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人生ではじめての「校了」を終えて

校了した。校了した!校了した!!!
大事なことなので3回言いました。とは言っても「校了」という言葉の厳密な意味を知ったのはここ数ヶ月の話で、初めての著者本の作成。今年4月17日に発売となった『FAMILY TAIWAN TRIP #子連れ台湾 』。昨年5月頃に本格的にプロジェクトが始まり、取材旅行を重ね、年を跨ぎ今年3月になってようやくの校了。いやあ… 本当に走りきった。

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”子供のいるママ向け” ということで、一般的な旅行ガイドに比べて圧倒的に読者対象が狭くなる。私自身、書籍を出版した実績もなければインフルエンサーというわけでもなく売上の見込みは立たない。一方で、人気雑誌などでは毎月のように台湾特集が組まれたり次から次へとガイドブックが発売されたり、年を追うごとに注目されている台湾。同じく働くママである編集の日隈さんが全力を尽くして社内の企画会議を通してくれて、ひとまず「出版する」ということが決まったのは昨年5月だった。

企画会議で「子供たちが春休みに入る前の2月ぐらいに出せると良いですね」と話していたところから、息子が入院して計画通り取材に行けなかったりと戦いは長期化し「このままでは間に合わない!3月に!」と調整するも、年が変わる頃にはそれすら怪しくなり「やはり余裕をもって4月に!」ということになった。挙句の果てにはそれにすらどう考えても間に合わず、だけどなんとしてもゴールデンウィークに間に合わさなければ死ぬ、という気概で、冬が終わりを告げようとする頃には、週末も夜中3時までメールのやり取りが続く追い込みに。デザイナーの佐藤さんの脳内ではZARDの『負けないで』が無限ループしていた(ごめんなさい…)。だけど。長らくフリーランスで働いていた私にとっては、チームで長期的な目標に向けて「うおー!」と猛進するこの感覚が、密かにとてもうれしくて楽しくて、わくわくした。

いま振り返ってみて、自分のやったことのない仕事に120%で取り組む一年間はとっても貴重だったなあと思う。日隈さんが二人三脚で歩んでくれつつも、著者本なので、台割の作成からデザインのラフ書き、紹介物件へのアポ取り、現地の取材、通訳、撮影、執筆、マップのラフ書き、デザイナーさんとのやり取り、協力してくれる台湾好きママさんへのヒアリング、モデルさんの調整、協賛企業の営業など。自分にできることはすべてやらせてもらった。

特にデザインのラフ書きのようなものは私が一番不得手とするところで(そもそも泣けるほどにセンスがない)、世の中に出ているガイドブックや雑誌などをあれこれ参考にしてみるものの、朝から晩まで白紙と向き合って何度も書き直して2ページ(一見開き分)しか出来なかった… みたいなことがザラにあった。本の完成まで、あと126ページ。ワロス。って感じだ。それでも世の中のガイドブック、これ薄くない?って思うもののページ数を見てみたら、余裕で150ページぐらいあったりして絶望したりした(これは紙の素材にもよるところなんだけど。私の本は128ページ)。

自分が作りたいデザインの方向性やトーンなどをうまく言語化できず、結局、敏腕デザイナーの iroiroinc. 佐藤さんに各企画のデザインを丸投げしてしまったり。それはもう編集人材としては新卒以下のレベルだったけれど、それでも最後まで1ミリも妥協せずに「田中さんの台湾愛がちゃんと読者の方に届く本に」と何度も強調して、かわいく子供らしい遊び心にこだわってくれたことにはもう感謝しかないし、これからも佐藤さんが手がけるデザインの本はすべてチェックさせていただきます。土下座。もう本当に素晴らしくセンス溢れるお方なので、書籍や雑誌の編集に関わる方は是非ともお見知りおきを。

これまでブログやウェブメディアで文章を書くということはずっとしてきてきたけれど、いやはや本を書く「編集作業」って全然違う世界なんだなと思い知る。ぱらりとめくる1ページの裏にある膨大な労力よ。ガイドブックに限らず、漫画とか400円ぐらいで買えるのっておかしくない?計算どうなってるの?と。自分の好きなガイドブックに「内容が薄い」だの批判的なAmazonレビューが書かれているのを見つけては腹が立ち、せっせと「参考にならなかった」ボタンを押したりした。仕事しろよって話です。

