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道を踏み外してしまう女に共感"椿姫 ラ・トラヴィアータ"

久しぶりにオペラを見た。「乾杯の歌」で有名な「椿姫」。サントリーホールで発展していった「ホール・オペラ」という形式で舞台上にオーケストラがあり、舞台奥の座席を活用し、オペラの舞台を設置している。オケの演奏も演技や歌も同時に楽しむことができる。


オペラというと大抵、色男や器量良しの女性が出てきて、許されぬ恋愛をして、お父さんなどに反対され、決闘や復讐があって、誰かが死んだり、亡霊になって現れる、というストーリーが多い。

椿姫も高級娼婦ヴィオレッタと青年アルフレードが恋に落ち、彼のお父さんが反対し、行き違いの末に、ヴィオレッタが病気で死の直前にアルフレードと再会する、という悲しいお話。原題は「道を踏み外した女性」という意味で、日本では「椿姫」として知られている。当時のような身分、宗教や国籍で壁が生じることは少なくなったが、この道を踏み外したヴィオレッタには少なからず共感する。

椿姫は何故ここまで人々に愛されるのか。

1.乾杯の歌の旋律が社交界の乾杯そのもの

オペラの有名な曲として名前が上がりやすい乾杯の歌。結婚式でも歌われる。陽気で華やかなヴェルディが得意とする印象的な旋律である。しかもメロディの6度の繰り返しは、オペラで演じられる夜会で人々がグラスを掲げながら乾杯する様子によく似ている。

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2.悪役なのにカッコいいとこを持ってくジェルモン「プロバンスの海と土地」

二人の恋愛に反対する彼の父ジェルモンはヴィオレッタに別れるよう迫る。ヴィオレッタが彼から去り、打ち拉がれる彼に父が、お前にはプロバンスの海や土地が待っているぞ、と歌うのである。本当に酷いことをしたお父さんジェルモン。ただこの曲が残酷さを凌ぐほどのかっこよさ。最低なお父さんだけど、感動的な旋律を歌い上げると拍手が鳴り止まない。

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3.結核で死ぬ直前のヴィオレッタの肺活量が凄まじい

彼の元を去り、病気が悪化して死が間もない状況の中、こんな道を踏み外した女性の願いに微笑みかけてください、と歌い上げる「さようなら、過ぎ去った日々よ」。
死を目の前に弱ったヴィオレッタの演技はリアリティがあるが、小さな音量こそ息を多く使い、その訓練された肺活量は、到底もうすぐ結核で亡くなる人のものではない。ツッコミどころ満載なのも見ていて楽しい。

選んではいけない人と恋に落ちてしまった、こんなはずではなかった、というのは時代や程度の差はあれどわかる気もする。



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