Monica Isakstuen”Vær snill med dyrene”(動物に優しくしなさい)

Monica Isakstuen”Vær snill med dyrene”(動物に優しくしなさい)を読みました。Brage賞受賞作です。Monica Isakstuenは詩人でもあり、そのことが読み取れる技巧に満ちた文章が魅力です。随所に散りばめられたショートセンテンスも効果的に使われていて、唸らされました。

母親という役割に縛られる苦しみを感じている女性が、自分と母親との関係性と、自分と娘との関係性を重ね合わせながら子どもをただかわいいと思うだけでなく、同時に嫌悪してしまう思いが赤裸々に描かれています。

現地では離婚小説と呼ばれていますが、夫と主人公の女性の間に具体的に何が起きたのかはあまり詳しく書かれていませんでした。恐らく日本人の関心はもう少しわかりやすい毒親や、モラハラ夫、家事を全くしない夫ではないかと思うので、内容的にちょっと日本で出す時は工夫のいる作品ですが、筆力のある作家で要注目です。

生きやすいと言われている国でも女性は役割という重圧に苦しんでいるのですね。日本はさらに女性が働きながら子育てしにくい国ですね。

『わが闘争』のクナウスゴールが編集を担当した最新作”Rase”(怒り)も読みましたが、こちらはさらに怒りまくります。

日本では女性が男性に少しずつ怒りを発露させることがタブーでなくなりつつありますが、さらに子どもにまで怒りを感じる気持ちを押し込めずに正直に描いていることに驚かされました。母親は子どもを愛すると同時に嫌悪してしまう心のメカニズムが働くことが心理学の説をまじえ描かれていることにも驚かされました。そしてそのことを書いていいのかと。母親は聖母のように子どものことをなんでも許さなくてはいけないという幻想や社会からの期待があるような気がします。

私達がいかに穏やかで優しくなくてはいけない、今の社会規範に疑問を呈さずに従順でなくてはならないと怒りを心の奥にしまって自分をおしこめて生きているのか、はっとさせられる本です。

続編は前作の後日談なので、まずは日本ではBrage賞をとった”Vær snill med dyrene”(動物に優しくしなさい)を紹介するのがよいのではないかと思います。ぜひ訳したいです。



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