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四人囃子『一触即発』(1974)

アルバム情報

アーティスト: 四人囃子
リリース日: 1974/6/25
レーベル: 東宝レコード(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は41位でした。

メンバーの感想

The End End

 まず何よりも、ジャケットが怖すぎる!!怖すぎませんか!?ゾクゾクする…
 複雑な聴き心地の作品だけど、印象に比して実はめちゃくちゃテクいわけではない気がした。フレーズに何気なくインテリジェンスを散りばめるのが上手。これが適切な感想かどうかはわからないが、要所要所にポストロック的なムードを感じた…みたいな。ここまで聴いてきた他の作品とはだいぶ異なる趣のアルバムだと思う。
さらに言うと、ギターのクリーントーンの方向づけにシンパシーを感じる。私もこういう音好きです。
 「おまつり」、いわゆる“ご褒美”が待っている最高の曲でした。

桜子

 一触即発のイントロのスピード感、3拍子のリフ、ハードロックみたいな激しいマイナー調な感じがめちゃくちゃカッコいい。
 プログレと形容される音楽をプログレを聴くぞ!って身構えて聴いても良いんだろうか...とも思ってしまうんですが、コテコテのプログレの感じが私は好きです。

俊介

 ねっとりしてて土着的で、エロいという意味では村八分を思い出すんですが、四人囃子の方が上品に感じるのは詞のおかげか。
 演奏力もさることながら、個人的にはとにかく詞が好きで、想起させたい物事をとにかくとにかく婉曲させていく手法にすごい「粋」を感じる。 日本語以外の言語で、このつかず離れずの一触即発なエロい雰囲気を表現することはなかなか難しいと勝手に考えている。
 数ある日本語詞の中でも、飛び抜けて秀でた詞だと思います。

湘南ギャル

 ピンポン玉の嘆きを初めて聴いた時のことをおぼえている。耳から入ってきたピンポン玉が脳の中で跳ねていると本当に思い、それはそれは恐ろしかった。こだわりの無い音なんて一音も鳴らしてなんかやらないという、気概を感じる。プログレっつーと、一曲が長くて聞きづらいと思っている方々もいるんじゃないかと思うし、私もその気がない訳ではないが、四人囃子に関していえばそれは嘘である。次から次へと現れる、こりゃたまらん!という音を追っているうちに、気が付いたら聞き終えている。すべての旋律がたまらん音を鳴らしているから、どの音域が好きな人も良い音〜と思えそう。ここから全然違う話をする。最後の曲がブエン ディアという曲な訳だけど、ラテンアメリカでおはようの意味を持つ言葉(buen día)を由来としているのか、百年の孤独の主人公一族(Buendía)を由来としているのか、非常に気になる。ブエンとディアの間に空白があるからきっと前者だと思うが、後者だったらなんか嬉しいなと思ったり。

しろみけさん

 大文字。「ステレオ録音を使い倒してやろう」という気概が感じられ、威勢の良い2本のリードギターが弾かれ倒されている。これ以前のものだと『SATORI』などが一番近いものになるのだろうが、こちらは日本語詩の上に、英国プログレッシブ・ロックを通過しているので、より方法論化された大文字のバンド音楽を志向しているように感じられた。「一触即発」の玉虫色の展開や唐突にボッサに移行する「ブエン ディア」など、まるで父親のレコード棚を並べて遊んでるみたいだ。

談合坂

 メンバーどうしの目配せと、時たま浮かぶ笑みが見えるような感じ。楽器同士の距離感が次々と変わっていくような印象を受けるのですが、それはスタジオワークによって生み出されているものというよりも、例えば絶え間なく高速で増改築を続けるフィールドで演奏し続けている……みたいな原始的?な感覚として聞き取ったもののような気がしました。
 ギターもエレピも’現行の楽器’として活き活きとしているのが好きかも。

  一触即発、という言葉から受ける今にも爆発しそうな張り詰めた雰囲気は無く、当時弱冠20歳の若者が英米のロック、日本のグループサウンドを経由して、雄大に、有り余るイマジネーションを持って万華鏡のような音楽を作り上げた。モノラルの特質を活かしたポストプロダクションもそのプログレッシブロックに限りなく近づいた音楽世界を補強している。11:15に渡る長尺なナンバー「おまつり(やっぱりお祭りのある街へ行ったら泣いてしまった)」は圧巻だ。「泣きのギター」から始まり、徐々にエモーショナルが加速するメロディーを経てTHE DOORS顔負けのオルガン使いを魅せる中盤へ突入する。後半でははっぴいえんどの「がなり」を彷彿させる歌唱とイヤホンの右から、左から流れるギターやピアノの旋律の濁流に巻き込まれ、ついにはテンポが加速しリズムセクションが足されそのままフィニッシュ。街の祭でお面屋さん、金魚すくい、わたあめ、焼きそば屋さんといった屋台を抜けてしまい、少し寂しくなるような感覚に襲われる。

みせざき

 少しジャジーな雰囲気の一曲目から長尺の曲が続いていくといういわゆるプログレっぽい展開から、曲中に転調したりとこれもまたプログレ感満載でした。しかし一般的なプログレのようなテクニックに遵守したようなプレイではなく、ギターのコード感、カッティングやキーボードの音色等で場面展開させていくような、テクニカルではないところは意外性を感じました。ギターもどちらかというとクリーンで透き通るような綺麗な音色で、泣きのギターソロと言えるプレイが続いたりとプログレ以前のロックに遡るような印象を受けました。「おまつり」は特にハードロック調のリフが出てきたりと、自分にとっては馴染み深いサウンドが多くて聴きやすかったです。

和田はるくに

 ぼくは昔からこうなりたかった。非日常的な詩世界に、どんでん返しの待っている構成の楽曲群。しかもどれも必要なだけの曲の長さをどれもかねそなえていて、何度も聞いていて飽きない。70年代中頃にこのレベルのバンドが日本にいて、録音が残っている事実に胸が熱くなる。
 歌詞の意味など一つもわからないが、自分の気持ちというよりかはやけに状況描写に文字数がさかれていて、意味がわからない割にスッと入ってくる。
 彼らはこのアルバムを20歳かそこいらで作ったと聴いて驚いたこともある。パイプを加えたなまけものがその早熟性を物語っている気がしてならない。

渡田

 事前知識は、日本のプログレバンドとして名前を知っていた程度。
 実際に聴いてみると、プログレとしてよりは、サイケデリックロックとして耳に馴染んだ。おそらく、聴いてすぐにドアーズと同じ雰囲気を感じたからだと思う。
 ギターのように耳のそばで聞こえるような音もあれば、ドラムやキーボードの音は遠くの方から鳴ってきているように思える所が、ドアーズを聴いた時とよく似た感覚だった。
 大枠の雰囲気が似ているだけでなくて、こまごました点でもサイケバンドとの共通点を感じる。
 例えば、他の楽器と比べてマイペースで淡々と進むベース。曲の盛り上がりの後、他のパートが落ち着く瞬間、静かの中でも残り続けるベースの音が一層際立って聴こえるところ。その次の呟くようなボーカルの声を待つまでの緊張感ある場面とか。小さなことだけど、こういった所はドアーズやバーズの曲の中で聴いた覚えがあった。



 (「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」、「ブエンディア」の2曲は再発時のボーナストラックであり、オリジナル盤には含まれていない旨のご指摘をいただきました。この記事を読んで聴いてみよう!と思った方はご留意ください)

 (なお、メンバー"毎句八東"の参加は前回の記事が最後になりましたことをご報告いたします。これまでの寄稿に感謝。)

次回予告

次回は、冨田勲『月の光』を扱います。

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