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針葉樹を深掘りしすぎたら深海に行き着いちゃった話。(その1:針葉樹の防寒着)

針葉樹を植物残渣として堆肥化するのは難しい

効率的に針葉樹のおがを堆肥として分解したい。

しかし、リフォレスターにおがくずを入れたところ
微生物の活動が著しく低下してしてしまうという
想定外の事が起こってしまいました。
おがくずを投入した理フォレスターは3回目の冬を迎えた
微生物たっぷりの再生土だっただけあり、
活動が低下しただけで、土自体の柔らかさは保ち続けており
現在は徐々に活動も下に戻りつつあります。

それでも鉋屑は明らかに分解していませんし、
木片も木片のままの状態です。

でも、よく考えたらリフォレスターの木箱は針葉樹を
使用していますし、
フェルトの内袋があるとしても微生物による侵食がほぼないのですから
ほんとうにリフォレスターで使っている微生物は
針葉樹が苦手なのかもしれません。

リフォレスター4年目の課題はおがくずの微生物分解

とはいえ、アパート、マンションのベランダに特化した
リフォレスター的にはおがくずを使う必要がないですし、
現状を見る限り、おがを分解していないだけで
野菜くずや卵の殻はきちんと分解できているので
これはこれで良しとしましょう。

それより、「できるはずのもの」が「できない」。
それが目の前にある事自体がなんだか萌えます!
違った、燃えます!

この課題はリフォレスターとは別に取り組むことに
挑戦したいと思います。

針葉樹とはどんなものなのか紐解く

おがくずやバークの分解を考える際に
真っ先に考える事があるとすれば、
それは針葉樹の腐葉土はどうなっているのか
という事です。

針葉樹の落ち葉は、意外なくらいに枯れません。
乾燥はするけれど土化が進むスピードが
驚くほど遅い。

遅いけれど、土化しないというわけではありません。
前回甘い葉っぱ、酸っぱい葉っぱをバランスよく土に混ぜ込んで
微生物に喰わせて種土を作る方法を提案しました。

針葉樹が多く生える自然界の森のうち
豊かな森にはこの原理が生きています。
北欧やカナダの針葉樹林の地面には
ツツジ科の低木やコケモモなどが生えています。
ブッシュ系のブルーベリーやコケモモ、スグリ、冬苺などのことです。
そのほかにもインテリアとして販売されている
スポンジに似たモスなんかもありますね。

針葉樹でお馴染みの松の葉が酸っぱい系であるということを考えると
針葉樹はやはり酸っぱい系(ひのきや杉もかじるとやや酸っぱい)
と考えてよさそうで、ツツジ科やコケモモ、ベリー類は
極低木でも立派な甘い系なので、
堆積するのはバランスの取れた上質の腐葉土になるのだと思います。
ただ、気候や気温の関係で背の高い紅葉樹や
背の高い雑草は育つ事ができないため、
腐葉土は養分はあまり使われないまま堆積するのでしょう。

これがさらに北の針葉樹林帯になると
低木や雑草はぐんと数を減らし、
代わりに地表はきのこ類の王国になります。

甘い葉っぱがない地表は暖かさが足りない

落ち葉から腐葉土ができるプロセスのうち、
主に微生物が関与しているところだけ抜き取ると、

  1. 秋に落ち葉が積もる

  2. 微生物は甘い葉っぱから食べはじめる(分解)

  3. 分解する際に吐き出すガスのため、落ち葉に熱が加わる

  4. (キノコや地衣類の活動が活発になる)

  5. 特に雨上がりには低温で茹でているような状態になる

  6. 熱により徐々に酸っぱい葉からシュウ酸などが溶け出す

  7. 微生物がシュウ酸などが抜けた酸っぱい葉っぱを食べ始める

  8. 成長した菌類や地衣類が分解された葉を養分として食べ始める

  9. 気温の上昇と共に落ち葉の分解スピードが上がる

  10. 完熟腐葉土の完成

  11. 秋になりまた落ち葉が積もる

寒冷地の針葉樹の森では上記プロセスの
最初の2番が機能しにくいため
それ以降のプロセスがどんどん遅くなります。
これは微生物の働きも活発にはなりにくいでしょうから、
広葉樹の森に比べて土の温度も暖かくなりにくいと考えられます。

