事実婚から、入籍へ。自分を軸に、制度を「選ぶ」。形ではなく意思でつなぐパートナーシップ。<Re.ing Product Director松野玲>


Reingプロジェクトのメンバーには、様々なパートナーシップの築き方をしている人がいます。ジュエリーディレクターの松野さんも、その一人。Reingでは、指輪デザインを忠実に再現するため、職人さんたちとの連携、そして素材の提案など製造における全ての役割を担当してくれています。

そんな彼女は、旦那様とお子さんと、3人家族。実は、お子さんが生まれるまでは長年婚姻制度を取らない、“ 事実婚 ”だったそう。どういう意思を持って、その選択をしたのか。とても気になっていたので、詳しくお聞きしました!

指輪は、思いやストーリーが宿る
自分に1番近いジュエリー

ー 松野さんはRe.ingのディレクターを担っていただいていますが、なぜジュエリー業界に入ったのですか?

元々、大学では絵を勉強していて、それを仕事にしたいと思っていました。就職前に、IDEEでアルバイトをしていたんですけど当時、社長の黒崎さんに「君はどこかの会社に就職したいわけじゃないでしょ。自分で作りたいものを作って、売ってみればいいじゃない。」と言われて。そこで、青山のお店の前にあった小さなスタンドで、コーヒーを売りながらポストカードを売ったりしていました。でも絵だけではなかなか売れず(笑)。そこで、アンティークのボタン等を使ってアクセサリーを売り始めたのがこの世界に入った第一歩でした。そこからコスチュームジュエリーいわゆるアクセサリーの企画をする仕事につながり、その後ジュエリーの会社に転職しました。

*アクセサリー:コスチュームジュエリー(洋服に合わせて身につけるとされるもの)
*ジュエリー:主に貴石・半貴石等を使用した金・銀・プラチナを使った宝飾品

ジュエリーの会社ではブランドのディレクションのお仕事をやらせて頂いて、今はそのディレクターの仕事を引き続き頂きながらフリーランスとしてお仕事をしています。


ー いつも、たくさんの指輪をつけられていますよね。何か特別な想いなどはあるのでしょうか?

とにかく、気分や服装に合わせて自分が好きなものをつけています(笑)。指輪って、自分に1番近いジュエリーですよね。身につけていると、いつでも目に入りますし。またサイズも自分にぴったりなものを探すから、運命感が強いと思うんですよね。お守りのように身につける人もいれば、誰かとのつながりを感じるために身につける人もいる。選ぶ方の、思いやストーリーが色々とあるので、そこが魅力だなと感じます。

これは、Fede Ringといって、アンティークのリングを再現したものですが、男性の手と女性の手が握手するように動く仕掛けになっていて、つないだ手を開くとハートが現れるデザインになっています。4世紀くらいから存在する形といわれていて、とても気に入っています。


フランスで感じた
個人が持つ自由の強さ

ー 勉強するために、フランスに何年かいらっしゃったんですよね。そこでの経験は、今の松野さんにどんな影響を及ぼしたのでしょう?

初めはファッションの勉強をしようと思って渡仏したんですが、アクセサリーも含め、いろいろと学びました。フランス人の芯の強さは、何となく感じていたのですが、忘れられない衝撃的な体験があって。

ある時、知人から突然嫌われたんです。それは、「その子が好きな人と私が仲がいいから」という理由でした。私には当時彼氏がいたし、全くその人のことは何とも思ってなかったにも関わらず、嫌がらせなどをされるようになって。フランス人の親友にその話をすると「まぁ、その子にもあなたを嫌いになる権利があるから。」と言われたんです。とても驚いていたら、「だけどあなたにもそれをおかしいと思う権利も怒る権利もあるから、気にしなくていいのよ。」と。フランスは完全に個人の自由を大切にするんですよね。全てのことに、それぞれの権利がある。すごく新しい考え方だな、と感じました。

ー 確かに、そう言われるとびっくりしますね。でも、すごく合理的なように感じます。松野さんは長年事実婚をされていたそうですが、それもフランスでの経験に基づいているのですか?

元々、私自身に結婚というものにあまり憧れがなくて。誰かと生きていくと考えたときに、何か制度を取らなきゃいけないとか、形式として籍を入れるかどうかというのは、自分にとっては重要ではなかったんです。一人っ子のせいなのか、自分を軸にして考えてしまう癖があって。どちらにしても、死ぬときは一人で死んでいくものだから、同じ名字になりたいとか、一緒という感覚が欲しいとか、そういったことを思ったことがありませんでした。恋人同士の関係性の基礎は何よりもお互いの気持ちが主になるものでしたし、もっと自由に考えられたらいいのに、そう思っていました。


結婚しないという選択の
関係性の築き方

ー なるほど!そうなると、お二人の関係を松野さん自身はどう捉えていたんですか?

