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映画脚本素案、壊れてく俺を見てくれ

自宅の白い部屋で寝ていると、天井がぐるぐる回ってまもなく天井が青空になって、それから誰がスイッチを入れたのか知らんが、天井がガーッと音を立ててせまってくる。俺は怖いから寝返りを打ったり、胸をかきむしりながらそれから逃れようとするのだが、そんなことしていても何がどうなるわけでもなく、天井は止まらずにせまってくる。気づいたら天井は鼻の先までせまってきていて、なぜかそこで停止した。だからと言って横に逃れようとしてもすでにそんなスペースは残されておらず、身動きがとれない。とにかくなんとかしなければ俺はこのままでっかい白い天井に押しつぶされる!と焦っていたら、また誰かスイッチを押したのか天井が動き始めた。鼻がひしゃげて、徐々にお腹にまで圧迫感を感じ始めたので、もう一貫の終わりだお母さんさようなら、昨日の夜食べた鳥のさっぱり煮もう一回食べたかったなと生への感傷に浸っているとなぜか体が透明になって天井をすり抜けた。

目の前は真っ青な海だ。白い砂浜が広がり、そこではアロハシャツを着た男たちが相撲を取っている。天国みたいだなと思ったが、自分が死んだという実感はない。なぜなら、天井が迫ってきて鼻がひしゃげたあの感覚と体が天井をすり抜けたあの感覚との間に、時間的な断絶を感じなかったからだ。死とは案外、生と時間的に断絶されない日常と地続きなものなのかもしれないと思い、自分が死んだような気がしてないのだから生きているということでいいやと思うことに決めて、そのまま海を眺める。傍らで相撲をしたり、ロケット花火をやったり、落とし穴を作って子供のようにはしゃいで遊んでいる柄の悪い奴らがいるけれど、俺はクールな大人のジェントルマンなのでスカして海を眺める。けど、楽しそうだなあいつら。

海を眺めるのも飽きたので、砂浜の横にある路地へ入ると、目の前が開けてきて渋谷のスクランブル交差点に出た。女か女でないか一目では判断が付かん女っぽいおそらく女が目の前から歩いてきてすれ違ったら臭かった。ヴィトンのバッグ持ってるのに、あんな臭かったらヴィトンのバッグを購入した大金の元を一生かかっても取れないだろうなと思った。渋谷は相変わらずどこもかしこも臭い。渋谷でこのニオイがするから、みんな平然とした面で歩いているが、もしこのニオイが家で香り始めたら悶絶して何かしらの業者を呼ぶだろうな。渋谷が臭いことに気づいてしまった俺は不幸だ。この世には気づかない方が良いこともある。スクランブル交差点を歩いていても臭い思いしかしないので(可愛い女子高生の生足を見てボッキするのは楽しかったが)そろそろおさらばするとしよう。

不意に近代的なコンクリートの建物に入ると目の前が光で真っ白になった。
何か見覚えのある光だと思ったら、映写機の光だった。近代的なコンクリートのビルに入った俺はなぜかそのまま映画館のスクリーンの前に出てきたのだった。それなら俺は映画の主役を演じるしかないという謎の使命感を抱き、たまたまそこに落ちているマシンガンを手に取ってスカーフェイスのアルパチーノさながら、座席に座っている観客にぶっ放した。銃の先から出た沢山の弾丸は、映写機から出る光を乱反射させながら、二十人程度の少ない観客の体にめり込んだが、自身にそれほどの快感はなく、俺がアルパチーノなら誰かに今この瞬間殺されなきゃならんなぁとなんとなく考えていたら、その通りに観客席右隅にいる真っ黒のサングラスをした真っ黒なスーツの男が、俺に向かってマシンガンをぶっ放した。北野武みたいな男だったから、こいつには殺されてもいいかと思いながら、目を閉じた。と思ったら目が覚めて、体からは血が滴っていたが、とりあえずなんともなさそうなので家に帰ろう。家に帰ったらお母さんのつくった鳥のさっぱり煮を食べよう。そしてまた寝よう。