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料理の楽しみとマンネリと。

7年ほど課金していたクックパッドを解約した。その裏にあったのは料理に対する価値観の変化で、決してクックパッドのサービスを否定したいわけではない。ただなんとなく自分の料理に対する考え方が変わったことに「なるほどなあ」と思えたので記録に残したいと思った。

上京して一人暮らしを始めたときぐらいからクックパッドのプレミアムサービスに課金していた。料理はもともと好きなのだけれど「エビチリ」「さばの味噌煮」といった食べたい料理を ”ずばりこれが正解!” というレシピで作りたいときや、冷蔵庫に余ってる大量のキャベツを何に使おうかな、というときに検索するのに重宝した。お気に入りのレシピはマイフォルダに保存する。忙しい毎日の中でがっつり料理をするのは週末ぐらいだったけれど「定番」「副菜」「台湾」「ストウブ」「風邪ひいたとき」「離乳食」など自分なりに欲しいカテゴリをフォルダで管理し、300円の月額をみっちり回収していたと思う。

そんな私だが、ある時からどうも料理にテンションが上がらなくなっていた。マンネリ的な感覚に近いかもしれない。料理自体に飽きたというか、自分の知っている味を作ることに飽きた。「今日なに食べたい?」と旦那に聞いておきながら「ハンバーグ」と言われると、「え!それ全然テンション上がらない」「もっとひねったアイデアないの?こないだインド料理で食べたみたいなスパイスから作るカレーが食べたいとか…」みたいな面倒くさいやり取りを何度もやり取りするはめになった(旦那ごめん)。自分にとって貴重な時間の中で、暗記している手順で、想像できる味の料理を作るなんてとても退屈だと感じるようになったのだ。

生きるための毎日の食事。日常の家事のひとつである料理。そんな作業の中に「退屈」だとか「エキサイティング」だとかいう概念が飛び出したのは、私の性格的なものなんだろうか?それとも誰もが通る道?

そんなわけで、明確に作りたいものをイメージして検索しなければいけないクックパッドとは会話が成立しなくなった。ふと手にとったレシピ本をぱらぱらとめくり、これどんな味がするんだろう?と予想もつかない(でも美味しそうな)レシピにチャレンジするほうが料理の楽しさを満喫できることに気がついたのだった。子供を産んでから料理が億劫になるかと思いきや、逆に面倒くささや手間をガンガン求めるようになったのだ。時短重視な人のためのミールキット的なものを買ってみたりするけど、そういうものを使うとますます料理が作業になってつまらなくなる。私にとって料理とは頭をひねりながら手を動かすクリエイティブなものだったのだと気付いた。

料理が好きという人のモチベーションは様々だろう。食べた人の美味しいという声が聞きたいとか、冷蔵庫の中身でちゃちゃっと、に憧れる人もいる。頭の中で効率的な手順をイメージしながら作業するのが好きな人や、料理というよりテーブルコーディネートが好きな人もいる。私の場合はそれが「新たなレシピへの挑戦」だったり「こんな料理もできた!という予期せぬ発見」といった新鮮さそのものだった。

そんなわけで、別に手間をかけなくてもクリエイティブな料理体験はできるのではないかと自分なりに料理と向き合った結果、最近はスーパーのチルドコーナーにあるパックの切り干し大根煮を適当にきざんで、めんつゆ大さじ2ぐらいと一緒に炊飯器で米と炊くと、なんともいい具合に上品な味の炊き込みごはんができることを発見したりした。これだ!次は別のお惣菜で試してみよう、と久しぶりに料理にわくわくする瞬間が訪れた。

クックパッドで「かやくごはん 簡単」と調べれば一発のことを、自分なりに頭を使って考えてみる。皮肉なことに、便利なサービスを排除した日常はとてもクリエイティブで刺激に満ちていた。

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