日々の音

大人のための絵のない絵本「日々の音」を書いています。 美しいものと美味しいものと猫と旅…

日々の音

大人のための絵のない絵本「日々の音」を書いています。 美しいものと美味しいものと猫と旅がすき。ここは「オトノコトノハ」を綴る場所。https://www.reikobefree.jp

最近の記事

紫陽花ばかりが目に止まるので、アジサイは好きですけれど、うつり気なんです。

    • わたしと父と

      先日、蜷川実花さんの写真展に行ってきました。 蜷川実花展 ー虚構と現実の間にー 圧倒的な色彩と儚さと美しさの洪水に 溺れそうになりながら。 「桜」SAKURA の部屋も 「永遠の花」Everlasting Flowersも 無音の映像作品「Tokyo 道中」も あまたの顔を写した「写真のまなざし」も どれも素晴らしかったのだけど。 わたしをぼろぼろと鳴かせたのは 父である蜷川幸雄さんとの最後の間際を 切り取った 「うつくしい日々」。 どうあっても何が起ころうと

      • 遊びをせんとや 生まれけむ

        遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん 遊ぶ子供の声きけば 我が身さえこそ動がるれ 遊びをしようとしてこの世に生まれてきたのだろうか、 戯れをしようとして生まれてきたのだろうか、 一心に遊んでいる子どもの声を聞くと、 私の体まで自然に動き出してくることだよ。 梁塵秘抄の中でももっとも有名な今様ではないでしょうか。 年を重ねるにつれ、 色んなしがらみや、欲望や、思惑や、 そんなことに“遊び”が絡めとられていく。 いったい、いつから、 遊びを忘れてしまっ

        • 世界を見つめる解像度 -「祝福する力」-

          さて、先日書いたこちらの記事の続き 「(誰かにとっての)何気ない朝」を「(自分にとっての)特別なワンシーン」に切り取って描写するためには、3種類の力が必要 ひとつめ 「知る力」絶対的な知識量 ふたつめ 「紐づけて使う力」情報に関連性を持たせどこで使うか みっつめ 「祝福する力」この世界を見る視線 みっつめ「祝福する力」について。 世阿弥の残した言葉に、 「花と面白きと珍しきと、これ三つは同じ心なり」 とあります。 「珍しき」も私たちが日常で使う「珍しい」とは違

        紫陽花ばかりが目に止まるので、アジサイは好きですけれど、うつり気なんです。

          父の本棚

          休みの日に、 築100年になろうかという実家で ぼけぼけと、 朝ベランダからピーヒョロヒョロと 昼ケロケロと庭先で 夜には枕元の灯りでちろちろりんりんと 鳥や蛙や秋の虫の歌声を聴いておりました。 父は元編集者で、母は元出版社のタイピストだったからか、子どもの頃からゲームの代わりに本を与えられて育ったわたし。 父の本棚には、彼の若かりし頃の時間がそこにあるような気がして、なんだか、例えようもない気持ちになりました。 あまり若い頃の話をしない彼のかわりに、 多くの時を

          父の本棚

          五感の記録とわたしの記憶

          I shut my eyes in order to see. - Paul Gauguin - 私は観るために目をつぶります 『Dine in the Dark Bangkok』 Switch off the light , Switch on your senses. https://www.dineinthedarkbangkok.com/ 先日、こちらでお食事をしてきました。 携帯電話、カメラなど、光を放つものは持ち込めないので写真は上記サイトからお借りしてます。

          五感の記録とわたしの記憶

          『狂気と情熱の画家』とわたしの行方

          美術展に行きその絵を前にすると、 しばし動けなくなるさせる画家がいる。 Vincent Willem van Gogh フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ フィンセント・ヴァン・ゴッホ(1853年3月30日-1890年7月29日)はオランダの画家。後期印象派運動の中心人物。西洋美術史において最も有名で影響力のある芸術家の1人。近代美術の創設者とみなされており、20世紀初頭に出現した前衛芸術家たちに大きな影響を与えた。 わずか10年の創作期間のうちに約210

          『狂気と情熱の画家』とわたしの行方

          炎節

          古い街が好きで、 カンボジアやタイや京都や、そんなところへ行くのだが、決まってそこはどうしようもないくらい暑い。 眩暈のするくらいの暑さの中に、 そこに住まう人の逞しさがあるように思えて、 「ああもう耐えられない」 とか思いつつも、繰り返し出かけてしまう。 カラリとした暑さもよいのだが、あのまとわりつくような熱さに、そして時折吹く風の気持ちよさに、 いっときの後悔も忘れて、 また、会いにいく。 早朝のバンコクにて #炎節 #旅する日本語 #バンコクにて #コラム

