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ミノルタレンズ×エモい写真

「高画素機が当たり前になった今だからこそ、オールドレンズのススメ」

高画素のカメラに高画質のレンズをつけて、ほとんど外さないオートフォーカスを使って、何枚撮っても全てモデルの瞳にピントが合った写真を撮る…最近ではそんな事がもう当たり前になりました。でも、何か足りない。「そうじゃないんだよ、写真は」なんて思うフィルム世代も多いはず。

24枚撮りのフィルムを一コマ一コマ大切に、フィルムだけじゃなくて脳裏にも写すように撮って、なけなしのおこずかいを使って現像に出す。そんな写真たちはピントが合っていなくても、構図が少しずれていても、世界中で自分にしか見えない世界を撮ったような気持ちにさせてくれました。

ミラーレスのカメラが主流になった現代、いま持っているカメラでもう一度そんな写真を撮ってみたい。そんな人々のためにも、僕たちが三度の飯より好きなミノルタレンズで「エモい」写真を撮る事を提案したいと思います。


「エモい」写真とは

そもそもエモい写真ってなんだよ。なんて声が聞こえてきそうなのでまずエモい写真に共通するエレメントについて考えてみたいと思います。僕が思うエレメントの一つは「世界中で自分にしか見えない世界」を写す出すことだとです。じゃあエベレストの頂上とか、アリゾナのソノラ砂漠で写真を撮ればいいのかというと、そういう事でもない。難しいですね、エモさって。やっぱり日常感というか、誰もが一度は見たことがある景色や表情でないと、エモいという感情を抱くことは無いのです。人々の中で共有されたイメージでありながら、長いこと放っておいた感情を心臓の底からピアノ線で引っ張り出すような、少しの強引さも必要なのだろうと思います。

最新のカメラや高いレンズだけでは撮れない、その時にしか感じられない感情を写し取るのが「エモ写真」の難しさでもあり、素晴らしさでもあります。


「古いレンズ、なにが面白いの?」

「古いレンズ」と一言で言っても、ドイツで作られたライカMマウント用のカールツァイスから国産ニコンのFマウントまで、現行品に比べても強い個性を持つレンズたちがフィルム時代には製造されていました。その中でもミノルタのレンズは1958年から同社カメラの専用マウントとして設計され、1985年に現在でもソニーに引き継がれた通称「Aマウント」によってオートフォーカスの時代が来るまで「ミノルタMC」や「ミノルタMD」として多くの名玉を生み出してきました。

ミノルタMDやミノルタMCと呼ばれるレンズはマニュアルレンズの名の通り絞りもピントも手動で合わせる必要があります。標準レンズとして持ち運べるサイズ感ながら持ってみると少し金属の重みがあり、触っているだけで外に行って写真を撮りたくなるような気分にさせてくれます。後世に作られたレンズと違いマニュアルで撮ることを前提として作られたレンズだからこそのクリック感のある絞りリングもや、掴みやすくスムーズに回るフォーカスリングもとても使い勝手がよく、毎日使いたくなるようなレンズなのです。

ミノルタレンズは比較的流通量が多く、手頃な価格で手に入りやすいのも魅力の一つでしょう。カナダでふと入った骨董屋でショーケースに「Minolta MD 50mm F1.7」が一つ$10ドルという破格で売られているのを見つけたのがそもそも僕がミノルタレンズにハマるきっかけでした。店頭では良く状態がわからず、「まあ使えなかったら文鎮にでもなるだろう」と思って買ったのを覚えています。幸運にもガラス部分には傷ひとつなく、少し動きの悪かったフォーカスリングも数ヶ月経つ頃には自然とスムーズに回るようになりました。数ヶ月経った今でも一番持ち出すことの多いレンズの一つです。

(Takumi所有の35mm F2とFuji X-E1)


ミノルタレンズ×エモい写真

そんな魅力たっぷりのミノルタレンズでエモい写真を撮る。それが今回の本題です。「エモ写真」、特にエモいポートレートにまず必要なのはモデルのそのままの美しさを写すためのシャープさです。ミノルタレンズの一番基本的なレンズともいえる50mmF1.7などでさえ開放から驚くようなシャープさで、絞っていったF2.8以降だと80年代に作られたレンズとは思えないような解像度を見せてくれます。でもそれでいてわざとらしくない程度の柔らかさみたいなものもあり、「エモい」空気感をそのまま切り取るような画を自然に出してくれます。

シャープに写した被写体とは対照的に背景では上品さのあるボケで、全体的に画が崩れるような事はまずありません。色は控えめでありながら肌の色や髪の毛の微妙な階調までをも正確に切り取る、とにかくバランスの良い写りです。


写真を撮るという儀式

手動で操作するミノルタレンズは写真を撮ると決めてからシャッターを押すまですこしばかり時間がかかります。フォーカスピーキングのできるEVFの力を借りても人間の手でピントを合わせるには慎重さと忍耐が必要で、スピードではオートフォーカスに到底敵いません。作品に出したい雰囲気をイメージしながら絞りを調整し、シャッタースピードを合わせ、ピントを合わせる。いくら慣れても時間がかかる作業で、ピントが合っていない写真や露出がずれた写真もついたくさん撮ってしまいます。でもそんな偶然性のある撮影方法もとにかく楽しい。全てマニュアルでやるからこそすべて自分の思い通りの写真、いや、それ以上の作品が撮れた時の喜びはそれ以上のものがあります。被写体もいつもよりリラックスしたような表情で、少し日常感があってとにかくエモい写真…それが撮れてしまうのがミノルタの魅力なのです。いくら高い最新の機材があってもそれだけでは撮れない、自分にしか撮れない気がするような写真。そんな作品を撮るためにあえてミノルタのマニュアルレンズ と小さなミラーレスだけで勝負する。そんな写真の楽しみ方は他のどんなレンズよりも撮影した写真ひとつひとつに思い出が宿るのです。(Rei Ikeda)


Model: クリヤマユウリ (@neonlight_blue)

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