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「僕らが出会えたのは奇跡で運命」結成15年目のジャルジャル、ふたりの関係性。


性別や戸籍・血縁関係に関わらない、さまざまなパートナーシップのかたちが注目されているいま。わかりやすい言葉にあてはめることはできなくても、お互いの信頼で成り立っている関係性はたくさんあります。

今回お話を伺ったのは、兄弟でも、友達でも夫婦でもないけれど、「お笑い」という共通の目指すものに向かって同じ方向を進む芸人・ジャルジャル。キャラ設定も毎回変わる上に、ボケとツッコミ、明確な役割分担がないまま、テンポよく進んでいくネタが印象的なふたりです。

お互いを尊重しながら、良好な関係を続ける秘訣はどこにあるのか? 聞いてみました。

ジャルジャル
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年4月にコンビ結成。
写真右:後藤淳平(ごとうじゅんぺい)
写真左:福徳秀介(ふくとくしゅうすけ)


時代を追うのではなく、
ジャルジャルらしさを極めて挑む「M-1」


ーーまずは「M-1」決勝進出、おめでとうございます!


(後藤)
ありがとうございます。次に向けて、ガッとネタの内容を吟味しているところです。

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ーージャルジャルは「M-1」出場皆勤賞ですよね。これだけTVに出ていて名も売れているのに、賞レースにこだわるコンビは珍しいのでは。ジャルジャルはネタで勝負! という気迫を感じます。

(福徳)
「キングオブコント」も毎回出ています。1回でも休んじゃうと、自分たちの気力が続かなくなっちゃう気がしていて。「優勝するまで出るぞ!」と、周囲に宣言しているんです。


ーーこの15年間で、お笑いのかたちも、どんどん変わってきていますよね。とくに最近は、コンプライアンスも厳しくなってきています。ネタ作りするうえで、意識はされますか?

(後藤)
僕らはバラエティが自由で楽しい時代を知らないから、厳しくなったという意識もあんまりないんですよね。

(福徳)
もともと、ふたりとも平和主義なんです。そういう意味では、たまたま時代と合っていてラッキーなのかなと。


ー前回M-1で披露された「ピンポンパンゲーム」は、「誰も傷つけない笑い」だと話題になりました。

(後藤)
それも、狙ってはいなかったんですよ。ネタを作るときにも、強くは意識していないです。結果的に、良いネタがうまれただけで。

(福徳)
基本的に、お笑いは人を傷つけるネタのほうが多いですからね。あまり意識せず、今年のネタも、今のジャルジャルらしいかどうかだけを考えるようにしています。時代を追うんじゃなくて、あくまで、自分たちの笑いに向き合う。そこは昔から一貫していますね。


「全然尖ってないですよ!」
周囲の意見も素直に取り込む柔軟な姿勢

ーー最近、Youtubeに毎日ネタ動画をアップされています。TVや劇場の活動だけでなく、新しいツールも柔軟に取り入れているんですね。

(後藤)
僕らの強みは、ネタのストックがたくさんあること。少し前までならDVD集にしていたけど、今はなかなか売り上げが厳しい時代。だったら、もっとたくさんの人にどんどんネタを見て欲しいんです。そう考えたとき「今なら、YouTubeだろう」と。マネージャーからの提案を受けて、すぐにやることにしました。


ーータダでネタを見せてしまうこと、抵抗なかったですか?

(福徳)
正直言うと、最初はありましたね。でも、時代の流れだから! と、前向きな気持ちで始めました。

(福徳)
今年から、ライブも男性客がグッと増えたんですよ。男女比1:9だったのが、4:6くらいになりました。完全にYouTube効果ですね。

(後藤)
劇場のアンケートでも「YouTubeでジャルジャルのネタを知って、はじめてひとりでお笑いを見にきました」っていう人がいるんです。ひとつのチャレンジで、ここまで客層が変わるんだと驚きました。

(福徳)
YouTubeのチャンネル視聴者、9割が男性なんです。数字になると、やっぱり驚きますね。ずっと女性ファンが多かったから、予想外でした。


ーーYouTubeの視聴者データをネタに活かしたりもしているんですか?

(後藤)
それがね、全然活かせないんですよ(笑)。

(福徳)
自分たちで新しいツールを使ってどんどんやっていけたらいいんですけど、本当になにもわからないんです。だから、そこは信頼できるスタッフさんに任せて、僕らは目の前のネタに向き合うのみ!

