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瑠璃の部屋56

玄関のドアの下に蜘蛛が巣を張っている。小さな囮をくっつけてある入念さである。前に住んでいたところでは、玄関を開けると「お邪魔します」とばかりに入ってきて、ご退出願うのに苦労したので巣は壊していたが、ここの蜘蛛は礼儀をわきまえているようなので、そのままにしてある。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を借りた。映画「ブレードランナー」の元にあたる。映画は面白かった。人と見分けのつかないアンドロイドが、業務全般をまかなう中、脱走したアンドロイドを処分する仕事人をハリソンフォードが演じる。内容もさることながら、音楽が良い。ヴァンゲリス(炎のランナーも彼)の疾走感溢れる曲。その美しい旋律の中、果てしなく続くかのような荒野の中の道を車が疾走していくシーンで終わり。そこに、あの音楽が。いやぁ、これぞ完成された世界観。もう「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」なんて、題名で人を釣っておいて、内容は単なるアンドロイドアンチテーゼでしょ。読まなかったよ。

でも、新着コーナーにも目ぼしい本がないし、テーマコーナーは就職だし。そこで、妥協して借りたのが「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」という、題名だけで読む気を喪失するような。おや?と思ったのは、検索機を見たら千葉の全図書館に在庫があったことと、貸出中のものもあったこと。

水濡れの跡があったので、借りる時に「水跡あり」のシールを張ってもらった。

初めの数ページで(あ!掘り出し物かも)。
映画とは大きく違う。主人公は結婚していて、朝、出勤前の夫婦喧嘩から始まる。朝の起こし方に始まりテレビをつけるかで口論。なんと、感情をコントロールするコンソールがあって。睡眠、目覚めの感情等も自己設定できる。仕事に行きたくなる、夫が選ぶテレビのチャンネルに従いたくなる、空虚感を味わう。様々な感情を番号を合わせるだけで自己コントロールできる。
で、題名の電気羊だが、これは、既にペットが希少で手に入りづらくなっているのだ。主人公は電気羊を飼っている。餌をやったり、本物と同じように反応するようにできていて、制御盤を見せないと電気羊とは分からない。この世界では本物のペットを飼えることがステータスなのである。そこで、本物の羊を買うための資金づくりに脱走アンドロイドに掛けられた懸賞金を取りに行くのだ。

ところで、ベネディクト・カンバーバッチ演じる「シャーロック」で、Michellelという書き残しの謎を解く話のMichelleは、ブレードランナーに出てくる秘書の名から来ているのではないかと推測していたが、ビートルズの歌の題名にもなってた。どっちでもいいや。そのままにしとこ。