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5年前の出来事から考えるケイスケホンダとフォロワーシップ

「私がこのチームでやりたいサッカーは今説明した通りで、それに対してチーム全体が同じ方向を見なければ前に進まない。特に君たちに少しでも疑問があったら、他のメンバーまでもがついてこなくなる。そうなれば、私はもはやここにいる意味がない」

これは、ハリルホジッチが解任される直前に、「ビッグ3」と呼ばれる本田、香川、岡崎に告げたとされる発言です。その後どんな結末になったかは、誰もがご存知の通り---


というのは真っ赤な嘘で、これは『通訳日記 ザックジャパン1397日の記録』に載っている、2013年10月13日のザッケローニの発言です。

東欧遠征中の日本代表において、この日に「HHEミーティング」が行われました。Honda、Hasebe、Endoの3人とザックによるチームの戦い方に関する話し合いです。話し合いというか、本田からの申し出をザックが受け止める形で開かれた会合ですね(もともとその前日に本田からザックに投げかけがあり、「圭佑だけが先走りしていると周りに思われるのはお互い不本意なので、キャプテンとヤットとともに夕食後、MTGをしようということになった」。冒頭の発言は、その翌日に再度同じメンバーで開催されたMTGでのもの)。

結局この一連の流れは基本はザックが示すサッカーの方向性に従うということで決着するのですが、今読むと非常に示唆的なくだりですね。これ以外にも、ワイドの幅をとろう、サイドバックはバランスを考えて1枚は上げない、と言うザックに対して、中に人を集めてつなぎたい、サイドバックを場合によっては2枚上げたい、と主張する本田のやり取りなど、最近の出来事につながるような話が出てきます。

この『通訳日記』、現状のタイミングで読み返すと上記の箇所に限らず面白い話がいろいろあるのでおすすめです。

※ちなみに本田はこのチームのラストの日に、ザックに対して熱い感謝の言葉を直接告げています。

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現場のメンバーが仕事のやり方に対して提言することはほとんどの場合素晴らしいことですし、リーダーはそれをしっかり受け止める必要があります。ただ、それでも組織である以上は「メンバー」と「リーダー」それぞれに役割があります。

その役割を分かつ線を越えたところで行う「主張」は「わがまま」ではないのか?
そしてその「主張」が当然退けられたとき、それに従うことは「服従」なのか?

意識の高い層を中心に「リーダーシップ」の重要性が説かれ、「経営者のつもりで働け」と何の権限もない従業員に発破が掛けられる昨今ですが、多くの人にとって大事なのは「メンバーシップ」「フォロワーシップ」なのではないかなと最近よく思います。

「個を縛る組織」というモデルではなく、「組織に活かされる個」という発想から「組織」と「個」それぞれのあり方をReframeしていくことこそ、本当の意味で求められているのではないでしょうか。


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