人が自信を取り戻す瞬間

Netflixで放送しているリアリティ番組「Queer Eye(クィア・アイ)」をご存知だろうか。

最高にイケてる5人のゲイたち(Fab5;ファビュラスな5人組の意)が、ファッションに疎かったり自信がなくて悩んでいる一般男性を変身・改造する番組。やや乱暴に説明するとこんな感じ。日本にも前々から同じような素人を変身させる類のコーナーはある、だけどもうね、そんなものを引き合いに出すのが失礼なぐらいにレベルが違うのよ。

Fab5を構成するメンバーは、ファッション、美容、インテリア、カルチャー、フード&ワインとそれぞれ得意分野に担当が分かれている。そんなFab5の一人ひとりの個性が猛烈にチャーミングなのは言うまでもないのだけれど、一人の男性が内面も外見も変わるためには「カルチャー」や「フード&ワイン」という要素が必要だという前提がとてもアメリカっぽい。

約一週間ほどの改造期間の中で「困難を乗り越えられない」とぼやく人には大自然の中のアスレチックに挑戦させたり、「人の前に立つ仕事をしているのにプレゼンが苦手」という人にはラップに挑戦させたりする。「若いのに母親の友人とばかりつるんでいる」という10代の青年には、同世代の人とサバイバルゲームをさせるという回もあった。これがカルチャー担当。次は料理担当がやってきて、その人のレベルにあわせたお手製の料理をレクチャーし、手料理の楽しさに目覚めさせ、(母親と心の距離がある人には)母親の故郷の料理を作らせたりする。美容担当とファッション担当がやることは言うまでもないけれど、ここでも本人らしさを一緒に話し合いながらスタイルを提案し、髪の毛を週に何度洗えばいいのか、ポマードはどうやって使うのかとゼロから教え込む。

長年伸ばしてきたひげを剃ったり、ぼろぼろのスニーカーを上品な革靴に変えたり。外見を変えるのは簡単だけれど、彼らの大改造は本人だけにとどまらない。インテリア担当がやってきて本人が住む家の中まで大改造し、家具も雑貨もクローゼットの中身もまるごと変えてしまう。これ一体予算どれだけかかってるの?と驚かずにはいられない、ケタ違いな大変身。本人が何十年も使って執着していたぼろぼろのソファもすがすがしく処分される。やや荒療治だが、かっこよく自信を取り戻した男性がこれまでと同じサエない部屋でフローズンミールを食べて生活していては意味がないのだ。

この本人の心と身体と環境をまるごと大改革してしまう45分間の番組に、私は毎回泣いている。

何が泣けるって、一人の人間が何十年もかけてじわじわと失ってきた自信を、たった一週間ほどで魔法のように取り戻させること。強烈なキャラクターを持ったFab5に圧倒される初日から3日後には、明らかに性格や立ち居振る舞いも変わってくるのだ。人間がきらめきを取戻す瞬間を逃さずとらえた45分間はとても濃密だ。

よくあるビフォーアフター的な企画では、変身後の姿がものすごく不自然だったり、変身した本人自身がいまいちしっくりきていないのが見て取れることがあったりするけれど、外見だけのごまかしじゃない「クィア・アイ」の改造はまったくの別物。変身前の自分が「イケてない本当の自分」だとは誰も思っていない。変身後に鏡を見た男性たちはみんな「ああ、そうだこれが本当の僕なんだ」という顔をしている。

番組は毎回エピソードごとに一人ずつ完結する。
Fab5とお別れし、一人になった本人が「よし」と自分で服を選び、鏡を見る(Fab5とお別れしたあとに皆それぞれ一人でちょっとしたチャレンジを迎える展開になっている)。鏡越しに映る男性の姿は堂々としていて、そこに45分前に登場した本人の姿はない。

ちょっと称賛しすぎだけれども(笑)
これを機に「クィア・アイ、ちょっと観てみようかな」と思ってくれた方がいたら、ぜひFab5が登場する素人男性のことを褒めて褒めて褒めちぎりまくるところにも注目していただきたい。

「君が変身できたのは君自信の実力」「これ以上、あなたの顔を見てたら私が好きになっちゃいそう」「君の学ぶ姿勢がなかったらこんなふうには変われなかった」「ちょっと待ってよ、こんなハンサムどこにいたの?」 and more...

冗談みたいな褒め文句を、目を見て真剣に伝える彼らの真っ直ぐさに羨ましさを感じてしまう。自分もそんなふうに誰かを褒めてみたくなる。

人が自信を取り戻すめくるめく瞬間に気持ちが満たされ、あっという間に現在公開されている2シーズンを見終えてしまった。最高だった。

一日の楽しみがなくなってしょんぼりしているので、こんな私にオススメの番組があったら是非とも教えてください(笑)。


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あいしてる!
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田中 伶

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