          世界を見つめる解像度

          【解像度】かいぞうど どのくらい細かい部分まで記録・再生できるかの能力を示す値。音声でも、映像でも、信号の質を測る極めて重要な尺度。記録できる周波数のレンジ(幅)が広ければ広いほど、解像度が高くなる。 先日知人から、面白いことを言われた。 わたしは、解像度が高い、のだそうだ。 理由を尋ねると、たらればさんのツイート https://twitter.com/tarareba722/status/1038005184863989761?s=21 これを目にしてわたしを思

          世界を見つめる解像度

          礼遇

          旅に出て、 何が好きかと言えば、 そこに住まう人と話をすること。 朝早く、同行人が起きだすまで、 ホテル近くの浜辺などをあてもなく散歩する。 同じように早起きの、 わたしが旅をしている間だけの、ご近所さん。 お財布も持たず、カメラだけ持って歩いているだけなのだが、珈琲や煙草をご馳走になる。 なぜそんなことをしてくれるの?と聞くと、 もっとここを好きになって欲しいから、と。 行ったことのない日本の話を聞かせて欲しいから、と。 そうしてもてなされたことは、一度や二度では

          父と冷蔵庫と

          忘れられないうしろ姿がある。 もう、20年くらい前ーー 実家を出ることを決めた 反対されることは分かっていたので、 勝手に部屋を決めて報告した。 案の定、父は大反対をして、 引っ越す前の週まで、あーだこーだ、言っていたのだが。 何をどう吹っ切ったのか、 「引越しは、父さんがやるから」と。 家から持ち出すものは、そんなに無くて、なんとかなるだろうと思っていたのだが、友人からもらった小さな洗濯機があった。 引越し先の古い二階建てのアパートは、 無論エレベーターなど無

          父と冷蔵庫と

          恋草

          恋をするということは、 気まぐれな6月の空模様のように。 目まぐるしく晴れたり曇ったり、 時に嵐になったかと思えば、 思いがけず空の彼方の虹に出会う。 恋をするということは、 深夜の遊園地のように。 キラキラしたメリーゴーランドに乗ったり、 親密な観覧車のようでもあり、 揺さぶられるジェットコースターのように。 恋をするということは、 辞書を読むように。 知らないはじめての想い、 馴れ親しんだ気持ち、 はたまた躊躇して、 時に毒々しい真っ黒な塊に囚われて。

          ジョナサンと呼ばれたわたし

          そう言えば、高校生のころに 夏休みの宿題で書いた読書感想文が、 全国コンクールへ出すために校内で選ばれたことがある。 読んだのは「カモメのジョナサン」 なぜそれを選んだのかは、 ちっとも覚えていないのだが。 おそらく母に勧められたのだろう。 母は若い頃、神田の出版社でタイピストをしていて、小学生のわたしに、 サガンやブラームスやジェーンエアを読みなさいと、自分の本をくれるような人。 父は、論文の編集者だったので、 そんな父の勧める本は小難しくてちっとも食指が動かな

          ジョナサンと呼ばれたわたし

          雨音がさらっていく

          ある夏の日、 大好きな人と会った翌日 ベランダに出て 浅めに入れた珈琲を食もうと 締め切ったカーテンを開けようとした 少し前 ぱらりぱらりと 雨が落ち始めた音がする カーテンはそのままにして 飴色のソファに腰掛けて しゅわしゅわぽたぽたぼたぼた ザーザーと 次第に数を増していく音に耳をすます しばらくして すっかり冷めてしまった珈琲に しばし眠っていたことに気づく 鳩鼠色のカーテンを開けると すっかり雨は止んでいて 雨雲は彼の方へ流れている きっと今ご

          雨音がさらっていく

          はじめて、をはじめてみる

          少し前に一眼レフカメラを買って、 文字だけの説明書なんか苦手なわたしは、 ひたすら撮っている。 鞄に入れて、持ち歩いて、 何とは無しに撮る、撮る、撮る。 15年ぶりに、英会話を習いはじめた。 久しぶりすぎて、 日常から英語が消えたこともあって、 ほんとに初心者のレベルからやり直しをしている。 そして、ひたすら 聞く、話す、作る。聞く、話す、作る。 の、繰り返し。 カメラも英会話も、ちっとも上達しないとは言え、 この「格闘」している感じがよい。 どうにもできな

          はじめて、をはじめてみる

          語感と五感と

          語感 ①その言葉から受ける感じ。言葉が与える印象。ニュアンス。 「 -の微妙な違い」 ②言葉に対する感覚。言葉の細かい用法・意味の違いなどを区別する感覚。 「 -が鋭い」 五感 目・耳・舌・鼻・皮膚を通して生じる五つの感覚。視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚。 また、人間の感覚の総称としてもいう。 「 -を鋭くする」 ー三省堂 大辞林ー 先日、知人が 「美しい」「美味しい」と言う言葉について、書いていた。 わたしは、「美しいもの」や「美味しいもの」が 好きなの

          語感と五感と