ここに来ることは運命だったと思える場所に、この先何度巡り合えるだろうか。
南足柄にある陶芸家、
梶原さんの自宅工房を訪ねて。
先程ですね、冷蔵庫の味噌と醤油、
そしてきな粉が大豆同窓会をしていました。
本当にたまったま。全員同じお母さんから出来たそうで。なんだかめでたい気分になりました。
調子に乗った醤油が、横の牛乳の肩に腕を回そうとした時。残り僅かな牛乳が、か細い声で
『あ、えっと…。私、豆乳じゃないです…』
申し訳なさそうに呟きました。
あれほど盛り上がっていた大豆同窓会。
同窓会というより、同母会。
冷蔵庫中が凍りつきました。
マザー・テレサ
マザー・ダイズ
惜しくも牛乳が寂しい思いをすることとなりましたが、出会うべくして出会った
味噌
醤油
きな粉
調味料トリオに乾杯です。
(あまりにも切なかったので牛乳は飲み干しました)
さて。出会うべくして出会う。
これは調味料に限りません。
この人には出会うべくして出会った。
この場所には来る運命だったんだろう。
人生でそう何度も感じる感覚ではないけれど、
“その瞬間”には間違いなく感じる感覚。言葉にできない、というより容易い言葉で表現できないししたくない気持ち。
◯陶芸家、梶原さんとの出会い
陶芸家の梶原さんとの出会いは遡ること3カ月前。8月の酷暑の日、小学生の皆さん40人と一緒におむすびを握るワークショップを行った際のことでした。
私のおむすびワークショップでお腹を満たした小学生の皆さん。午後のお楽しみとして梶原さんによる陶芸体験があったのです。その際、私のおむすび握り体験にも参加してくださった梶原さん。
油性マジックで名前の書かれたテープを胸元に付けていらした梶原さん。最初はどなたかのお父さんなのか、はたまた紛れ込んでしまったどなたなのか...。分かりませんでした。(失礼極まりない)
「お塩を手につけてくださいねー!」
「こんな風に優しく丸めますー!」
“おむすび小娘”改め、初めての“おむすび先生”に緊張しつつも楽しんでいた私は、レクチャーを交えながらの説明に必死でした。そんなわけで、せっせとおむすびを握っていらっしゃる方がまさか繊細な手を持つ陶芸家の方とはつゆも知りもしませんでした。
○南足柄の地を訪れて感じた確かなご縁。
8月のワークショップ以降、時折やり取りを交わし。と言ってもほぼ私が一方的に工房にお伺いしたい旨を伝えていました。
そして、10月も終わりに差し掛かったある日のこと。小田原よりも少し先。ローカル線に揺られながら、私が向かった先は陶芸家の梶原さんご夫婦の自宅兼工房でした。
車窓から見える柿の木を眺め、山の中腹まで登ったところに梶原さんのご自宅兼工房はありました。
落ち着く縁側とお庭。“お邪魔します”と足を踏み入れると。美術を嗜む長男さんの織りなす油絵の具の香りが広がりました。
“あ、ここ絶対素敵な場所だ”
ピンと来るものがある空間でした。ご自宅では、奥さんの有紀さんも暖かく迎え入れてくださり一緒に珈琲をいただきました。
サイフフォン式で静かに注がれる珈琲。
酸味も苦味も程よい珈琲でした。珈琲をいただきながら、お互いがお互いの波長をゆっくりと確認するように会話を紡ぎました。
その後は、工房をゆっくりと見学させていただきました。
色の出し方や、使用する土は数週間かけて水分を分離すること。窯の温度が地球誕生時と大体同じ温度であること。少し壮大だけれど。陶芸をするということは、焼き物を作るということは地球を作ることなのかもしれませんね、と微笑む梶原さん。
本当にワクワクしっぱなしの時間でした。
あまりにも居心地が良くて。知らないことで溢れた世界にうっとりとして。間違いなくそう思っていた時。
『れいちゃんがここに来ることは決まっていたんだよ』
ふと有紀さんがそう仰いました。
スッと心に入ってくる言葉でした。
もちろん、スピリチュアルとか、そういうことじゃないと思います。ただ、空気感というか。出会うべくして出会った方達だな、ということは私にも分かりました。
おむすびと陶芸。まるで違うけれどどこか一点では交わる2つ。“手に想いが宿る”という共通点が結びつけてくれたのかもしれません。
梶原さんの工房、そしてご自宅の器は
全部笑っているな。そう感じる場所でした。
◯購入した器の性(さが)と料理の相性
自分のお金が喜ぶ使い方をしよう、私は常々そう思っています。そのため、本当にお金を使いたいと思った時にお財布を開くように心がけています。
梶原さんの工房にお邪魔する際、もし、心が“これだ”と思う器があったら是非購入したいなとは思っていました。無理に、ではなく心が動いたら。これも“ピンとくる感覚”です。
床一面に並べられたいくつかの器に惹かれた私。
そんな時こそ、本当にお気に入りの1枚を。じっと器を見つめた先に、私が選んだのは半月のような形をした器。同じ形のものは2枚ありましたが、斑点模様が味を出していた方を選びました。
汎用性があり、どんなお料理ともきっと相性が良さそうな器の性。でもだからこそ、本当に似合うお料理を乗せて味わいたい。そんな衝動に駆られました。
一歩一歩踏みしめて登った山を下山した麓の直売所で購入した秋野菜。隼人瓜の漬物を載せてみました。
うん、合う。
そして、沢山の思い出が蘇る美味しさでした。
ここに来ることは決まっていたんだね
ご縁があることは分かっていたよ。
何か不思議な、それでいて温かいご縁。
有紀さんの一言にくすぐったさと嬉しさを感じ。そして確かに感じたご縁。人生で数度ある巡り合うべき運命だったのだと思います。ついつい嬉しくて。文章にしたためてしまいました。
前置きのダイズの話なんか忘れてください。
大事なのはそこじゃないのです。
ダイジなのはダイズじゃないのです。
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