「死は人のつながりに何をもたらすか」Re.ing初のトークイベントレポート

Re.ingは、「パートナーシップのあり方を問い直す」というコンセプトを掲げ、多様な関係性からインスピレーションを受けた指輪を発表している、プロジェクトです。

2018年4月に、第一弾の指輪として
<性をこえてつなぐ>
すべてのカップルのためのマリッジリング「LITTLE RAINBOW」
<生死をこえてつなぐ>
遺骨や髪の毛でつくるダイヤモンドリング「Dearmond」
をクラウドファンディングで発表しました。

7月1日(日)に、Dearmondのリターンイベントを開催。
フォトジャーナリストの安田菜津紀さんをお招きし
普段なかなか向き合うことのできない「死」と人とのつながりというテーマで、トークセッションを行いました。

人の死、特に大切な人の死ってなかなか受け入れ辛く、日常的に想像することさえ避けてしまうことですよね。しかし今回、安田さん、白木、高木を中心に集まっていただいた皆さんと共有したのは、

「死を見つめることで、私たちは今をどう生きていくことができるのか」

という、前向きな視点でのお話でした。

<登壇者プロフィール>

白木夏子起業家。世界の宝石鉱山労働者や、職人とともにジュエリーを制作するなど、ビジネスの視点で日本における、エシカル消費文化の普及につとめている。
高木新平「20世紀をぶち壊す」というVISIONを掲げ、社会課題からストーリーを組み立てることで、新しい形のブランディングを実践。“ 普通 ”や“固定概念 ”を、クリエイティブ・プロダクト・サービスを通して打ち破っている。
安田菜津紀1987年神奈川県生まれ。studio AFTERMODE所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。


大切な人の死がくれた、
最後の贈り物

今回、安田さんは「死は人のつながりに何をもたらすか」というテーマで、主にご自身の身近な方との別れの経験、東日本大震災について、紛争地域についてをお話してくださりました。その中で、とても印象深かったことが「私たちは皆、見えない死者に生かされている」という言葉。

安田さんご自身は、高校生の時にお父様とお兄さんを失った経験があり、それがきっかけでカンボジアに渡ろうと決意し、今のフォトジャーナリストという職につく機会となったそうです。

その時に感じた悲しみは、もちろんとても辛いものだったけれど、自分がフォトジャーナリストという職業に出会うきっかけの一つになったことで、

「その経験は、父と兄がくれた最後の贈り物、宝箱のようなものだったんじゃないかと思えるようになった。その宝箱に、今ではたくさんの人が宝物を詰めてくれているのだと思っている。」

と。

大切な人とのお別れは、時に「早く忘れてしまった方がいい」「早く立ち直らないと」と思ってしまったり、周りからそのように声をかけられることもあるかと思います。

ですが、安田さんのお話を聞いた時、もう会うことができなくても、身体は離れ離れになってしまっても、その存在に自分の人生を生かされているんだと思うと心強く感じられたり、心は一緒に生きていくということができるのでは、と思うことができました。


死を見つめることで、生き方が変わる

また、お写真を見ながらお話ししてくださったのは、安田さんが取材されていた、ある男女のパートナーの死との向き合い方。女性が病気を患われており、亡くなった時も、パートナーの男性は「最後まで一緒にいた証を撮ってください」と言ってくださり、安田さんは撮り続けられたそう。

そのお二人は、本当は病気で身体がきつい時は、介護用のベッドを入れた方が楽だったりするところを、“2人で一緒に寝れなくなっちゃうから”と、何とか普通のベッドに安全なように柵をつくったりして工夫をされていて。最期まで「自分らしく、どう最後を迎えられるか」ということを考えられて、2人で生活をしていたんだということが、お写真からひしと感じられました。

