口として利用する。
このコンビネーションを考えました。

つまり、野菜くずを残土と混ぜた時に野菜くずの表面には
擦りむき傷ができます。
微細な石は人の手を傷つけることはありませんが、
野菜の皮の内側の柔らかいところにとっては凶器です。
傷ができれば水分も抜けやすくなり、そこに微生物が取り付きやすくなる。
結果、野菜ガスが発生する前に野菜くずを萎れさせることができるという
考えです。

私の考えるベランダに特化した「野菜くずをどうにかする仕組み」は
ぬか床で言えば、
ぬか=園芸残土
乳酸菌=鶏糞に含まれる微生物
漬物用野菜(エサ)=野菜くず(エサ)
となります。

それともう一つ、この仕組みで入れて良いものを1つ追加しました。
それは卵の殻。
卵の殻には白身が僅かに残ってしまいますが、それはOKにします。
卵の殻は、森にも野鳥の卵の殻もそれなりにあることと、
腐葉土の中にいる昆虫の亡骸に見立ててです。
成分は違いますが、卵の殻に残った白身は昆虫の内臓と考えれば
何らかの栄養素として作用してくれるかもしれないと期待したのです。

いよいよ試作第1号。しかし….

考察、仮説をもとに後のリフォレスターと同じ
木箱と、フェルトの袋を自作し、フェルト袋を木箱にセット。
そこへ園芸残土と「臭い少なめ鶏糞ペレット」と
超極薄切干しを作る時に出る大根、にんじんの葉や皮などを入れ、
よくかき混ぜてから蓋をしてまずは1週間放置しました。

結果は、仮説は当たっていたけど、
期待した効果には及んでいませんでした。

腐敗と臭いに関してはほぼクリアできていて、
野菜から発生するガスも蓋を開けた時に
ふんわり鼻先を通り過ぎるくらいなので、
この臭いは隣家までは届かないと言って良い。
虫に関しても、コバエは寄ってきていないのでこれもクリア。

けれど私は不満です。
なぜなら分解速度が思いのほか遅い。
遅いと言っても、順調に萎れは進んでいるし、
何ならほったらかしでこの状態なら全然合格ライン。
けれど、私は不満なのです。
もっと、分解速度を上げたい。
本能が、もっと分解速度は上げられると叫んでいるのです!

「特化」を売りにした農業用微生物資材との出会い

それまではネットで「土の再生」というワードでばかり
検索をかけていたのですが、
ふと、農家さんも微生物使ってないかな?と思い付きます。
そこで初めて「農業用微生物資材」というものの存在を知ります。

「農業用微生物資材」とは、
植物栽培に資する効果を目的として、土壌などに施された場合に表示された特定含有微生物の活性により、用途に記載された効果をもたらすもの
と定義された業界で認められたものだそうで、
わかりやすく表現すると、
土壌改良の働き手として入れる「特定の微生物」を畑に蒔きやすくしたものということらしい。
もっとざっくり言えば、腐葉土を粉化したものにかなり近い。
ただ、効果は認められたものもあるけど、植物に対してどの微生物が
どんな効果があるのかはあまりはっきりしていないようで、
信じて使って効果が出れば良し。
基本的に良いものらしいが
ものすごく目立ち、誰にでもわかる効果もはっきりしないらしい。
土質が良くなるのは間違いがなさそうだけど。

そんな中、一つの微生物資材を見つけます。
その微生物資材は「稲の籾殻の分解に特化していること」が売りの
名を「カルスNC-R(かるすえぬしーあーる)」と言います。
何でも、籾殻というのはものすごく植物繊維が頑強でとにかく分解が遅く、
早くても3年は原型を止めるほどで、
籾殻を敷き藁の代わりにしたり土壌改良の一つとして畑に使うと
かなり手痛く失敗するらしい厄介な代物なのだそう。
そのため籾殻は産業廃棄物と同じような扱いで焼却廃棄が当たり前という
米農家にとって、処分にお金がかかる悩ましい代物らしい。

カルスNC-Rはこの籾殻の分解に特化して開発されていて
概ね半年で籾殻を分解でき、
1年を待つことなく原型を止めないまでに細かくすることができるそう。
それに、どうやら野菜の切れ端でもそこそこ何とかなるらしい。
ただ、野菜の場合はスターターに米糠を入れるということでした。

けれど、私は思います。
「籾殻に特化した」ということは、
植物の繊維なら何でもいけるんじゃないかと。

どうしてそう思うのか。
籾殻は人間から見ればお米に紐づけられた特定の部位だけど、
微生物にそれが判別できるのかなって。
微生物の視点からすれば、
大好きな植物の繊維の塊にしか見えないのではないだろうか。

稲は草、野菜も草。
ならば枯れた状態であれば見分けがつくはずはないので
どっちも食べるのではないか。

試してみない理由はない。
早速最小単位の1kgを注文して実験中の箱の中に入れてみます。
とりあえず、300グラムくらいだけ。
米ぬかも購入して投入します。

そして1週間。
箱の中は米麹の麹畑ような微生物のパラダイスになっていました。
キター!♪───O(≧∇≦)O────♪
これが私が目指していた最速分解!


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