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カメラ雑誌『CAPA』1月号に写真が掲載されました。

12月20日発売の雑誌『CAPA』に私の写真が掲載されました。
それを記念に2年振りにnoteを書いてみました。

カメラに興味の無い人は見たことも、聞いたこともない雑誌かもしれませんが、40年以上カメラ好きに愛され続けているカメラ専門誌です。

私が所属している日本スポーツ写真協会が2020年から「アスリートの肖像」「LOVE SPORTS!」という連載をしてきましたが、この1月号から「SPORTS GRAPHICS」という新連載に変わり、その一発目に私の写真が抜擢されました。

事前に協会内で候補写真を募集しているので、これまでも何枚か送っていたのですが、今回ようやく選ばれることができました。まだ学生だった頃、CAPA誌面で行なっているフォトコンテストにも何度も応募し、何度も落選して、最終的に一席をいただけたことを懐かしく思います。CAPAに載るのはそれ以来です。

フォトコンテストに入選したり、はじめて自分の撮った写真が新聞に使われたころは、自分の写真が使われることが嬉しかったのですが、今となってはそのような感情は薄れ、写真の管理、販売を委託していることもあり、使われたことを把握していないこともしばしば…。しかし、今回の掲載は素直に嬉しく、黙々と機械的に写真を撮っていた自分に、初心に立ち返り、写真を撮る喜びを思い出させられた気がします。

実際に掲載の連絡をいただいたのは12月に入ってから。ちょうど私がハンガリーに出発する前日。作品解説を100字程度で、ということでササっと書いてギュギュっと詰めこんで原稿を送ったのですが、普段は写真について語ることはないので、収まりきらなかった背景をここに書いていきたいと思います。

サムネイルにも使った写真はCAPAに掲載された写真とは別の写真です。実際に掲載されたのは女子アイスホッケー世界選手権『決勝』カナダ対アメリカの写真。こちらの写真はグループ予選日本対カナダの試合で撮影しました。世界選手権には渡航困難期間を除いて毎年行っているのですが、基本的に開催国以外の試合には観客はほとんど入りません。会場となったカナダ・ブランプトンCAA Centerの観客席は5000席。日本戦で1番観客の少なかった試合は568人。(おそらく地元の子供達が招待されています)  こういった試合では観客席を入れた写真を撮っても絵になりません。他にもアリーナの形状や大きさによって絵になったり、ならなかったりします。下のFacebookの1枚目の写真は前回大会(デンマーク開催)で撮影した写真です。(デンマークとの対戦はありませんでした)

【女子代表 世界選手権】 第4戦 2022年8月29日 女子フィンランド代表🇫🇮 9 - 3 🇯🇵女子日本代表 1P 2 - 1 2P 4 - 1 3P 3 - 1 ■日本の得点 ① 13:25 G:11...

Posted by 日本アイスホッケー連盟 (Japan Ice Hockey Federation) on Monday, August 29, 2022

今回の大会の会場は事前にネットの画像検索で調べた時点で良さそうな会場だったし、ホッケー大国カナダ開催ということで期待せずにはいられませんでした。ちなみに日本代表がカナダでカナダ代表と対戦したのは23年振りのことでした。この試合の入場者数は3755人。また余談ですが、日本代表が苫小牧で五輪出場を決めた試合の観客は3111人でした。

日本対カナダの試合では「大観衆の中で試合ができて楽しかった」と言っていた選手もいましたが、よーく見ると結構空席があります。この写真は日本アイスホッケー連盟の各種SNSに掲載され、チームフォトグラファーとしては十分な仕事をしたのではないかと思います。しかし写真の出来としては、やはり『満員』の写真の方がいいです。ということで、決勝戦でも同じ場所から撮影に臨むことにしました。

Canon EOS R3 EF15mm F2.8 フィッシュアイ 1/200秒  絞りF4  ISO1250

決勝の話の前に、技術的な話をしていきます。上の写真は日本対カナダの前日、カナダ対チェコ戦で撮影した写真をRAWからJPEGに変換しただけのデータです。私は普段99.9%JPEGで撮影しています。この論争はここではしませんが、試合のインターバル中にも写真を伝送したり、極端に露出をレタッチすることもないので、JPEGで撮影をしています。しかし、今回の全景写真はRAWで撮影をしました。この写真のように観客席と、アイスリンクの明るさは人の見た目以上に差があります。最近のデジカメには逆光時などに露出差を補正してくれる機能がついているのですが、それでもJPEG一発撮りではイメージ通りの明るさにはなりません。なので試合中にRAW-JPEGを切り替えることはほとんどないのですが、事前に「客席を入れて撮ろう」と決めているときは設定をRAWに変更しています。

Adobe Lightroomで『自動』補正後 (レンズ補正で画角が変わっています)

実際に私がレタッチするなら、これでもまだ暗いのでシャドウ部を上げていくと思います。ハイライトも下げすぎなので上げていきます。こういった撮影をする際は、基本的にハイライトが白飛びしないギリギリに露出を合わせて、あとからシャドウ部を持ち上げます。逆にシャドウ部に露出を合わてしまうと、リンクの白い部分が白飛びしてしまいRAWでも救出することはできません。(画面のスクリーンショットで見づらいですが、黒潰れはしていません)  その他、手動で補正を行った写真が各種SNS、そして今回のCAPAのように日の目を浴びることになります。

