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美しいものと、毒のあるもの。ショーン・タンの世界展 ちひろ美術館・東京

ある読書会にて、文書が書かれていない本を持ってきた参加者がありました。
登場人物や風景など描かれている絵を見ながら、頁をめくっていくと、ストーリーが分かる本。こう書くと、「絵だけなんて、小さな子供でも分かるような単純なストーリーなんでしょ」と思われるかもしれませんが、その本で描かれていたのは「移民」の物語です。

本のタイトルは「アライバル」
オーストラリアの作家、ショーン・タンの作品です。

故郷の国から、風習も文化も言葉も異なる国へ向かう男。
慣れない土地で、初めて見る生きものに出会い、異国で暮らす人と出会っていく様子がきめ細かく描かれています。
男、妻、娘など登場人物の表情や、ちょっとしたしぐさから、感情を読み取ることができます。ストーリーの流れも分かります。
「生きる」「家族」「故郷」「国」「文化」など、現代の社会にも通じる課題や背景を考えさせられます。描かれている世界は美しいです。

一方、最新作「セミ」は、ヤバいです。
ブラックな雰囲気が漂います。
最初は、「セミ」=「日本のサラリーマン」「社畜」のように思っていましたが、終盤に来て、ばっさりやられます。
「セミ」が「人」を、鋭い視線で、見ています。
しっかりと毒が盛られている作品で、それが終盤で、読者に効いてきます。


いわさきちひろ美術館・東京で「ショーン・タンの世界展」が開催中です。
「アライバル」をはじめ、代表作の原画や、制作の工程が分かるものも掲載されていて、面白かったです。




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