そんな出版までの約一年。私がゴタゴタやってる間に、1歳の息子はあんよができるようになり、走り回れるようになり、二度も入院を経験した(真夜中の病院でせっせとラフを書いてたことは忘れない)。取材から出版までに時間がかかりすぎたせいで掲載予定だった物件は2軒閉店し、せっかくモデルさんと撮影したメインの写真がお蔵入り、物件の差し替えに悲鳴をあげることもあった。こういうこともあるから、ガイドブックって本当に大変なのだ…!自分が純粋に紹介したいおすすめの店という観点と共に、そう簡単には潰れなさそうな店を見極める嗅覚が問われる。

そして、本の制作にあたっては、私のこれまで築いてきた友人・知人・お世話になっている皆さまの引き出しをすべてひっくり返して、総動員させてもらった。イラストを描いてくれたオガワナホさん、モデルとして台湾ロケにお付き合いいただいた酒井景都さん、表紙の制作を担当してくれたSALLY'Sの島川佐理ちゃん、過去に撮影したすべての写真を提供してくれたHowto TaiwanメンバーのROMYレイチェル、現地でのアポ取りに子連れで挑んでくれたコーディネーターの環ちゃん

みんながみんな「アンタのためなら!」と一肌脱いでくれ、大好きな映画『素晴らしき哉、人生!』のエンディングのような展開に胸が詰まる。「こんなに沢山の友人を巻き込んでくる著者、あまりいないですよ」と日隈さんに言わしめた。よっしゃ。そもそも本に出てくる子供たちの楽しい写真はすべて私がSNSなどを通じて知り合ったママさんたちが提供してくれたものだ。大好きな人の沢山の愛と協力がどのページにも詰まっているんだから、そりゃあ嬉しいに決まってる。

そうして沢山の人を巻き込みながら編集を進めるうちに「自分の本を出したい」という自己顕示欲めいた感情は消え去り、大切な人たちにこれだけ協力していただいた集大成を出来うる限りベストな形で世の中に出さなければ!という気持ちがすべてのモチベーションになった。そして「もはや子供がいるとかいないとか関係なく、皆の台湾愛に溢れた作品を、とにかく一人でも多くの人に手にとって欲しい」と本末転倒な想いも。

同じく働くママでもある編集の日隈さんとは「今日は授業参観なので、○時までは繋がります」「子供の持久走大会で、外からすみません」と日常生活の狭間で何度も電話をした。校了前の最後のプルーフ確認は日隈さんのご実家にお邪魔させてもらってやった。畳の部屋に大きな紙面を並べて、帰宅されたお母さまにまでご挨拶させていただいた。ミーティングの向こう側で子供が見ているアニメの声が聞こえていたこともあるし、「いま子供がお昼寝中ですので…」とヒソヒソ声を落として話していたこともある。息子を連れて行った打ち合わせの場で、息子が熱性けいれんを起こして救急車を呼んだことも、、あのときは本当にびっくりした。とか。もうエピソードがありすぎて書ききれない。涙

そうやって書き上げた128ページのかたまりをようやく世の中に送り出せる。心から達成感と共に、本当に皆さんの手に取っていただいて恥ずかしくない内容になっているだろうか、台湾が大好きな皆さんに納得してもらえる情報を載せられただろうか、この本をきっかけに初めて台湾にふれる人に、台湾を魅力的に思ってもらえるだろうかと不安は絶えない。同時に、掲載店が潰れませんように、子連れで海外に行くなんて親のエゴとか思われませんように、台湾で突然の反日暴動が起きたりしませんようにと祈るばかり。

本をたった一冊出すというだけでこんなに大騒ぎして恥ずかしいけれど、私にとって出産と同じくらい大きなプロジェクトであった。だからこそこの興奮を今のこの形のまま残しておかなければ!と強い衝動に駆られているのだ。

明けても暮れても #子連れ台湾 だった十月十日を終え、あとは発売日を待つのみ。ここからの第2章はこれまた私が見たことのない景色だ。今回みたいに不得手なこともたくさんあるだろうけど、ひとつだけ確かなのはやっぱり仕事のご褒美は仕事だということ。この本をきっかけに新たな仕事に出会い、乗り越え、子供に負けないぐらいめきめき成長していきたい。

大事なので何度でも言う。校了した!!!


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