ジャルジャル公式チャンネル(出展:YouTube)
JARU JARU TOWERで公開されるのは「○○な奴」と題されるショートコントシリーズ8000本。JARU JARU TOWERは2039年11月8日に8000階に到達する予定。


ーー周囲を信頼して、新しい意見をどんどん取り入れるんですね。ジャルジャルは尖っているイメージが先行しているので、意外でした。

(福徳)
全然尖ってないですよ! 信頼できる人には素直です。提案もなんでも、受け入れます。芸歴は長いですけど、威張らないようにしようって思っていますね。結成10周年のとき、ふたりで金髪にしたのも、スタッフさんから言われてやったんです。


ーーそうだったんですね! 金髪のインパクトは、かなりのものでした。

(後藤)
僕ら、あんまりものを知らないからこそ、人の意見はしっかり聞くし、吸収率はいいですよ。気難しいと思われるのは嫌だし、後輩と接する時も気をつけています。

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プライベートに一切干渉しないからこそ気楽に続く、
ふたりの関係

ーー8000本以上のネタを持つジャルジャルですが、ネタが生まれるまではどういう流れなのでしょうか。

(福徳)
子作りみたいなもんです。ふたりきりの空間じゃないと、絶対作れない。マネージャーさんも作家さんも、ネタ作りの場には絶対に入れないです。ふたりで、とにかくネタのタネをどんどんつくる。100個くらいバーっとだして、その中からいけそうなのを10個くらい選んで、完成させていきます。

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ーー完全なる共同作業なんですね。「ネタを作っている方がえらい」と、コンビ間で上下関係ができてしまうパターンもあると聞きます。ジャルジャルは役割がカッチリ決まっていないからこそ、今の関係性が続いているのでしょうか?

(福徳)
たしかに、どっちかがネタを作っていたら今のバランスではいられなかったかもしれませんね。僕らは、お互いが出してきたネタに対してダメ出しはしません。「こいつが面白いっていうなら、まあそうなんだろうな」というスタンスですね。


ーー根底に、お互いの笑いに対してリスペクトがあるんですね。普段から、ふたりがフラットな関係でいられるために、工夫していることはありますか?

(福徳)
意識してないんですよね。僕らの関係って、本当に特殊で。ふたりが出会えたのも、奇跡に近いんですよ。運命的なものだから、参考にならないかもしれない。特別だし、天才過ぎて(笑)。

(後藤)
ただひとつ言えるのは、お互い、まったく干渉しないですね。楽屋の中でも、無理して世間話をすることもないです。「落ち込んでいるかな?」「声、かけておこうかな?」とか、気をつかったことが一回もない。だから、一緒にいて楽なんです。

(福徳)
お互いの家も近いし、オフの日に見かけることもあるんですけど、わざわざ声かけることはしないですね。「まあ、明日仕事で会うしいいか」っていう感じです。

(後藤)
完全にビジネスパートナーですね。プライベートで遊びに行くとかは、まったくないです。かといって、仲悪いわけでもないですよ。


高校時代からずっと一緒だからこそ、
細やかなニュアンスも共有できる


ーーもともと、高校時代の友人同士ですが「この人とお笑いをやりたい」という気持ちも、早くから芽生えていたんでしょうか。

(福徳)
高校生の頃から、笑いの感性がぴったり一緒なんですよ。僕らが高2のとき、ラグビー部で初めて女の子とコンパしたんです。後藤がいきなり「好きな力士は曙です」って自己紹介して、全員真顔になったんですけど、僕だけが爆笑。あとは高3のときに、クラス替え初日の自己紹介で「大阪府”は”吹田からきました、後藤です」って言ってたんです。普通だったら、大阪府”の”吹田でしょ? でも、後藤は”は”にこだわったらしくて。


ーー渾身の”は”だったんですね。

(福徳)
僕は違うクラスだったんですけど、あとから廊下で「”は”の感じがうまく伝わらなかったわ〜」って、後藤が悔しがってたんですよ。それを聞いて「絶対に”は”のがええやん!」って熱弁したのを覚えてますね。

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(後藤)
それ、ぜんぜん記憶にないわ。すごいなー。よく覚えてるなー。