針葉樹の葉が硬くて針っぽいのには訳があった

北欧の秋の楽しみにキノコ狩りがありますが、
中でもポルチーニ類は鬱蒼とした針葉樹の森に
生える事が多いようです。
Youtubeには北欧やロシアのキノコ狩りの動画がたくさんアップされていて
様々な角度から森の様子を見る事ができるのは本当に便利です。
注目するのはポルチーニの多くが針葉樹の落ち葉の下から掘り出す
感じで収穫されている事です。
その際に大きいキノコになるほど分厚い針葉樹の落ち葉の層に
から出てきます。

落ち葉の分厚い層の下の方は黒っぽくなってはいますが、
葉の形状は保っているように見えます。
これは一体どういう事なんだろう、
この分解されないくい形状の意味は何だろう。
そう考えた時、真っ先に閃いたのは
リフォレスターの内袋に使っているフェルトの生地でした。

猫を飼っている人ならわかると思いますが、
猫の抜け毛で猫玉を作ると繊維が絡み合ってフェルト状になります。
しかし、手芸用のフェルトの繊維は
よく見るとやや直線の集合体に見えるのです。
これを拡大して見た時の形状が、
松林の落ち葉やヒマラヤ杉の落ち葉の堆積ととてもよく似ているんです。
針葉樹の落ち葉と手芸用のフェルトの構造。
この形状の効果とは
「限られた素材で効率的に物理的な隙間を作る事ができる」こと。
フェルトが空気を多く含む事で熱の蓄積と適度な水分の蒸発や
ガスの放出がができるように、
針葉樹の落ち葉の層は微生物の分解で期待できる発熱量が少なくても
温まった空気を保てる構造になるよう効率的な針型の葉に進化した
という事ではないかと思います。

針葉樹が油っぽい訳は深海生物と関係があった

針葉樹の形状と落葉の関係と目的がある程度わかったとして、
針葉樹はなぜ油っぽいのか、その理由はそれこそずっどわからず、
リフォレスターにも謎を解くヒントは微塵もありませんでした。

そんな中、思いもよらないところから謎は解け始めました。
きっかけは、Youtubeの深海探査艇ノーチラス号のライブ配信でした。

ノーチラスは民間、もしくは幾つかの大学の複合プロジェクトらしく、カリフォルニアを拠点として、主に太平洋の深海を探査する活動をしているようです。一昨年から昨年の12月くらいまではウェーク島、ミッドウェー島、ハワイ周辺の水深2000m〜4000mあたりの海底火山や地形、地質の調査を行っていて、
最近では戦艦赤城の撮影や深海恐竜の化石の発見などが日本でもニュースになったりしていました。

さて、深海というところは一般的に水圧が高くて光も届かない
生物などいない暗黒の砂漠のようなところだと思いますが、
実はそんなことはなく、
確かに猛烈な水圧とかなりの低温ではありますが、
意外なくらい多くの生き物が繁殖していて
火山活動がなければ、様々な色や形のサンゴや海綿などが茂る
「深海の森」が広がり、なまこ、エビ、貝、カニ、タコ、魚、ヒトデなど
結構多種多様な生物も繁殖しています。
それに活発ではないけれど活動している火山も多く
海水温もマイナスにはなっていないようです。

とはいえ、マイナスではないだけで寒いは寒い。
この寒さに対する防衛策として深海魚は身に油を多く蓄えています。

そう、寒さに耐えるために手にいれる天然素材それが「あぶら」で、
針葉樹が油(やに)を多く含んでいる理由の一つが
防寒対策のためだったと気づいたのです。

そしてもう一つ、深海サンゴや海綿の形状は細長い管状の形と
スポンジ構造のデザインが圧倒的に多い。
この形状は、たまに起こる強風のような海流をうまく受け流し、
効率的に水中の栄養素を拾うのに適しているようなのですが、
針葉樹が葉の形状を針型、あるいは広葉樹の広くて薄い形状に対して
小さくて立体型の形状にした理由も、
寒さと強風に適応したものなのではないか、
その葉を落として足元に堆積した落ち葉の層がスポンジのような
隙間を多く作り出す構造であるのも単なる偶然と考えるのは惜しい気がします。

そして深海からはまだまだ針葉樹の謎を解くヒントがあるのです。

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