確かに、病と闘う2人の生活は決して楽しいことばかりではなかったのかもしれませんが、亡くなった日のお写真でさえ、その1枚からは彼の温かさが感じられました。

安田さんは、その時の想いを

「その彼は、「悲しい」とか「会いたい」とは言うのですが、後悔を絶対に口にしないんです。それはきっと、彼の中で彼女と最期まで、しっかり向き合ってきたということがあったからだと思っているのですが、どうしても日本で死ということは、タブー視されてしまう傾向があるのかなと。縁起でもないということで、コミュニケーションを避けてしまう。でも、死を見つめて、初めて生が輝くということもあると思うんですね。そのことを、2人が教えてくれたなと思っています。」

とお話してくださりました。

白木は「亡くなることはもちろん悲しいんだけれども、そこに介在している温かい気持ちや、美しさが見える瞬間だったんですよね。」と。

このお写真とお話に、非常に心を打たれていた高木は、このように語りました。

「死って誰にでも経験があるものじゃないですか。日常的に起きているけど、どうしても隠そうとしてしまうのかなと。養老孟司さんも『人間の意識の外にあるものは、今の社会は隠すようにできている』と言っていたように、意識で説明できない現象なので、再現できないことだし、なぜこれが起きるのかということを見ちゃうと社会が成り立たなくなるという意味だったのですが、そういうことを考える機会が失われているが故に、今この瞬間も誰かが死に向き合っているということが想像できなくなってしまうと思うんですよね。今、写真を見せていただいて、こういう死との向き合い方もあるんだなと、すごく発見がありました。僕もこうありたいなと思えましたし、そう思うこと自体に機会が足りていないのだなって感じました。自分の中で、今日とても触発されていることに驚いているのですが、それはやっぱり向き合う機会が普段なかったからだからだと思います。」

また参加されている方の多くが、深く共感されていたのは、安田さんの

「大切な人を亡くした時って、少なからず「ああすればよかった、こうすればよかった」って出てくると思うんです。もし今、失った大切な人を目の前にしたら、本当はありがとうと伝えたいはずなのに、「あの時、優しくできなくてごめん」とか「守ってあげられなくてごめん」って言いたくなってしまうのかなと。だからこそ、もし今もう一度会えたらと考えなくていいくらいに、毎日目の前の人をちゃんと愛そうとか、大切にしたいなって。やはり死を意識すると、生への意識が変わるなと思うんです。」

という言葉。失う前に、私たちが大事な人との関係性に気づき後悔のないように生きること。そしてたとえ失ってしまったとしても、その存在の大切さは変わってしまうものではないから、一緒に生きていくことができるんだよ、そう言ってもらえているような気持ちになりました。


想像力が、人の心を動かす

また、安田さんは国内外を問わず、紛争地域や被災地などの現状を、写真を通して世界に伝え支援活動も積極的にされています。そこで、長く撮り続けられ、復興支援にも深く携わられている東日本大震災の時のお写真や、被災地に関することもお話しくださったのですが、中でも印象的だったのが、「苦しみの経験が、世界とのつながりを生む」というお話。

3.11の直後に、気仙高原に足を運ばれた安田さん。被災地のおばあちゃんたちが、自分たちが非常に大変な時だったのに安田さんの職業を知った時、かけてくれた言葉が「海外のこと、教えてちょうだい。」ということだったそう。震災直後の大変な時に、「どうして?」と聞くと、「自分が家を失って初めて、ずっと遠かった紛争や遠い国での出来事が、急に身近に感じたんだ。」ということだったと。その時に、仮設住宅で「シリアの子どもたちが大変でね。」というお話すると、おばあちゃんたちが突然、使わなくなった孫や子供たちの洋服を、いっぱいに集めてくれたんだそうです。

その時に中心になって動いてくれたおばあちゃんは80歳を超えていて、3回目の避難生活だったそうで。1回目は陸前高田で空襲があった際に不発弾が見つかり、その時に。2回目はチリ地震による津波の影響、そして3回目が3.11。でも、「いくら家を追われても、国を追われるという経験まではしたことがなかったから。」と仰っていたと。

