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【昨夜のカレー、朝のパン】猛暑に疲れた頭に、お勧めの一冊。くすっと笑って、ほろりと泣ける。生きることはこういうことだと腑に落ちる。


猛暑に疲れてしまったら、短編の小説がお勧め。

「昨夜のカレー、明日のパン」(河出文庫)は、9つの短編が連なって、一つの物語になっている。
主な登場人物は、テツコさんと、テツコさんの夫の父親(義父=ギフ)の2人で、この2人を取り巻く人物が一つひとつの短編に登場する。

この作品は読んでいるうちに、ぼぉーとしていた頭の中に、爽やかで、温かく、どこか懐かしい生活の感じが浮かんでくる。

2人の生活に漂よっている空気感が伝わってくる。

暮らすって、こういうことなんだと感じる。

物語が進むにつれて、その暮らしの基盤にあるもの、背景にあるものが見えてきて、生きていくとはこういうことだと腑に落ちる。

夫の一樹を病で亡くした後、ギフと2人で暮らしているテツコさんの心の動きが細やかに描かれていて、時折、涙してしまう。

私は、汗を拭うふりをして、ハンカチで涙を抑えた。

自分の生活を振り返って、テツコさんのように丁寧に暮らしているかなぁと考えた。
他人とどう向き合っているかなぁ、と考えてみた。

さらりと読めるけれど、結構、深いテーマを描いている作品だと思う。


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