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一歩も引かなかった男 「小村寿太郎の外交TERAKOYA」(2019.10.14)前編

1986年(昭和61年)
物語は、ここから始まる。

3月、ハレー彗星最接近。次は2061年だそうだ。

そしてこの年、日露戦争の外積完済。
実に日露戦争から82年後に、ようやく外国からの借金を完済したのだ。

この借金をチャラにしたかった男こそ
今回の主人公”ねずみ”とあだ名された小村寿太郎だ。

日露戦争の10年前、
日本は日清戦争に勝利し世界から一目置かれるようになる。
とはいえ、まだまだアジアの弱小国。

その小さな国が大国ロシアに勝利した。

当時、ロシアは不凍港を求め南下し、朝鮮を乗っ取ろうとしていた。
そうなれば日本も飲み込まれてしまうかもしれない。
その恐怖から日本を守るべくロシアに戦いを挑んだのだ。

勝ったとはいえ日本はボロボロ、兵力は限界。
そのため講和条約を有利に進め、一等国として列強と対等になり
戦争を終結させたい。

ロシアは負けたとはいえまだ十分に余力がある。
国内情勢が不安定とはいえ、日本何するものぞと強気。

仲介役はアメリカ。
閑静な避暑地、ポーツマスで講和会議が開かれることとなる。

一月に及ぶ壮絶な舌戦。

日本代表は貧乏な小男
対してロシア代表は老獪な大男。
当時の国力差を反映したような対照的な二人。

日本の命運を託された”ねずみ”こと小村寿太郎が、
いかにして大国ロシアと戦ったのか、
その物語を見ていくとしよう。


▪︎第一部 外交官 小村寿太郎

ペリー来航の2年後、小村寿太郎は今の宮崎県で誕生した。

超秀才で藩の学校でトップクラス。
15歳で長崎で英語を学び、現在でいう東大に進学、
さらには文部省の第一回留学生としてハーバード大学で法律を学ぶ。

が、彼はドがつくほどの貧乏。
父が事業に失敗し、一生かかっても返せない借金を背負い、ご飯はお茶。
外国へ行く送別の品もあっという間に借金取りに取られる始末。

そのせいで妻との関係も冷えきっており
どうにもならない貧乏生活を送っていた。

小村はアメリカ留学後、外務省に勤務。
ところが後ろ盾となっていた藩の重臣が西南戦争で戦死したため
出世の道は閉ざされ、翻訳の部署に配属されていた。
しかし、そのことが小村に世界情勢を見る目を養わせた。

そしてある男との出会いが小村の運命を決める。

陸奥宗光。
幕末、坂本龍馬の右腕だった海援隊隊士であり、
カミソリと呼ばれた明治を代表する外務大臣だ。

陸奥は不平等条約を改正し、
外国人を日本の法律で裁けない”治外法権”を撤廃し
国内の産業を守る為”関税自主権の回復”を目指した。

時は帝国主義。欧米列強が力で世界を征服する時代。
欧米列強から見れば日本人は人間以下。

彼は、まずは治外法権の撤廃を実現させ、
関税自主権は後世に託すという
戦略的な外交によって日本の地位を引き上げた。

同時に日清戦争も経験。

日本は朝鮮に、国家としてちゃんと独立するよう交渉するも
清国に頼ってばかり。
ロシアは南下して朝鮮を乗っ取ろうと企んでいる。

このままではダメだ、俺たちが朝鮮をなんとかせねば。
朝鮮を巡って日本は清国と対立する。

日清戦争は陸奥が仕掛け、世界を味方につけるために、
刃の上を駆け抜けるように大外交戦を繰り広げたといわれているが、
その陰には小村寿太郎の姿があったのだ。

ある時、小村は生糸の産業について陸奥に報告する機会を得る。
小村の奥深い知識に感心した陸奥。
「私は何でも知っています。自分は役に立つ人間です」アピールする小村。

この出会いによって、小村は外交の表舞台に
引き上げられることになる。

明治を代表する外務大臣である陸奥宗光と小村寿太郎。

陸奥は日清戦争、小村は日露戦争の講和会議を行った。

陸奥は幕末に欧米列強の恐怖を知り、血煙をくぐり抜けた志士。
小村は頭脳を買われて英才教育を受けたエリート。

陸奥は欧化主義、小村は国粋主義。
陸奥は多弁で自由闊達。
小村は寡黙、だがいざという時に的を射たことをズバッと言う。

対照的な二人だが「日本を一等国にする」
という共通の志を持っていた。

日清戦争の前年、小村は外交官として清国に赴く。
欧米は花形だが席がない。
小村は「欧米のことは知っているので、アジアを勉強します」と承諾した。

間もなく、朝鮮で東学党の乱という民衆の反乱が起こり、
朝鮮での主導権を握るため、清国と日本が鎮圧軍を派遣。

お互いの正当性を示すために、
ロシア、イギリスを巻き込み外交戦が繰り広げられる。
その時に清国代表である李鴻章と実際にやり合っていたのが小村だ。

朝鮮を巡って対峙する日本と清国。
戦争するのかしないのか。国内でもめている間に、
李鴻章と話をしてもしょうがないと判断した小村は勝手に帰国、
国交断絶、小村の思惑通り日清戦争勃発、
日本がサクッと勝利。

この時の清国との交渉から小村の外交ハンパねーと知れ渡り、
小村は世界を駆け巡ることになる。

陸奥は病に倒れ亡くなってしまうが、
その志は小村に引き継がれていくのだ。

日清戦争後、清国は列強の餌食になり、
ロシアは満州と遼東半島を奪おうとしていた。
危機感を覚えた日本は軍備を増強。
しかしとても勝てる相手ではない。

ロシア駐在となった小村は、ある男に接触する。

ロシア帝国大蔵大臣 セルゲイ・ウィッテ。
外務大臣以上の外交の発言力を持つ重鎮。

ロシアの南下政策のために、李鴻章をたらしこんで
満州までシベリア鉄道を敷いてしまった男。
のちに日露戦争の講和会議で小村と舌戦を繰り広げた人物だ。

なぜ小村はウィッテに接触したのか?
第二部(後編↓)に続く。
https://note.mu/rekirepo/n/n5d8d68ac804f

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