わたしと保護者会の百日戦争

暗いと不平を言うよりも、自ら進んで明かりを灯しにいける人間に

前職のスクーの社長がよく言っていた。元はマザー・テレサの言葉らしい。おそらくスタートアップではそんな人材になることが自然と求められているのではないかと思うし、私も自分の周りにそういう人がたくさんいたらいいなと思う。

小さい頃から正義感が人より強めの私は、わりと根っからそういうタイプだった。皆が問題視していることを仕方ないと思いながらやるのは苦手だし、無駄だと思いながらも我慢してやる、みたいなのはもっと嫌だ(正義感が強いというよりもただワガママなだけなのかも)。

自分の面倒くささが災いしてさらに面倒な環境を作ったという話は以前書いたけれども、それにとどまらず、この正義感が災いして困難を招いた話がある。

息子が保育園に入園してまもなく、保護者たちが何かしら役割を与えられる役員会の中で、撮影業者に年間の撮影依頼を出すという係に任命された。通常こういったことは保育園が業務としてやっていることが多いけれど、うちの保育園は良くも悪くも保護者会の存在感が強く、園と保護者が協力しあって進める事案もたくさんある。写真係はほかの会計やイベント企画などと比べると非常にラクな仕事で、それならばと立候補したのがきっかけだ(在園中になにかしらの役員に就かなければならない)。

保育園では夏祭りやプール遊び、さつまいも掘り、餅つきと年間を通して様々なイベントにカメラマンが来てくれることになっている。撮影した写真を保護者があとから購入できるもので、普段はなかなか見られない園での様子を写真を通して見られることもあり、保護者にとっては結構大事なものだ。カメラマンとして派遣されるのは、園のすぐ近所にある写真館のご主人や息子さん。もう何世代も続く家族経営の写真館は店構えこそさびれているけれど、何十年も近所の保育園や小学校と提携し、専属カメラマンとして活動しているらしい。商店街や街中にある小さな写真館のマネタイズポイントがこんなところにあったなんて。親になって初めて知った。

で、問題はこの写真である。
子どもの後頭部しか写ってない、集合写真もみんな表情が微妙、ことごとくシャッターチャンスを逃している、全体的にひどく暗い、等など…。息子が入園して間もない頃、同じ園にお兄ちゃん・お姉ちゃんがいるお母さんからそんな話を聞き、ちょっとの正義感(?)と仕切り屋な性格を持ち合わせている私が黙っているはずがなかった。イマドキ便利で安い写真撮影サービスはたくさんあるし、さっさと乗り換えるべきでは!と。

しかし保育園と何十年も関係がつづく地域の写真館をいきなり切り離すことはできない。園長先生に様子を伺ってみると、実は前々からそういう声もあった、保護者会での賛成が得られるなら別の業者を入れる選択肢もある、と話してくれた。

同じ写真係に任命されたママさんと協力しあって、役員会での提案をする前に入念に撮影業者についてのリサーチを進め(いざ調べてみると結構ある)、自分たちの園のスタイルにあったものを検討した。アプリで購入できるとかカメラマンの腕がいいとか値段とか、比較できる要素をまとめ、役員会での承認をとったあと、年に一度の保護者総会で100名近くの保護者を前にプレゼンテーションをした。

「セキュリティは大丈夫なのか」「初見のカメラマンが突然やってくるとなると、子供たちも戸惑うのでは」「園の先生たちへの負担はないのか」という質問が私に投げかけられた。もちろんすべて想定していた質問なので、バシバシと打ち返していく。

私、なにやってんだろう。。。(笑)
こういうのが苦手で、気ままなフリーランスになったはずなのに。。。

すると、端の方に座っていた保護者が小さく手を挙げた。
「実は以前通っていた園で、新たに検討している業者のサービスを使っていたことがあります… 写真もとてもきれいで注文しやすく、主人も私もすごく気に入っていました」。

・・・キタ!救世主!!!

勇気を出した保護者の声に続き、今度は「長年ずっと不満があった」「いまどき釣り銭のないように封筒に現金を入れて提出するなんて」「正直自分が撮った写真の方がマシだと思う」と保護者たちの不満が堰を切ったように次々と挙がった。我が家は入園したばかりなのでともかく、もっと上のクラスの子供たちの保護者はもう5年近く、仕方ないと思いながらやり過ごしてきていたのだ。

最終的にその場で「まずは試験的に導入を」と圧倒的支持を集め、保護者総会は幕を閉じた。

「今年の写真係さんに乾杯!」「よくぞ動いてくれた」と温かな拍手と称賛が送られた。それから半年以上経ち、無事にトライアルも行われ、現在は来年度の役員への引き継ぎの準備をしている(結局は園の意向もあり、新業者と過去の写真館を併用する方向で話が進んでいる)。

ようやく第一歩… と胸をなでおろしたが、来年以降に二歩目を後押ししてくれる人が現れるのかはわからない。もし仮にいたら、きっとすごく私と気が合う人だと思う。飲みに行きたい。

自分の両親にこの話をしたら「地域との長年の関係があるんだから新入りがかきまわすもんじゃない」「一番首突っ込んだらアカンとこ」と苦笑されました。私以上に苦い経験をたくさんしているに違いない。そりゃそうだ、と今ならよく分かる。

暗い暗いと嘆いている方がラクなこともたくさんある。というか世の中ほとんどのことだそうだと思う。その辺りもうちょっとうまいことやれる大人になりたい。入園一年目で思った以上に目立ってしまった私、子供が卒園する頃には今より成長しているといいな。

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あいしてる!
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田中 伶

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