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「芳華-Youth-」

青春を諦めない映画だ。
戦争という祝祭、青春は大合唱の後の静けさをもって幕を閉じる。
青春を引き延ばそうとすればするほど、彼らは傷ついていく。
腕を失う、心は壊れる。
それなのに、私たちは青春を諦めない。
あの一瞬の輝きを永遠にと思うから、私たちは映画をつくるのだ。

青春という純粋無垢な時間に突如異物として入り込む、血や泥や焼けただれた肌、食い込む銃弾。
青春にドロドロの赤黒い血色はいらない。
青春にふさわしい赤色は、あいつのかぶりつくトマトの鮮明な赤だけだ。
あの時言いたかったこととか、できなかったこととか、言ってしまったこととか、やってしまったこととかなにもかも青春が肯定してくれる。
純粋な行為が肯定してくれる。
映画が肯定してくれる。
試写室を出ると青春を諦めたことを酒でごまかすネクタイしめた幽霊たち。