CAPAに掲載の写真と同じ現象処理をしました。いずれもマスクは使っていません。

日本対カナダの前日にロケハンを兼ねて撮影したこの写真は、一番後ろの客席と壁の間から撮影をしています。しかし、ちょうど真ん中には柱があり、客席一席分ズレた場所から撮影しました。写真中央上部の支柱が斜めになっているのがわかるかと思います。これには納得がいかなかったので、翌日の日本戦(もちろん決勝戦も)ではド真ん中になるように工夫をして撮影をしました。また撮影の設定も変更していますので、ぜひCAPAの誌面で見比べてみてください。

【2023IIHF女子世界選手権】 2023年4月8日 日本🇯🇵 0 - 5 🇨🇦カナダ 1P 0 - 2 2P 0 - 2 3P 0 - 1 ■GK 20増原海夕 28:48 31 川口莉子...

Posted by 日本アイスホッケー連盟 (Japan Ice Hockey Federation) on Saturday, April 8, 2023

クランプでカメラを設置することができればリモコンで写真が撮れたのですが、今回は設置できるところがなく、実際にその場に立って撮影するしかありませんでした。この場所にいる間は、試合中に他の写真を撮影することは難しいです。そのため、日本代表の試合では、選手入場後に両チームが整列したところで撮影を済ませ、その後は階段を駆け降りて最前列のフォトポジションに向かいました。

女子アイスホッケー世界選手権 決勝 カナダ vs アメリカ

そして決勝戦。地元カナダと最大のライバル・アメリカが順当に勝ち上がり、今大会最多4635人の観客が集まりました。最前列で試合の写真を撮影したいというジレンマを抑えながら観客席最上段に登り、この日は試合前に整列しているところを撮影するだけではなく、カナダ代表がゴールを決めて会場全体が最高潮になるまでこの場所を動かないと心に決めて撮影に臨みました。もちろんいつゴールが入るかは分からないし、最悪1点も決まらない可能性だってあるのです。しかしこの日は運が味方をしてくれました。試合開始6分、アメリカの連続反則でカナダが最大95秒間5人対3人で戦えるチャンスを迎えました。この時点で撮影準備は万端でカメラを構えると、試合再開からわずか14秒、あっさりと先制ゴールが決まりました。その瞬間、観客は総立ちになり・・・、あとはシャッターを押し込むだけでした。

惜しかったのは向かって正面が記者専用席になっていて客席が無かったことと、カナダ代表がホワイトジャージを着ていて目立たないので、レッドジャージだったら最高でした。(各代表はHOMEチームがライトカラーのことが多いです)

普段はこんなストーリーのある写真を撮影すことはほとんどなく、ただただ目の前の被写体を追いかけています。それが悪いというわけではなく、むしろ仕事としてはものすごく大事なので、これからも我武者羅に追い続けていきます。ただもう少し余裕を持って、遊び心を大切にして撮影していきたいです。スポーツ誌(紙)にはこういった趣向の写真が使われることは少なく、逆にスポーツ誌以外にスポーツの写真、ことさらアイスホッケーの写真が載る機会も限られています。CAPAがこのような場所を提供してくれることは本当にありがたいことです。

会場全体の写真は正直にいうと、ありきたりな写真で物珍しい写真ではないです。他の大会や他のスポーツでも多くの人が撮影してきたので、目にしたことがあると思います。逆に言えばそこまで難しい撮影ではないので一般の観客でも条件さえ揃えば撮影自体はできてしまいます。

2023年3月30日 ロサンゼルス・エンゼルス 対 オークランド・アスレチックス

カナダでの世界選手権の直前、タイミングがドンピシャだったので、アメリカに一度入国しメジャーリーグの開幕戦を一般客で入場して見てきました。もちろんマウンドに立っているのは大谷翔平投手です。こちらは魚眼レンズではなくCanon RF16mm F2.8 STMで撮影したので、最近のスマホであればさらに広く撮れるはずです。この試合は全席指定席になっており、ネットで購入の際に自分で座席を選ぶことができるので、三階席の最前列中央を選びました。要するに、撮影ポジションと最低限の広角レンズ(スマホ可)さえあれば、このような絵にはなります。あとは観客の雰囲気が重要なのですが、大谷翔平選手が投げるメジャー開幕戦にも拘らず、アスレチックスが不人気球団のため、客入りは5割程度でした…。そう考えると先ほどのアイスホッケーの写真も、私の目の前にいた観客は私と似たような写真を撮っていたかもしれません。

というわけで、ここまで一枚の写真から長々と書いてきましたが、私の写真に少しでも興味を持っていただけた方は、私のインスタグラムアカウント、ではなく、日本アイスホッケー連盟の公式アカウントをフォローしていただければと思います。クレジットが入っていないことが多いですが、ほとんど私の撮った写真で構成されています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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