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ーー一文字に込められた語感とかバランスが共有できる相手、稀有ですね。ジャルジャルのネタは、音ゲーのような絶妙なリズム感があります。「ピンポンパンゲーム」は、ほぼ台本なしだったとか。「M-1」の大舞台でアドリブできるなんて、すごい度胸と信頼関係だと思います。

(福徳)
細かい順番は、いつもの舞台でも決めていないですね。

(後藤)
僕らのネタ、ガチガチに練習するほうが難しいんですよ。字面で理解できるものではないから、台本も書けなくって(笑)。ふたりでずっと一緒にいて、意識が染み付いているからこそできるんです。

(福徳)
周囲にも、「ジャルジャル、めっちゃ練習してる」と思われるんですよね。「M-1」終了後、岡村さんがラジオで「めちゃイケの空き時間、ジャルジャルは5時間も楽屋にこもって練習してた」って話してくださったんですよ。でも、僕らは5時間楽屋にこもってTV見てただけ(笑)。

ーーネタの完成度はもちろんのこと、近しい人にそう思わせるくらい、普段から努力している真面目なふたりなんですね。

(福徳)
でも、それって欠点かもしれないんです。漫才って、その場に出てきてふたりが立ち話している設定だから。練習を想像させちゃ、ダメなんですよ。

ーー周囲にも、あまり努力を見せたくないタイプですか?

(後藤)
お偉い人には、アピールします! 移動の新幹線、僕らはまだ指定席なんだけど、やっぱりグリーン車乗りたいし。そこはサラリーマンの人事考課と一緒かもしれないですね(笑)。


「M-1」の結果がどうであれ、
ふたりでネタと向き合い続けるのみ

ーー年末の「M-1」の結果によって、コンビのキャリアも大きく変化すると思います。2019年のジャルジャル、どうやっていきたいですか?

(福徳)
結果がどうであれ、ネタを作ってやるのが基本ですね。まっすぐに、それをやり続けます。「めちゃイケ」が終わった時も、ショックではなかったんですよね。パーっと道がひらけた感覚でした。「ジャルジャル、今後なにしていこうか?」「ネタつくろう!」っていう気持ちでいっぱいで。

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(後藤)
忙しい時のほうが苦しかったんです。スケジュールに余白ができてから、いろいろやるべきことが見えてきましたね。YouTubeでの毎日ネタ更新もそうです。ぼーっとすることもなく、「今までできなかったことをやるぞ」と、切り替えていった感じです。それがちゃんと届いて、単独ツアーの動員にも繋がりました。

(福徳)
昔は、「バラエティのトークをもっと頑張った方がいいんじゃないか」と、悩んだこともあるんですよ。でも、苦手だからできなかったんです。結局、僕らの強みであるネタを磨くのが一番。無理をして苦手を克服するより、得意な分野を伸ばせた方が、幸せじゃないですか? いま、やっと気がつくことができたんです。

(後藤)
スタッフさんからも「おふたりはネタだけやっていてください」って、ずっと言われています。

ーー最後に、ジャルジャルが考える、お笑いをずっと続けられる人と続けられない人の違いは?

(福徳)
純粋に、お笑いが好きかどうかだと思います。

(後藤)
ひとりだったら、キツかったと思うんです。僕らはふたりだからこそ、ここまでやってこられた。「M-1」もそうだし、ところどころで結果に繋がると「やっぱり、僕らは間違いないな」と確信できるようになっていく。その連続でした。この15年間、お笑いをやめようと思ったことは一度もないですね。これからも、ふたりでネタをやり続けます。

取材・文:小沢あや(@hibicoto)

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<JARU JARU TOWER 2018>
結成15年の節目の年となる2018年、ジャルジャルはオール新作のコントで東京・大阪・名古屋・福岡の4都市、7公演の全国ツアーを敢行。披露した12本のコントでは、登場する2人のキャラクターのうち1人が次のコントにも登場し、それぞれのネタが全体的に繋がっていくという独特の構成で、観客を新たなジャルジャルワールドに引き込みました。 そして、全国ツアーの最終日、11月4日(日)の東京公演の様子を収録したDVDが2月13日(水)に発売されます。8,000本のネタをもつジャルジャルが厳選した珠玉の最新ネタの数々を、ぜひDVDでもお楽しみください!

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