旅するように暮らすということ

韓国に週末弾丸旅に行ってから、お腹の調子がしばらく悪かった。

そう、めちゃくちゃに楽しかったのだ。いつもは子連れで遊んでいるママ仲間と突発的に湧いた「母だけで(子ナシ)旅行に行きたい」というアイデアは、よくある夢の話で終わらず、各旦那様方の協力もあって確実に実行された。

いつもはスニーカー、でっかいバッグ、シート持参スタイルで公園の子供を追いかけ回している週末。ヒールを履いて、ワンピースを着て、おむつの一枚も入らない小さなハンドバッグを片手に赤いリップを塗って。産後どこかに置き忘れてきた女子として生きる醍醐味を詰め込んだみたいな旅をした。前回のnoteで「子供がいても旅行はできる」って話を書いたところで恐縮ですが、一個だけ言わせて。子供がいるからこそ何十倍にも何百倍にも膨らむ幸せがあるってこと。(ポジティブ)

そんなわけで、言葉どおり寝る間を惜しんで遊びたいと2泊3日の旅程のうち、2日オールした。朝日が出るまで遊ぶなんて何年ぶりだろう?チムジルバンでびっしょりかいた汗を気持ちよく流して、朝だねえとしみじみしながら食べるコムタンスープは五臓六腑にしみわたり、時間よ止まれって感じだった。(海外旅行といえば台湾ばかりの私なので)夜中からじわじわとオープンする東大門の問屋街とか、明洞のコスメストリートとか、深夜3時に食べるトーストとか、カフェでコーヒーを頼むぐらいの手軽さで楽しめるアートメイクとか、宿に戻らなくてもチムジルバンで朝まで過ごせちゃうこととか。そういう韓国ならではの旅のお作法がどれも目新しくて面白かった。今このときを逃せばもう次はない!という気概で、日常の「母」という着ぐるみを脱ぎ散らかし、5人の女性が体力の限界に挑戦していた。何もかもが楽しすぎて、ちょっとしたことでいちいち盛り上がって、ここなら騒いでも問題ないだろうと入ったガヤガヤと賑わう屋台風の食堂で「静かにしろ」と2回ぐらいお店の人に注意された。え、そんなに?

そんなわけで私はお腹を壊していた。
執筆中は毎日夜9時に子供と一緒に寝て、朝3時に起きて仕事を開始する健康的な日々だったのでなんだか色々なことが狂っていたのだ。でも、そんな狂えるだけの「非日常」ってやっぱりいいよね。何気ない街に横たわる猫の写真をふと撮ったりする。なぜって、旅行中だから。

いつ頃からか「暮らすように旅する」という旅行スタイルが提案されることが多くなった。Airbnbで普通のお部屋を借りて、なんてことない街の食堂で地元の人たちとお友達になってみたり。できるだけ特別なことを意識せずに ”自然” に過ごすこと。私もそんな旅が大好きだ。だけど今回久しぶりに「旅行気分を味わうための旅行」みたいなものを経験して、これもまた良し、と思った。

帰国してから少し経って、お腹の調子も戻って、仕事もちょっと落ち着いたある日。なんだかふと特別なことがしたくなって、家からバスを乗り継いで、そこからまた20分ぐらい歩いて、近所といえば近所の、だけど自分の生活導線から果てしなくはずれたクチコミが良いカフェに行ってみた。知っていたようで知らない街、事前に調べておかなければ出会えなかった店、なんとなく、わざわざ気合いを入れなきゃ入れない店構え。

Googleマップを開く、周りの様々なスポットからクチコミが良さそうな場所を探し、入念に下調べして経路を検索する。「これなら行けなくはないな」と経路のイメージを頭の中に描く。実際にたどりついて「ここかあ」と有名な観光スポットに来たかのような気持ちで建物を見上げて写真を撮ったり。メニューが読めない外国人観光客のような気分で「おすすめはどれですか?」と店員さんに聞いてみたり。それが全く好みじゃなくても注文してみたり。これらは全部私が旅行中にやることだ。旅行じゃなくても、自分の住む街で少し意識してみればできた。それがとても楽しかった。

駅に行く導線でもないし、知っているメニュー、知っている場所の安心感はない。そのすべての所作に「わざわざ」がつきまとうのだけど。こんな風に ”旅するように暮らす” ことは、なんでもない日常を豊かにしてくれるのだなという発見。ああ、非日常。

この休みは、どこへ行ってみようかな?

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