より、パートナーシップという考え方が強かったですね。「旦那」とか「夫」ではなく、バディのような存在というか。同棲しよう、という話になった際に、「現状結婚という制度を取る必要はないけれど、お互いに助け合って生きていこうと思っている。」という話を両親にしたんです。私たちの場合、お互いの両親が考えを尊重して理解してくれていたので、特に問題もありませんでした。

ー ひとりで生きて生きたいわけではないけど、結婚という形を取りたいわけでもない。パートナーと長く一緒に生きていこう、という気持ちはあったんですよね。

はい、特に別れを想定して結婚という形を取らなかったわけではなくて。ただただ、入籍しなかったというだけです。恋愛は、自分の軸が重心になるから嫌なことは「No」と言えると思うんですけど、一緒に住み始めてからは、相手を信頼して共に生きていこうという気持ちが強かったので、軸足のバランスが変わりました。基本的に、決断する際に自分だけの気持ちよりも、相手の気持ちも尊重した上で決めるようになった。基本的には、長い目線で考えるときも2人でいることがベースになっていましたね。

ー 気持ちの面ではお互いに同じ考え方を共有できて、関係が成り立っていたんだろうなと思うのですが、何か事実婚という選択をすることで困ることはありましたか?

2人で何かしようと思うと、大抵のことは「結婚されていますか?またはその予定がありますか?」と聞かれるんです。例えば、部屋を借りるときも、ローンを組むときも、基本的には結婚が前提でしたね。2人で一生、一緒にいることがベースに考えられてる。その時にも、一方の名義でお金を借りるという形をとったり、籍を入れてなくても何とかやれたのですが、説明するのが面倒で(笑)、「結婚する予定です」と言うこともありました。



結婚しても、相手との関係性は
全く変わらない

ー そして今は、入籍という形を取られたんですよね。その理由は何だったんですか?

正直、2人で生きていこうと思ったらずっと変わらず、入籍はしなかったと思います。ただ、子供を持とうか、という話になったときにその子に不利益がないかという点で、結婚を考えることになりました。

私たちの場合、入籍していないという状態が、完全に自分たちの意思だったので、逆を言えばいつでも入籍できました。籍を入れずに子供を産むと、私生児(非嫡出子)扱いになるんですよね。そうなった時に子供は父か母か、どちらの戸籍を選ぶかによって苗字も変わりますし、3人で家族っていう証明は難しくなります。もちろん、認知という形で親子関係は認められますが、両親がそろってて生まれてくるのに、子供のことを考えると非嫡出子であることが、デメリットになる可能性があるのは私としては嫌だなと。夫と相談し、私たちの決断としては『籍を入れてしまった方がいいかな』という話になり、入籍という形をとりました。


ー 何かパートナーとの関係で、精神的に変わったりしたことはありますか?

全く変わらないです。夫がフランス人なので、実は苗字もそれぞれそのままなんですよ。国際結婚の場合は、夫婦別姓が認められるので。ただ、子供ができて2人が3人になったので、自分とパートナーというよりも、家族の構成員の1人という意識にはなりました。


ー 松野さんは、すごく「自分」というものを大切にしていますよね。芯の強い女性だな、といつも感じているのですが。

そんなことないですよ!1人の女性として、自分を軸に考えるというところは変わっていないのですが、子供だけはどうしても私の影響を受けてしまうので、母としてどのように子供との関係性を築いていくべきか、その点については悩み続けていくのかな、と思っています。人との関係性って、どうしても自分でコントロールできることだけではないので、夫に向き合う時、子供と向き合う時、両親と向き合う時、関係していく数や形態が変わる毎に自分と周囲の関係性について、考えたり悩んだりするようにもなりました。またある程度歳をとって、その時に応じた自分の役割を考えるようになったと思います「自分が」だけではどうしようもない事も多くなりますし(笑)。白か黒かはっきりしない事もある、というのが理解できるようになりましたから。ただその関係を選んで続けていくのは自分自身なので、その点で後悔のないように生きていきたいと思っています。


今回お話を伺って、松野さんの真ん中にある「自分という軸」は、キャリアの築き方や、フランスでの経験と色濃く結びついているものなのだと感じました。

「パートナーシップとは、バディとしてお互いに助け合って生きていくこと。」

自分の気持ちを主にしながら、相手との関係性や家族との関係性を大切に築いている松野さんの姿に、形へのこだわりや「こう考えなければ」といった固定概念は感じられません。周囲や、社会のルールは関係なく、「自分が」そして「相手が」どう思うか。それが1番大切なことなのだと、改めて気づかされたインタビューでした。

Interview&Writing
:Aska Otani @https://twitter.com/aska28d


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