安田さんはこの経験を経て、

「身近な人がある日突然いなくなってしまう、とか家がなくなってしまうという苦しい経験が、遠い誰かのことを想う共感のピースになって国境を超えることがあるんだと思いました。」

とお話してくださいました。

これに対して、インドのアウトカーストの方々と2ヶ月寝食をともにした経験がある白木は、

「私は、鉱山労働者の方々との出会いで児童労働や過酷な環境で働く方々のことを知ったんですけれども、そういった経験をすることで“その人たちのために”というよりも、そういった現状が世界には起きているから、じゃあ自分はビジネスをやる時、その人たちのことを忘れずに、どういうことができるだろうか、とか、何かが起きた時に、どう力になれるだろうかって想像ができるようになるのかなと思うんですね。」

と。

辛く、悲しみが残る経験は心に与えるダメージが大きいからこそどうしても目を背けがちになってしまったりするのですが、そうした痛みを知ること、考えることで、人や世界とのつながりを、自分のこととして感じられるのだと思います。


参加者の方の想い

今回のイベントは、みなさんと想いや意見を共有できるように、円形になって、トークをさせていただいたのですが、高木の「どうですか?何か感じることや聞きたいことがあったら、教えていただきたいのですが。」という一言から、参加者の方々がその時の想いをシェアしてくださいました。例えば、最近お子さんが生まれたという男性は

「改めて、お写真を見ながら子供の存在を実感していました。先日、生まれたばかりなのですがお話を聞いている中で、やはり死の瞬間を考えると、生を考えられるなと思いました。」

また、向かいに座っていた男性は、

「あまり、身近な人の死に触れたことがないんです。だからこそ、誰かが亡くなった時の周りの反応をみて、どうしても怖いというものというイメージしかなかったのですが、見せていただいたお写真は、想像していなかった死との向き合い方だったので、全然自分の中にない視点だったなと思いました。すごく学ぶ部分が多かったなと。今まで感じたことのない、感情でした。次、死と向き合うことがいつになるかはわからないですが、その時には違った向き合い方ができるのかなと。」

とお話してくださいました。

また、

「前振りから、涙が出てしまいそうだったのですが。写真だけで、伝わってくるということがすごく大きかったですね。なんのテロップも説明もなしに、その空気が伝わってくるってすごいですよね。」
「自分の経験と、すごくリンクすることがあまりに多くて。今ちょっと喋れないなと。ということが、お話ししようとして初めてわかりました。私の場合は、母だったのですが幸せな時間だったなということを、思い出しました。話し始めると、すごくその気持ちがわかりました。」

というように、みなさんそれぞれの思いや感じ方をしてくださり、
身近な人ともなかなか話をする機会がないテーマでのトークセッションは
非常に濃い内容のものとなりました。この日は、東日本大震災の時のお写真や被災地に関すること、在宅医療で感じた人とのつながりについて、そしてご自身の海外での活動についてもお話いただき、非常に多くの考えや、視点を共有してくださる日となりました。

参加者の皆さんだけではなく、Re.ingのメンバーも一同、改めて人と人とのつながり、何を大切にして生きていきたいのか、など、多くの考えを巡らせる1日でした。

また、今回のリターンイベントは、Re.ingプロジェクトパートナーの、NagatachoGRIDの会場を使わせていただきました!とても素敵な空間で、ゲストの安田菜津紀さんも、参加者の皆さんも非常に喜んでくださいました!お手伝いいただいたご担当者の方、ありがとうございました。

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NagatachoGRIDにはガイアックスのオフィスを開放したシェアスペースがあります。Gaiax Community(無料メールニュース)に登録すると、無料でシェアスペース、電源、Wi-Fi、フリーコーヒーをお使い頂けます。ぜひご来館にあわせて登録、イベント前にご利用ください。
◎Gaiax Community http://gaiax.com/?ref=event_0701
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Re.ingでは、今後も「人とのつながり」や、これからの「パートナーシップ」について考えるイベントを開催していきます。

Writing
:Aska Otani @aska28d

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