私立恵比寿中学と短歌 令和に寄せて

本日5月1日から元号が「令和」に変わった。

「令和」は、現存する日本最古の和歌集である万葉集を典拠としている。歌人としてはこれにより短歌が盛り上がり、短歌に興味を持つ人が増えれば良いと思っているのだが、それとは別に気になっていることがある。

令和との繋がりで話題になっているアイドルグループ、私立恵比寿中学(エビ中)だ。僕はエビ中のファンなのだが、常々「エビ中と短歌、親和性が高いのでは?」と思っていた。

現在、エビ中は「令和アイドル」を自称している。

令和について安倍首相は「厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたいとの願いを込めた」と説明している。この内容がエビ中の「梅」という曲の歌詞にリンクするところがあり、一部で話題になっていた。「梅」は6年前に発売された曲である。

「梅」MV


令和になるとともに公開された「梅(令和ver.)」


そして令和以外にも、エビ中と短歌の繋がりを感じることがある。エビ中と短歌の共通点について言及できるのが自分だけなのではないかと思ったので、今回の記事を書いた次第だ。以下に書き記す。


大島智子

平成31年3月13日に発売されたアルバム「MUSiC」に収録されている「曇天」のMVは、イラストレーター・映像作家の大島智子による全編アニメーション仕立てになっている。「梅」の発売当時とはメンバーも歌唱力も大きく変わっているので、「梅」のMVを見てなんかごちゃごちゃしてよく分からんと思った人も見てみてほしい。


短歌との共通点だが、初谷むいの歌集「花は泡、そこにいたって会いたいよ」の装画と挿絵も大島智子によるものだ。儚く眩しい短歌たちは、大島智子のイラストとマッチしている。


吉澤嘉代子

シンガーソングライターの吉澤嘉代子は先ほどの「曇天」や、「日記」「面皰」という曲をエビ中に提供している。「曇天」は大人の女性をイメージさせる曲だが、「日記」は家族をテーマにした明るくも切ない感情、「面皰」は面皰(ニキビ)に悩む乙女の可愛らしい恋心を表現している。それぞれの曲でエビ中の違う側面を見ることが出来るのは嬉しい。

そんな曲を提供している吉澤嘉代子は、作詞の際に短歌や小説から大きく影響を受けているらしく、先日は歌人の穂村弘とのイベントも開催していた。


尾崎世界観

クリープハイプの尾崎世界観は、エビ中に「私立恵比寿中学の日常(Epilogue):蛍の光(Demo)」という曲を提供している。僕はこの曲を聴くと、暗闇の中で頼りなさげに灯る光が頭に浮かぶ。涙でにじんだように見える小さな光だ。各自何らかの方法で聴いてほしい。また自身のアルバムでも同曲を「蛍の光」としてセルフカバーしていた。


尾崎世界観は木下龍也の歌集「きみを嫌いな奴はクズだよ」の帯文を書いており、また「ユリイカ」の短歌特集にて木下龍也との短歌の共作が掲載されている。木下龍也は僕が短歌を始めるきっかけになった歌人である。


いま思い当たるのはこのぐらいだが、他にもあればTwitterなどで教えてほしい。


僕はアイドルの曲をよく聴くのだが、明るいポジティブな曲を聴くと短歌を作れなくなってしまう。宇野なずきの基本的な作風は明るいとは言い難く、自分と正反対のものを摂取することで作歌に影響が出てしまうのだ。明るい曲は好きだ。しかしこのようなジレンマがありタイミングを選ばなければならなかった。

だが、エビ中の曲を聴いても短歌を作れなくなるようなことはほとんどなかった。彼女たちの歌から感じられる、明るさの中にある憂いや、憂いの中に存在する明るさは、作歌に良いインスピレーションを与えてくれることさえある。先ほどのエビ中と短歌との繋がり以外に、彼女たち自身にも短歌との親和性があるのかもしれない。

曲の良さだけではなく、現在のエビ中のエモーショナルな歌い方や、これまで歩んできた道、彼女たちの成長を思って動く感情は、これからも僕の詠む短歌や僕自身に良い影響を及ぼしてくれるだろう。

最後に、令和に合わせて作った連作があるので置いておく。

私立恵比寿中学と短歌。どちらもこの新しい時代に響き渡る歌となることを願っている。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

13
僕だけがインターネットの亡霊で他のみんなは居酒屋にいる

この記事が入っているマガジン

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。